2025/07/11 コラボ企画

飲食業界で働く人の笑顔を守りたい!創業150年、伊勢の老舗「ゑびや」発、EBILABの挑戦

明日、何人のお客様が来店されるのかを知ることができるとしたら...そんな夢物語を叶えてくれるのが株式会社EBILAB(※以下、エビラボ)の「来客予測」だ。エビラボの創業メンバーであり、取締役 最高戦略責任者兼 最高技術責任者の常盤木 龍治(ときわぎ りゅうじ)氏に話を伺った。

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※スマイラー111号(2025年5月)より転載

人流分析で街を科学する「儲かる店舗」を作りたい

株式会社EBILAB(エビラボ)とは 
伊勢神宮の参道沿いにある創業150 年の「伊勢ゑびや大食堂」を運営する有限会社ゑびやのシステム開発部門が独立した会社で、データ分析事業が専門。経営不振に陥っていた自社の商売を立て直した手法をサービス化し、サービス業のDX 支援として提供する。「来客予測」は、過去の売上データをもとに、天気データや近隣のイベント情報等を用いて、独自のアルゴリズムで未来の来客数を予測する。「翌日予測」「45 日予測」「365 日予測」などが可能。予測の精度は平均で90% 以上を誇る。勘と経験ではなく、データから答えを導き出す。

商店街向けのセミナーで講演する常盤木氏。現状に課題意識を持つ参加者たちの眼差しは真剣そのもの

常盤木 「エビラボ」は、街全体の人流データの分析から店舗ビジネスのDX全般を得意とする会社です。人流領域においては、AIカメラを使って、通行人数だけでなく、おおよその年代や性別がわかる他、どのようなルートを通っているのか等の行動まで分析できます。地域や商店街には様々な店舗があって、集客力の高い“コア店舗”もあれば、集客数は必ずしも多くないけれど客単価が高くて顧客評価が高い、例えば宝石店や時計店のようなお店もあったりします。

僕らは、街全体をどうエリア分けして、どのようにゾーニングすれば儲かるのか、また、単価を上げられるのかを科学的なアプローチで提案していて、実際に儲かる街を各地で作り上げています。

僕たちは、行政や地域の核となる商店街とタッグを組んで、右肩上がりで人が増え続けていた時代とは違う、今の顧客の指向性を捉えて「正しい街」を作る取り組みをしています。ちゃんと儲かって、ちゃんと単価が上がれば、従業員の給料を上げることができますし、中には儲からない日もあって、それもデータで具体的に分かるようになりますから、そういう日はシフトの人数を減らして有休取得奨励日にするなどの手が打てます。僕らのシステムを利用して、そういったことを実現しているところが増えてきました。

一般的に従業員の方というのは、会社から「休んでいいよ」と言われても、仕事を休むことに抵抗感を持つものです。仕事に穴を開けてしまうのではないか、そうしたら職場で嫌われてしまうのではないか、ということを考えてしまうんですね。なので、科学的に休める根拠があるというのはすごく重要なことなのです。

福井の和菓子屋さんの例ですが、それまでご夫婦で有休取得が年に0日間だったのが、データを元にシフトに入らなくてもいい日を決めて、年に10日間休めるようになりました。僕らの「ゑびや」グループの店舗では、完全週休二日制プラス15日の連続休暇を取れるようになっています。

飲食店って、儲からないし休めない、という風潮があると思います。実際、「宿泊業、飲食サービス業」の給与は、全16産業ある中で万年最下位の16位なんですよね。僕らのシステムを使うと、来客数の予測もできますし、過去の販売データと組み合わせて5日先までのメニューの販売数予測もできますので、食材のロスを大幅になくすことができます。

仕入れを最適化すれば食材をベストコンディションで使って売ることができます。デジタルを活用し、DXのアプローチで「儲かる店舗」を作るのが僕らの狙いです。

正直、現場のオペレーションを改善するというアプローチは限界を迎えていて、皆さん少なからず疲れています。なので、経営者が最初にやらなければならないのは休みを増やすことなんです。年間3日間しか休めなかったのが10日間の有休が取れるようになったら、従業員の満足度も全然、変わってきます。

45日予測(客数)45日先までの日別の来客予想数が表示される。無駄のないシフト作成が可能だ。根拠ある数字だけに、迫力がある。従業員の有給取得促進に活用したい

サービス業で働く人たちは、笑顔を売る人たちです。笑顔でないと、商売はうまくいきませんよね。僕らのシステムを使うと、エビラボが持っているさまざまなデータと店舗のデータを組み合わせた「独自のレシピ」で向こう45 日間の来客数予測ができます。

この日の来客数は何人、というのが具体的に数字で出てきます。「ゑびや」では来客数80名に対してスタッフ一人という指標ですが、指標は店舗ごとに設定できます。休める日はしっかり休んでいただき、笑顔で働いてもらいたいですね。

また、365日の予測もあって、こちらは資金繰りをサポートするものです。エビラボとパートナーシップを結んでいる地銀がたくさんあって、地銀としては店舗に資金融資する際、365日の予測が数字で出ていれば、根拠を持ってお客様に融資できます。経営者にとっては資金繰りのプレッシャーから大きく解放されることになります。

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重要なのは「誰が購入していないか」

5日予測(メニュー)5日先まで、どのメニューがどれだけ売れるかが表示される。発注業務の強い味方だ。食材ロスが9割削減できるという

常盤木 物販の例ですが、販売履歴を見て「うちは20代がメインターゲットだ」と思い込んでいたけれど、AIカメラの分析で、確かに買っているのは20代だけれど、実は30代40代が多く入店している、というケースがよくあります。

POSは販売後のデータなので、20代しか見えないんですね。そういうときに30代、40代ターゲットの製品のスペースを増やすことで売上が大きく伸びたりします。また、女性をターゲットにしているけれど、実は男性が15%入店していて、そこに向けた1,000円前後の商品を置いたらこれだけで月商が100万円アップするなど、そういったことを僕らが科学しています。

ビッグデータの本質って、入店したけど購入に至らない属性向けに使うのが極めて効果的なんです。そのため、こういうものが売れる可能性があるとか、この属性の人たちがこれだけいるんだからこの価格帯で売れる可能性があるよねとかの切り口で商品企画をしています。

日本は、値上げを悪いことと考えてしまう人が多いのですが、値上げができないからいつまでもデフレ状態が続いているのだと思います。僕らが経営している飲食店の「ゑびや」は、2012年の客単価が850円。グルメサイトの評価も2.86で、潰れかけのうどん店でした。今では客単価は約3,000円で、従業員の給与も、2012年当時は12万円スタートでしたが、今は22万円スタートです。

何の工夫もなく単に値上げしたのではありません。「ゑびや」に来店されるお客様のアンケート結果や人流データ等、様々なものを電子化して組み合わせて分析した上で、お客様にとって価値のある店舗設計をし、商品企画を積み上げていった結果です。

「ゑびや」には全国からお客様がいらっしゃいます。わざわざ東京からいらっしゃるようなお客様は「せっかく来たんだから」と高くてもお店の名物メニューを注文されます。また、若いカップルより、50代以上のこなれたご夫婦の方がサクッと美味しいものを食べられて、滞在時間も短いなど、蓄積したデータから様々なことが具体的に分かります。

「ゑびや」における来客予測の精度は96%以上とほぼ当たるので、もはや代表の小田島や僕の予想なんかよりAIの方がより正しい経営指針となる判断をしてくれています。「勘と経験」という概念は完全に排除しています。

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どうすればもっと人は笑っていられるのか。社会課題の解決ばかり考えている

常盤木 こう言うと語弊(ごへい)があるかもしれませんが、僕らが提供する来客予測や店舗分析自体が重要だとは思っていません。

「儲かる店を作る」ことが大切で、来客予測や店舗分析はそのための指標です。なので、うちは生姜焼きで有名とか、小籠包が名物とか、手こね寿司が人気とか、お店の柱になる料理がちゃんとあって、その商品を中心の柱として据えた上で、根拠あるデータを使って周辺に別の柱を立てていくという戦略が効果を上げやすいです。

来客予測は、パート・アルバイトの採用にも有効です。最初に従業員の休みを増やすことが重要という話をしましたが、飲食業は働き手が足りていないのも事実です。隙間バイトの人や、週に3日とか、場合によっては1日だけでも入れる主婦の方なども戦力にしていかないと、今後の店舗経営は厳しいでしょう。

来客予測を使えば、混雑が予想される日の人数をスポットで増やすなど、効果的にシフトを組むことができます。また、本来は最もノウハウが必要な発注業務も、5日先までの販売数予測があれば、誰でも対応できます。

僕らは毎年、経営陣で合宿するのですが、ほとんどの時間は「どうしたら人間社会が良くなるか」とか「どうしたらもっと人は笑っていられるんだろう」という話をしています。

サービスの内容や、自分たちがどうやって儲けるかという話はほとんどしません。課題の解像度が高いことが成功するビジネスを作る基本だと考えているからです。日本のサービス業の中で比率が最も大きいのが飲食業ですので、ここの平均所得が上がれば国の税収も学力も上がります。

この国を豊かにするためには飲食業界をまず豊かにすることが、僕は極めて大切だと考えています。僕らはITを使ってアプローチしていますが、ITと聞くと、難しいし高いし、なんだか怖い印象を持つ方が多いでしょう。

いろんなデータを出すことができますが、それを自分で見に行かないといけない時点で、僕の感覚としてはITがみんなに優しくない、まだまだ「蛇口(じゃぐち)化」していないと感じています。

最終的には人間の脳や感覚にダイレクトに音声だけが通知されるような世界になれば、人はもっと笑っていられるのではないでしょうか。

取材協力:株式会社EBILAB(エビラボ)
取締役 最高戦略責任者 兼 最高技術責任者 常盤木 龍治 氏
https://ebilab.jp/

ゑびや大食堂
〒516-0024 三重県伊勢市宇治今在家町13
https://r.gnavi.co.jp/b2s2b7gb0000/


■飲食業界誌「スマイラー」

“飲食店の笑顔を届ける”をコンセプトに、人物取材を通して飲食店運営の魅力を発信。全国の繁盛店の紹介から、最新の販促情報、旬な食材情報まで、様々な情報を届けている。毎月15,000部発行。飲食店の開業支援を行う「テンポスバスターズ」にて配布中!

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