※スマイラー113号(2025年7月)より転載
“見えないリスク“と向き合う食中毒・異物混入から店舗を守る、衛生管理のいま
「食の安心・安全」が揺らぐとき、飲食店の信用は一瞬で失われる。厚生労働省の統計によれば、2024年に発生した食中毒件数は1,100件超、被害者数は約2万2千人にのぼった。そのうちおよそ60%は飲食店で発生しているという。
主な原因はノロウイルス、カンピロバクター、大腸菌など、人や食材、調理器具を介して広がる細菌・ウイルスによるものである。特に気温と湿度が高くなる梅雨から夏にかけては、飲食店における発生リスクが大きく高まる。もし食中毒を出してしまったら、人命に関わる問題であり、食品衛生法に基づき営業停止命令や営業禁止処分を受ける可能性がある。食中毒患者への損害賠償はもちろん、店舗の信用失墜は免れず、ダメージは甚大だ。客足が戻らず廃業に追い込まれるケー スもあるだろう。
食中毒に至らなくても、異物混入も大きなリスクだ。厚生労働省の「全国における食品への異物混入被害実態の把握」によると、虫の混入が最も多く、全体の4分の1以上を占める。害虫の混入は見た目の嫌悪感が強く、SNSに投稿されて拡散してしまうと、店の評判が傷つき、客足が激減する可能性がある。
そんな時代背景のなか、改めて注目されているのが、飲食店における衛生管理のあり方だ。
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「まさかうちが」は、もはや通用しない
「うちは掃除も欠かさないし、トラブルも起こっていない」と安心していないだろうか。害虫や害獣は目が届かないすき間にいて、何かのきっかけで衛生トラブルを引き起こしてしまう。例えばカットした生野菜をすぐに冷蔵庫に入れずそのままにしておくと、目を離した隙にその上を害虫が這い回ったり、卵を産み付けられたりすることもあるという。不衛生な環境を好む害虫や害獣は体に多様な菌を持っているため、健康被害を引き起こす可能性があるのだ。
他にも、手袋を着けたまま複数の作業を行ったり、グリーストラップの清掃を怠ることによる害虫の繁殖などもリスクだ。日常業務に追われるなかでの些細な判断ミスや、「これくらいなら大丈夫だろう」という油断が、大きな事故へとつながる可能性があることを再認識したい。
さらに注意が必要なのが、店舗の人材構成の変化である。多くの飲食店では非正規スタッフや外国人アルバイトが現場を支えており、衛生に関する知識や意識の基準が統一されていない可能性がある。言語の壁や教育の時間不足はリスクの元だ。少なくとも「手洗いのタイミングと方法」や「調理器具の使い分け」など、基本的なことがスタッフ間で徹底されているか、改めて確認しておくべきだろう。
いま見直すべき、3つの衛生管理ポイント
2020年のHACCP(ハサップ)義務化により各飲食店で衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図っているはずだが、衛生管理をすべて完璧に整えることは簡単ではない。まずは、現場で取り組みやすい基本の3点を確認したい。
(1)温度管理の記録とルール化
冷蔵・冷凍庫の温度チェックは、日々のルーティンに組み込まれているだろうか。ピークタイムなど開閉が頻繁な時間帯には、想定よりも庫内温度が上がることがある。また、厨房内の室温が30度を超えることも珍しくなく、調理台の上に放置された食材が急速に傷むリスクも高まる。中心温度計を使って食材の内部温度を確認し、記録することで、細菌による汚染リスクを低減できる。「感覚」ではなく「数値」と「記録」が重要だ。
(2)手洗いと体調管理の仕組み
「手は洗っているつもりだった」という認識のズレが、感染リスクの原因となる。スタッフがいつ、どのように、どれくらいの時間をかけて手を洗うべきか。その基準を明確にし、全員で共有する必要がある。手洗いのチェックリストやポスター、多言語対応の衛生マ ニュアルを活用すれば、スタッフの意識向上につながる。
また、出勤前の体調チェックも形骸化してはならない。責任感の強さから「下痢や嘔吐があったが、言い出せなかった」というケースもありうる。症状のあるスタッフが安心して休める職場環境の整備も、衛生対策の一環だ。
(3)店舗環境・設備の清掃と点検
衛生上の問題は、目に見える部分だけに存在するわけではない。排水口や冷蔵庫の裏、エアコンの吹き出し口など普段見えない箇所にこそ汚れやカビ、害虫が潜んでいる。特に、ゴキブリやネズミなどの害虫・害獣は、わずかな隙間や配管まわりから侵入し、知らぬ間に繁殖していることがある。一匹を見かけた時点で「すでに巣がある」と考えたほうがよいだろう。 つまり目についたものを駆除するだけでは問題は解決しない。清掃業者や専門のペストコントロール業者と連携し、定期的な点検と予防措置をとることが、結果的に被害を最小限に抑える最善策だ。
飲食店の評価を左右するのは、料理の味や接客力だけではない。「この店は清潔で安心だ」という信頼が、来店の決め手となり、再訪や紹介につながる。
食中毒や異物混入は、起きてから対応しても手遅れになることが多い。だからこそ、いま厨房と向き合い、現場の衛生レベルを客観的に見直すタイミングとしたい。
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