飲食店のDX化・AI活用を支援する補助金にリニューアル
深刻な人手不足、高騰する食材原価など、飲食店はさまざまな課題を抱えています。そうした課題解決の手段になりえるのがDX化です。DX化することで生産性を高めることができますが、その目的は予約管理やレジ締め、発注といった「機械ができる仕事」をデジタルツールに任せ、スタッフが「お客様へのサービス」や「料理のクオリティーの追求」といった、人にしかできない価値ある仕事に集中できる環境を作ることにあります。
とはいえ、デジタルツールの導入にはコストがかかります。そこで国が用意しているのが、「デジタル化・AI導入補助金」です。もともと「IT導入補助金」という名称でしたが、2026年からリニューアルされ、ツール導入費の最大4/5(80%・上限あり)を補助するほか、AI活用を本格的に支援。また、ツール導入後のサポート費用も手厚く補助されます。加えて、インボイス枠などにおいては、少額の導入でも高い補助率(最大4/5)が適用されるため、個人店でも一段と使いやすい制度になりました。
具体的に、補助金の概要や飲食店が申請・活用する際のフローやポイントなどを、中小企業診断士の野竿 健悟 氏に伺いました。
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目次
1.「デジタル化・AI導入補助金」の概要
2.飲食店での具体的な活用パターン
3.申請から導入までの6つのステップ
4.採択につながるポイント
5.まとめ
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1.「デジタル化・AI導入補助金」の概要
■制度の概要
2017年に開設されたIT導入補助金が、2026年度からデジタル化・AI導入補助金に名称変更。ソフトウエアやシステムの導入費用を補助する制度です。
名称変更に伴って変わった主なポイントは、
・AI機能を搭載したツールの導入を推進
・過去にIT導入補助金を利用した事業者による再申請の場合、審査が厳しくなるなどハードルが高くなった
・財務書類提出とSECURITY ACTION新システム活用の必須化
です。
■飲食店がデジタル化・AI導入補助金活用で導入できるITツール例
【人手不足対策ツール】
在庫管理システム、オーダーシステム、予約受付ツール、セルフレジなど
【利益確保】
在庫管理システム、財務会計ツールなど
【マネージャー・店長の負担軽減】
在庫管理システム、給与管理ツール、シフト管理ツールなど
【労働時間の短縮】
在庫管理システム、POSレジ、セルフレジなど
【需要予測】
在庫管理システム、POSレジなど
■デジタル化・AI導入補助金の申請枠と詳細
| 申請枠 | 補助上限額 | 補助率 | 補助対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 450万円 | 1/2~2/3 | ソフトウェア購入費、 クラウド利用料など |
| インボイス枠 (インボイス対応類型) |
350万円 | 1/2~4/5 | インボイス制度への 対応に必要なソフト ウェア・ハードウェア |
| インボイス枠 (電子取引類型) |
350万円 | 1/2~2/3 | インボイス制度に対応 した受発注機能を有する ソフトウェア |
| セキュリティ対策推進枠 | 150万円 | 1/2~2/3 | サイバー攻撃のリスク を低減するためのサー ビス・ツール |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 3,000万円 | 1/2~4/5 | 複数社などによる基盤 導入経費、消費動向 など分析経費など |
■最新公募
・通常枠
・インボイス枠(インボイス対応類型)
・インボイス枠(電子取引類型)
・セキュリティ対策推進枠
2次公募:~6月15日
・複数者連携デジタル化・AI導入枠
1次公募:~6月15日
【詳細はこちら】
「デジタル化・AI導入補助金」公式サイト
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2.飲食店での具体的な活用パターンの例
【パターンA】ホール業務の効率化
導入ツール:モバイルオーダー+POSレジ
効果:モバイルオーダー導入によって注文取りのミスがゼロになり、POSレジでも会計などの時間が短縮。その分、接客でお客様とコミュニケーションする時間が増加。
【パターンB】バックヤードの自動化
導入ツール:受発注システム+会計ソフト
効果:FAXや電話で行っていた業者への発注をスマホアプリで代替。納品データがそのままインボイス対応の会計ソフトに自動連携されるシステムを構築することでバックヤードの業務を効率的かつ正確に。
【パターンC】AIによる集客・発注予測
導入ツール:AI需要予測+自動シフト作成
効果:過去のデータから来客数を予測し、食品ロス削減と最適なシフト作成を実現。
3.申請から導入までの6つのステップ
ステップ1「
G ビズ IDプライム取得」
「デジタル化・AI導入補助金」をはじめとする政府系補助金をオンライン申請(Jグランツなど)するために必要なIDがG ビズ IDプライムです。取得にはGビズID公式サイトにアクセスし、マイナンバーカードを使って申請すれば最短で即日~翌営業日にアカウントが発行されます。書類申請の場合は発行まで1~2週間かかります。
ステップ2「導入ツールとベンダーを選ぶ」
店の課題を解決するためにどんなITツールを導入すべきかを検討して候補を出しましょう。その上で、そのツールを扱っているベンダー(ITツール・IT導入支援事業者)を探して相談するとよいでしょう。ベンダーは、各種ツール・ソフトを販売しているメーカーやITコンサルタントなどを指します。詳しくはを「採択につながるポイント」をご確認ください。どんなベンダーがいるのかは、デジタル化・AI導入補助金の公式サイトから検索ができるので、チェックしましょう。
ステップ3「セキュリティー対策の宣言」
ITツールを導入するにあたり、「サイバー攻撃や情報漏洩のリスク」に備える「SECURITY ACTION」の宣言を行う必要があります。宣言には「一つ星」「二つ星」の2種類があり、セキュリティー対策推進枠は二つ星、それ以外の申請枠では「一つ星」以上が求められます。公式サイトから「一つ星」「二つ星」を選んで宣言することで、自己宣言IDを取得することができるので、それを交付申請で入力しましょう。ただ、「二つ星」の宣言には、「情報セキュリティー基本方針」をホームページなどで公開する必要があるため、申請枠がセキュリティー対策推進枠以外であれば、「一つ星」の宣言だけで十分です。
ステップ4「交付申請」
ベンダーと相談しながら、必要書類をそろえて申請を行います。このステップで提出書類についても、「採択につながるポイント」で紹介していますのでチェックしてみてください。
ステップ5「採択・導入」
国から採択が出たら、実際にツールを購入し、設置しましょう。
ステップ6「実績報告」
「正しく導入した」という実績報告を行います。補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払いなどを行ったことを証明する書類を提出します。
4.採択につながるポイント
ポイント1「ベンダー選びが採択の成否を分ける」
補助金申請には「ベンダー(IT導入支援事業者)」との連携が必須です。ツールの機能や価格だけではなく、そのベンダーが飲食業界の実情に詳しいか、導入後のサポートは手厚いか、補助金の採択率は高いかなども判断基準にして選ぶとよいでしょう。
ポイント2「AI導入による省力化をアピールする」
2026年度に名称が変更された「デジタル化・AI導入補助金」は、その名の通り「AI導入」が重要。AIを活用したツールの導入が評価される傾向にあると考えられます。例えばAIによる来客予測に基づいた「自動発注」や「シフト作成」など、「AIツールを導入することで、具体的に月に何時間の事務作業(工数)が減り、その分をどんな業務にあてることができるのか」を事業計画で示すとよいでしょう。
ポイント3「賃上げ計画を盛り込む」
国が重視しているポイントとして「従業員の給与アップ」があります。「事業場内の最低賃金を地域別最低賃金+30円(またはそれ以上)にする」といった計画を策定し、従業員に表明すると審査の際に加点されます。150万円以上の補助を受ける場合は、この賃上げが必須となる枠もあるため、事前に人件費シミュレーションをしておく必要があるでしょう。
ポイント4「診断サイトの活用」
国が提供している補助金申請を支援する診断サイトを活用するのも一案です。例えば、
「デジwith」
抱えている課題を選択しながら、最適なツールを確認できるサイト。
「DX推進指標」
会社・店全体のDX成熟度を診断できるサイト。
などがあげられます。こうしたサイトで自社の経営状態をチェックし、最適なツールを探した経緯を申請時に入力することで「現状を正しく把握し、戦略的にITを導入しようとしている」と評価される可能性もあります。
ポイント5「成果予測に具体性・説得力を持たせる」
採択のポイントの一つが、「補助金の活用によって具体的に店の経営がどう変わるのか」を説得力ある数値を交えて明示することです。
例えば、「レジが古くなったので、最新のAIレジにして便利にしたい」といっただけでは、具体性も説得力も乏しいですが、「現在、手書き伝票の集計に毎日2時間を要しており、これがスタッフの負担となっている。AI搭載POSを導入し、集計を自動化することで年間約730時間を削減。その時間をメニュー開発と接客向上に充て、売上10%増を目指す」といった具体的な「Before & After」を示すことが重要です。
5.まとめ
「デジタル化・AI導入補助金」の活用は、飲食店のDX化の強力な武器になります。特にAI活用を検討しているお店にとって使わない手はない補助金と言えます。
とはいえ、DX化は単純に楽をするためではなく、生産性を上げてお客様への「おもてなし」の質を高めるための投資であることを忘れてはいけません。何のためのDX化かを前提に導入するツールをしっかり選んで、ベンダーなどに相談しながら、補助金の採択に向けて取り組みましょう。
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