2025/09/11 コラボ企画

富裕層を狙え!ランデスホールディングス下村 英司 氏に聞く、ゴーストレストラン成功の法則

コロナ禍で爆増した“ゴーストレストラン”は、店舗を持たずデリバリーやケータリング事業で売上を伸ばす飲食店の新業態。しかしブームは落ち着き、現在は一部の勝ち組を除いて淘汰の時代に入っている。そこで東京・水道橋で、レンタルキッチンを運営する株式会社ランデスホールディングスの下村 英司社長に、ゴーストレストランとして成功するためのノウハウや同社の開業から運営までをサポートするサービスについて伺った。

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※スマイラー113号(2025年7月)より転載

ターゲットは富裕層。深夜と早朝、アイドルタイムがアツイ!現在のゴーストレストラン市場

「今、残っているのはきちんとした経営を続けてきたところだけ」と下村社長は、昨今のゴーストレストラン市場についてこのように話す。

「きちんとしたというのは、タイ人がタイ料理を作って出している、というような本物の専門的な事業者。コロナ禍で、ラーメン屋がゴーストレストランとしてFCに加盟して、レンジで温めるだけの焼肉丼などを販売していました。しかし手数料としてFCに売上の10%程度、Uber Eatsに35%以上も取られると、利益はほとんどない。だからどんどん辞めていきましたね」。

現在、とくに夜中などはUber Eatsや出前館などのサイトを開いてみても、吉野家やマクドナルドなどのチェーン店ばかりのため、その中でタイ料理や牛タンなどの専門店のお弁当などがあれば、むしろ消費者の目に留まるのだという。「当店の入居者で、自社開発の大豆ミートによるヴィーガンレストランを経営している企業さんでは、Uber Eatsで牛丼を2,500円で販売しても売れます。ヴィーガンのフォアグラまで販売する、そんな本格的なところは他にはなく、独占状態になっているんです」。

つまり、工夫して特化した商品を「夜中」に提供することが戦略の一つということだ。価格は関係ない。「Uber Eatsを夜に注文する人は、安いものを求めていません。3,000円であっても、魅力的なものを食べたいと思っています。ただ、夜中にゴーストレストランを開業する場合、人を雇うと人件費がばかにならない。これがいまだにブルーオーシャンであることの理由ですあるが、経営者が“自分だけでやる”という覚悟があれば、今からでも参入のチャンスはある」という。

そして、「早朝」も富裕層をターゲットにする狙い目だ、と下村社長は強調する。健康志向が高まる中、アサイーボウルやグリークヨーグルトなどが健康食でおいしいと人気らしいが、その豪華版として5,000円くらいのモーニングが売れているという。

さらに、ランチとディナーの時間にしばられない「アイドルタイム」も狙い目だ。「午後2時頃から夕方頃まで、ヨーグルト系やシェイクやフルーツジュースなど、喫茶店メニューの豪華版を富裕層に向けて提供するのも狙い目」だという。

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ザ・ゴーストレストランで社食ビジネスを展開しているオーナーの村上さん(右)と下村社長(左)

コロナ禍ではゴーストレストランを開業したい人がレンタルキッチンを利用する人の大部分を占めていたが、昨今はその利用目的にも変化が現れているようだ。

一つは「テストキッチン」として商品開発を行うスペースとしての利用である。「テナントの一つである某企業は、電子レンジで温めたもやしに、自社で開発した特性スパイスをかけると、まるで『二郎系』のような味になる商品を生み出し、これが飛ぶように売れています。その企業はこれまで、工場はOEMで、自社では営業だけ行う、それこそ“ゴーストオフィス”のような経営をされていました。しかし、売上拡大に伴い営業の一環として試食できるキッチンが欲しいということで、現在は営業オフィス兼、そのスパイスを使った料理を出すためのキッチンとしてお借りいただいています」と下村社長。

その他、「社食弁当」や「キッチンカー」の仕込みのスペースとしての利用も増えている。さらに、将来「寿司屋」を開業したい若手職人が“修業の場”として利用するなど、現在はレンタルキッチンの利用目的は多岐にわたっている。寿司屋でアルバイトとして働いている寿司職人の若者は、仕事が連休のときだけ時間貸しキッチンを利用して『お寿司ウーバー』をやっているようだ。

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自由度の高い時間貸しのミニカウンター「007Bar」

時間貸しに対応しているのがカウンター、通称「007Bar」。営業許可を取得している厨房

一般的なレンタルキッチンとは一線を画す、多くの魅力的な取り組みを展開する「ザ・ゴーストレストラン」は、001〜008まで全部で8区画(8キッチン)あるうち、唯一の時間貸しに対応しているのが007、通称「007Bar」だ。ここは、入居者であれば1時間1,000円、外部の事業者や個人が利用する場合は、月額1万円プラス1時間1,000円でレンタルできる。

特筆すべきは、「007Bar」は営業許可を取得したスペースであるという点だ。前述した若手の寿司職人のように開業前で店舗を持っていなくても、「007Bar」に知人を招いて実際に寿司を提供する「営業体験」が可能だ。2025年6月現在、専用キッチンは満室のため、下村社長は「007Bar」を多くの事業者に利用して欲しいと呼び掛けている。

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気軽に「醤油貸して」と言える長屋的なレンタルキッチンを目指す

室内は専用キッチンが区画毎に用意されてある

下村社長が「ザ・ゴーストレストラン」を運営していく上で心掛けていること。それは入居者同士の横のつながりを利としていける仕組みの提供である。「一般的なレンタルキッチンは『ワンルームマンション』のような感じで、入居者同士の横のつながりなどはありません。その点、当レンタルキッチンが目指しているのは、“醤油貸して”と言えるような長屋的なコミュニティなんです」という。

「ザ・ゴーストレストラン」では、年に4回はランチミーティングと称した「昼飲み会」を007Barで開催している。先日は「ウニパーティー」を開催。塩水ウニと下駄ウニを食べ比べし、本マグロの中落ちを買い、それを寿司ご飯に乗せて、スプーンにすくって豪快に食べたとのことだ。その他、各キッチンの新作をお互いに試食したりもするという。「お酒は当社で用意します。ここだと、皆さん仕事をしながらでも参加できるし、注文が入ればすぐに厨房に戻れるのもポイントです」。

また、新しい入居者が入ったときには歓迎会を開催している他、入居者のグループラインで情報共有も行う。注意事項の他、入居者同士で良い仕入業者なども共有しているそうだ。まさに「長屋」のような関係がここでは構築されているのである。

メニュー写真の撮影や名刺作成、保健所への同行など、入居希望者の開業を手厚くサポート

「ザ・ゴーストレストラン」が単なるレンタルキッチンではないことはここまでの説明でも十分に伝わったと思うが、さらに同キッチンでは“開業したい”という思いを持ちながらも、どうしたら良いのか分からないという入居希望者に対して、様々さまざまな支援を行っている。料理人としての経験はあるが経営の仕方が分からないという人への独立相談、また、インターネットなどのデジタルを活用した経営をしたいといった相談にも応えている。

相談を受けた中で発生する、ホームページ作成やメニュー撮影などの実費がかかるものは有償であるのは当然だが、驚きなのは入居が確定していない希望者に対して、保健所に同行して説明したりするなどの支援も「無償」で提供していることだ。

さらに、開業後も営業時間やメニューなどをヒアリングし、通常のUber Eatsなどを利用する以外の「販路拡大」のためのコンサルティングまで行っている。そこまでサポートしても、結果的に入居してくれなかった場合はどうなるのだろうか。

下村社長は「自分の勉強になったと考えるようにしている」という。さらに「夢がある人をサポートしたいという思いがあるので、自社の利益は後からでいい。後から付いてくる」。この考えは従業員や取引先に対しても同じで、「スタッフに満足してもらえる給料を支払い、取引先にも利益を出してもらい、社長の給料は最後だと考えています」。

管理費を惜しまず、衛生面を徹底。運営スタッフが毎週グリストラップを清掃。2週間おきにマットとモップを無償交換

厨房内の清掃方法を写真付きで分かりやすく解説する「キッチン清掃マニュアル」全11ページ

そして、衛生面を徹底していることも、同レンタルキッチンを紹介する上で欠かせないポイントである。とくに、飲食店ではトイレよりも汚いと言われるグリストラップについては、運営側で毎週清掃している。「きれいの基準は、人それぞれ違う。だから自分たちの“きれい”を基準にしています」。

さらに、すべてのキッチンの「衛生チェック」を運営側で毎月1回実施。入居者のキッチンを徹底的にチェックし、清掃できていないところは写真を撮って「このように掃除して下さい」という内容を記述した「衛生チェック表」というレポートで提出する。

チェックを担当しているスタッフは「一週間後に再確認するのですが、みなさんきちんと清掃してくれています」とのことだ。掃除については「キッチン清掃マニュアル」というものを作成しており、新たな入居者には清掃のオリエンテーションまで行うという徹底ぶりである。その他、年4回は害虫駆除の業者にも来てもらっているため、ゴキブリなど出たことがない。たまに“迷いゴキブリ”が入ってくるくらいだ。

ここまで徹底する理由について下村社長は「精神的にも職場に来るのが楽しみになるスペースにしたいということと、入居者の家族などが見に来られたときも胸を張って見せることができる場所にしたいから」と話す。

大きな夢は地球環境保護と海洋環境改善。次の目標は徒歩圏内に「2号店」を開店し、ゴーストレストランのドミナント化を目指すこと

グリストラップの清掃をはじめ、下村社長が衛生管理を徹底している理由には、地球環境保護と海洋環境改善に貢献したいという思いが根底にあるからだという。

三重県伊勢市出身である下村社長は幼少期、近所に宮川と伊勢湾があり、ずっと水辺で遊んでいた。「その素晴らしい自然環境がどんどん破壊されていく過程を身を持って知っているので、地球環境保護に真剣に取り組んでいきたいと思うようになった」というのが下村社長の想いなのである。「スキューバダイビングのインストラクターもやっていますが、目的はきれいな海を案内して、自然を汚さないようにしようと啓蒙していくためです。その一環として、入居者の皆さんにもフライパンの油を排水に流したら、それは海につながっているので、きちんと処理してから流してほしいと話しています」。

下村社長は近いうちに、水道橋駅から徒歩数分である現在のロケーションから徒歩5〜10分圏内に「2号店」の出店を計画している。規模は現在と同等、もしくは少し広めのスペースをイメージしているという。

2号店の特徴としては、大量のお弁当の盛り付けなどが簡単にできるように「盛り付け台」を広くしているところだと話す。「徒歩圏内に2号店を開設できれば、スタッフの兼任もできるし、入居者側にとってもメリットは多い。ゴーストレストランのドミナント化を目指していきます」。


取材協力:株式会社ランデスホールディングス
東京都千代田区神田三崎町3-6-1 BACHビル2F
https://www.theghostrestaurant.tokyo/

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