2025/07/02 コラボ企画

飲食店「事業承継」成功の鍵とは? カリスマ社長から引き継いだアントレストの成長戦略

「魚串さくらさく」「天ぷらすずき」、そして「焼肉ライク」のFCを展開する株式会社アントレスト。2018年、代表の中岸 孝介 氏は高校時代の同級生である創業社長・有村 壮央 氏から事業を承継。お互いを尊重し合った円満なバトンパスの軌跡、カリスマ社長からの承継で中岸氏が推進した企業変革、そして100店舗達成を目指す今後の戦略まで、中岸氏に語ってもらった。

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※スマイラー111号(2025年5月)より転載

カリスマ社長の事業を承継 、明文化と仕組み化で社員に安心感

株式会社アントレスト 代表取締役 中岸 孝介 氏

同社の創業社長の有村氏は「魚串を世界へ」のキャッチコピーで魚串というスタイルを世に打ち出した人物であり、株式会社焼肉ライクの代表取締役を務めるなど(現在は株式会社カチアリ代表取締役)、飲食業界ではその名を知る人も多いだろう。

「有村さんが焼肉ライクに行くことになり、私が事業を承継しました。元々有村さんと社員の間に私がいたので、コミュニケーション面の問題はありませんでしたが、創業社長のカリスマ性で成立していた部分もあって、このタイミングで仕組み化を進めていきました。例えば評価制度。それまでは特にルールがなかったのですが、どうすれば評価されるのかを明文化して、みんなが安心して快適に働ける環境作りに力を入れました」と語るのは株式会社アントレストの代表を務める中岸 孝介 氏 。

会社の理念「PASS THE HOT BATON」とビジョン「あたたかい人づくり 店づくり 街づくり」を策定したのも中岸氏だ。承継後すぐに策定し、自分のカラーを打ち出した。

中岸氏は「日本にはすごくたくさんの飲食店がありますから、ただ食事をするだけの無気質なお店だったら存在価値がありません。我々は、あたたかいお店作りをしようと考えています。元々アントレストには『正義を持つこと、誠意を持つこと、決して諦めないこと』という三つの社是があるのですが、お客様に対する理念を作っていなかったので、言葉にしてグループ全体で共通の心構えを持つようにしました。これは、お客様に対してだけではなく、一緒に働く人や業者様に対しても同じ考えです。有村さんは割とドライな部分もあるので、自分の方があたたかいですね」と笑う。

社員への利益の分配方法も変えた。「以前は、頑張ったら頑張った分をインセンティブで払う方式でした。例えばFL(Food and Labor cost/食材費と人件費の合算)を60%未満で抑えたら、抑えた部分は店長に還元するなどの方法だったのですが、それをやめました。各店舗の社員だけの満足度を考えると、その店舗の利益がその店舗の社員に還元される方がいいのですが、そうすると自分の店には新しい社員を入れたくないなど、会社として一体感のある成長が損なわれてしまいます。今後店舗展開をして成長していくためには、グループ戦略として成果を分配していった方がいいと判断しました」 と中岸氏。

創業社長が築いた企業精神や文化を大切に守りながら、中岸氏は“これからのアントレスト”の土台を築いている。こうした取り組みが、スムーズな事業承継へとつながっているのだろう。

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「お互いのために」の思いが事業承継のカギ

アントレストの主力自社ブランドの一つ「魚串さくらさく」( 写真は新宿店)

事業承継自体もとてもスムーズだったという。「お互い、感謝し合ってるんですよね。この関係性がなかったら、より高く売りたい、より安く買いたい、というせめぎ合いになっていたかもしれません。私たちの場合は逆です。有村さんは『いくらでもいいよ』という感じで、私としては『いくらでも払いたい』という思いですよね 。あとは税理士さんがうまくまとめてくれました。『お互いのために』というところからスタートしているので、うまくいったのだろうと思います」と振り返る。

冒頭にある通り、この事業承継は有村氏の焼肉ライクの事業マネージャー就任がきっかけだ。有村氏は「自分のわがままで会社を出ていく」と考え、中岸氏は「有村さんがいたから仕事をやっていけている」と考えているのだ。

有村氏を追って会社を辞める社員はいなかったが、一緒に焼肉ライクをやりたいという社員がいたため、アントレストは焼肉ライクのフランチャイジーとなる。焼肉ライクはこの後破竹の勢いで成長していき、アントレストがコロナ禍でも成長し続けるエンジンとなる。

コロナ禍でアントレストの成長を牽引した「焼肉ライク」(写真は柏東口店)

「有村さんは『自分が辞めてから売上が5倍になったんだから、自分がいなくなって良かった』と冗談のように言うのですが、居酒屋業態だけだったらコロナ禍で利益は出せませんでした。焼肉ライクのおかげで売上が何倍にもなっているので、有村さんには、会社を辞めてからもアントレストを一番大きくしていただいたと考えています」と感謝する。

結果は理想的すぎるように見えるかもしれないが、これは有村氏と中岸氏が事業承継を「売って終わり、買って終わり」にせず、承継後も共に“見届け、走り続ける”という関係性を築き、続けてきたからこその成果ではないだろうか。

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目標は100店舗、独立支援も再開したい

アントレストが展開する自社ブランド「天ぷらすずき」

(テキスト)
最後に、今後の目標を伺った。

「2004年のアントレスト創業当時、2014年までに100店舗達成を目標に掲げていました。2店舗目までは順調だったのですが、3店舗目で大失敗して、結局達成できていません。なので、フランチャイズ含めて100店舗出店します。最近は店舗数を目標にするのはナンセンスだとか言われてしまうのですが、若かった自分の目標を達成したいですね。その過程で直営店が30店舗になったら、社員の独立支援を再開します」。

アントレストという社名は、アントレプレナー(起業家)とレストランとest(最上級)の掛け合わせだ。社名が示す通り、元々独立支援に力を入れていた経緯がある。

「今はまず直営30店舗になるまでは、一致団結してやっていこうと考えています。その数があれば、誰かが独立しても残りのみんなでカバーできますから。もちろん今も独立したいと思っている人はいると思いますが、今は会社を強くしていこうと話しています。魚串さくらさくや天ぷらすずきが15坪くらいで独立するにはちょうどいいサイズなので、フランチャイジーとして独立してもらう方法もいいかなと考えています。業態開発も進めていきますが、定番のものに少しだけ自分たちらしさを加えるような形にしたいですね。焼肉ライクは焼肉に『一人』を、魚串さくらさくは、焼き魚に『串』を掛け合わせて成功しましたから」と堅実な答えが返ってきた。遠くない未来に、若者だった中岸氏の夢が叶うことを願う。

取材協力:株式会社アントレスト
東京都千代田区神田三崎町3-5-9天翔水道橋ビル403
https://www.entrest.co.jp/company.html

魚串さくらさく
東京都新宿区歌舞伎町1-28-2
https://r.gnavi.co.jp/cjwexsec0000/map/  
天ぷらすずき
東京都大田区西蒲田7-64-1
https://r.gnavi.co.jp/dkua1x320000/map/
焼肉ライク 柏東口店
千葉県柏市柏2-5-3 マルマンビル1F
https://r.gnavi.co.jp/7eyy5j0f0000/map/

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