2026/01/19 コラボ企画

三重・名張「三重屋とらじ」に学ぶ接客術|「いらっしゃいませ」と言わない究極の接客

“ありがとう”とは「有り難し(当り前ではない)」という意味。その言葉を社訓に掲げる「やきにく三重屋とらじ」の二代目、岩本 元熙さんはアパレル業界から家業の焼肉店を継承。前職ではチェーンのマネージャーを務め、個人売上で4年連続1位などの実績を持つ接客のプロフェッショナルだ。その岩本さんが実践するお客様の心をつかむ接客術とは。異業種出身ならではの感性で磨き上げられた、唯一無二の店づくりと信念に迫ります。

URLコピー

※スマイラー117号(2025年11月)より転載

「当たり前」を感謝に。異業種出身の二代目が貫く接客の原点

2階は和の空間をテーマに改装

先代である岩本さんのお父さんが大阪・生野区で創業した焼肉店を、すぐに三重・名張の地に移して35年。岩本さんが店を継いだのは、20年前、30歳を過ぎてのことだ。「正直に言うと、焼肉屋をやりたかったわけではないんです。両親がやっていたから、自分が継ぐしかないという気持ちでした」と岩本さんは振り返る。

そんな岩本さんは、アパレル出身ならではの感覚で接客する。「洋服店では、話しかけるとお客様は帰ってしまうこともある。つまりお金を使わずにお店から出ることができる。でも焼肉屋は、お客様は必ずお金を払ってくれる。このためアパレル出身の私は、お店に来たお客様がお金を使ってくれることを“当り前”とは思わず、感謝の気持ちで接客しています」と語る。

また、「お客様との会話は、キャッチボールでなければ意味がない」との信念から、岩本さんは従業員に、できるだけ「いらっしゃいませ」の言葉は使わないように指導しているという。「“いらっしゃいませ”って返事ができない言葉なんですよ。なので、『こんにちは、今日もいい席ご用意していますよ』と声をかけます。その方がお客様も返事がしやすく、距離がぐっと縮まるんです」と接客のコツを明かす。

さらに、お客様が帰るときは、決まり文句ではなく、心からの「ありがとう」を伝える。それは単なる挨拶のマニュアルではない。岩本さんは「“ありがとう”の反対の言葉は『当り前』なんです。繰り返しになりますが、お客様がお金を使ってくれることを当り前と思わず、感謝の気持ちを精一杯の言葉にするようにしています」と話す。

<関連記事はコチラ>
・「興味を持つ」が接客の原点。S1最優秀賞・田中 達紀 氏の哲学
【S1サーバーグランプリ】田中 達紀 氏が語る「また逢いたい」を呼ぶ接客術

・友達が増える、スタッフにファンが付く接客の極意
居酒屋甲子園2024優勝「アホウどり」の、学生を魅了するメニュー開発&接客術

▼ぐるなび公式アカウント▼
【LINE】ぐるなび通信デジタル
週1~2回新情報をお届け。ぜひ友だち追加をお願いします!

焼肉店の常識を覆すデザイン。感性で創る唯一無二の“空間”

自らを「少し変わってるんです」と言う岩本さん。しかし、その“変わり者”の感性こそが、お店づくりの原動力になっている。「従業員教育の中でいつも話すんですけど、相手が感じる“いい”と自分が感じる“いい”は違います。そこを共有しないと“いい”の答えは出ないんです。例えば『リンゴ』と言ったとき、多くの人は赤いリンゴを思い浮かべると思います。でも僕はビートルズが好きなので、グリーンアップルなんです。その時点でズレが生まれている。だからこそ、自分が思う“かっこいい”を突き詰める必要があります」と熱を込める。

その感覚は、4年前に実施した店舗改装のデザインにも表れている。「改装前の店は、自分の中で“かっこよくない”と思っていたんです。だからこそ、本当に自分が“かっこいい”と思える空間にしたかった。将来三代目になるかもしれない小学生の息子に胸を張れるようにです」と父親としての顔も覗く 。

1階は飛行機の着陸灯をイメージしたLEDライトを入り口からトイレまで配置し、天井にはデザイナー・パントンのライトを吊るした

改装では、飛行機の着陸灯をイメージしたLEDライトを入り口からトイレまで配置し、天井には
デザイナー・パントンのライトを吊るした。壁には黒のデニム生地を貼り、古い大理石の印象を一新。1階はSL機関車、2階は和の空間をテーマにしたという。「高校の同級生がデザインを担当してくれたんです。僕の変わった好みを全部受け入れてくれました」。岩本さんにとっての“かっこよさ”とは、見た目よりも自分の信念を貫くことである。

「とらじなら食べれる」。対話が育むお客様との深い絆と信頼

松阪牛を中心に良質な肉を提供する

大阪出身の岩本さんは、どんな場面でも来店客とのやりとりを楽しむことを忘れない。その一部が次のようなものだ。「この間、お客様に『これ、スーパーなら980円で売ってるのに、高いな』って言われたんです」。「『そんなこと言わないでくださいよ。もし“氷持ってきて”って言われたら、僕ら走って持って行きますんで。その手間まで含めて、この値段なんです』と答えました」。

さらに、こう言葉を重ねた。「家で奥さんに“氷取ってきて”って言ったら怒られるでしょ?でも僕らは“すぐお持ちしますね”って言って持っていきます」(笑)。その一言に、お客様は「うまいこと言うな」と納得したという。

店には、常連客と一見客がおよそ半々。「誰に対しても同じ温度で接するようにしています」と岩
本さんは話す。「若いお客様に『生くれ』って言われたら、『生くださいって言おうな』と言うこともあります。そしたら次に来た時には、きちんと敬語で注文してくれる人もいる。お客様との関係を育てるのも仕事の一つです」。

そんな日々の積み重ねの中、心に残っているのが次のエピソードだ。「常連のお客様の子供で3歳ぐらいの男の子がいるんですが、ずっとお肉が食べれなかったんです。でもある日、お父さんが『この子、今日は食べれたんです』って教えてくれて。で、その子供が帰り際に『とらじの焼肉やったら食べれる』って言ってくれて。あまりにうれしくて、テレビCMに使いたいとまで思いました」と顔をほころばせる。

競う相手は「自分自身」。今のお客様への感謝を積み重ねる

岩本さんの経営の軸は、他店との比較ではなく、自分の中にある基準を磨き続けることだ。「他の焼肉屋を見れば真似をしたくなる。右を見たら右を、左を見たら左を真似してしまうタイプなんです。だからこそ、自分の感性を信じて、競う相手は自分だけにしています」と語る。

そして、その視線の先にあるのは、常に“今”という一点にある。「遠くのことを考えすぎると、足元が見えなくなります。“今を頑張る”ことが目標です。今のお客様に、どれだけ“ありがとう”を言っていただけるか。それが僕のご褒美なんです」。

ぐるなびからの最新情報を受け取るのはLINEが便利!
配信頻度は、週1~2回ほど。ぐるなび通信の新記事や、旬な情報が通知されて便利です!ぜひご登録ください。
「ぐるなび通信デジタル」
ご登録はこちらから
文:KAZUN 
1973年東京生まれ、大阪市在住。某業界で25年以上の取材経験。食べること、アルコー
ルが大好きで、飲食店経営の取材に魅力を感じて「Smiler」のライターとして活動を開始。マイブームは「Chat GPT」。
取材協力:やきにく三重屋とらじ
住所:三重県名張市蔵持町原出775
https://r.gnavi.co.jp/84cp7bt00000/map/

■飲食業界誌「スマイラー」

“飲食店の笑顔を届ける”をコンセプトに、人物取材を通して飲食店運営の魅力を発信。全国の繁盛店の紹介から、最新の販促情報、旬な食材情報まで、様々な情報を届けている。毎月15,000部発行。飲食店の開業支援を行う「テンポスバスターズ」にて配布中!

「スマイラー」公式サイトはこちら!

Googleビジネスプロフィール(GBP)の運用代行サービスは、ぐるなびで!

ぐるなびによるGBP(旧Googleマイビジネス)を活用したMEO対策・クチコミ対応を含む、飲食店に特化した集客支援・運用代行サービスを紹介します。

【ぐるなび】飲食店向けGoogleビジネスプロフィール(GBP)集客支援・運用代行サービス

飲食店の集客や販促は「ぐるなび」におまかせください!
資料請求・お問い合わせはお気軽にどうぞ

「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。
「ぐるなび」の掲載は無料で始められ、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています!