なぜ無理?「原価率50%」が繁盛店を生む

繁盛店には、いくつかの共通要因があるはずだと思って調べたことがありましたが、その最大要因は「原価率が高い」ということでした。あまりに当たり前の結論に、ズルッといってしまったものです。

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更新日:2022.7.8

Vol.11

目次
繁盛店の共通店は「原価が高い」
儲けようと思うと利益は逃げていく

繁盛店の共通店は「原価が高い」

 40年間近く、私は繁盛店や急成長チェーンの取材ばかりやってきました。繁盛店には、いくつかの共通要因があるはずだと思って調べたことがありましたが、その最大要因は「原価率が高い」ということでした。あまりに当たり前の結論に、ズルッといってしまったものです。

 「原価を高くすれば、繁盛するのは当たり前じゃないか」と反論する店主、経営者の方もおられましょうが、「じゃあ、なぜやらないの」と逆に聞いてみたいです。「原価を上げてまず繁盛店にしてみてよ」と言いたいです。

 「原価を上げたら、利益が出なくなる」との反論もありましょうが、お客が来なくて赤字の状態よりもずっとましではありませんか。では、どのくらいの原価率でやればよいか。すごい乱暴な言い方をしますと、50%です。50%の原価をかけている飲食店なんてほとんどないのですから、商品力の差ははっきり出ます。すぐに利益は出ないかもしれませんが、よほどのことがないかぎり、客数は確実に増えます。

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 結局やらないのは、勇気がないのです。業界の常識にとらわれすぎているのです。原価は売り値の3分の1と、誰が決めたのでしょうか。そんな常識を一度ひっくり返してもらいたいですね。実際、ここのところ「原価に50%をかける」を旗印に、大繁盛を生み出している店(会社)がボツボツ出てきました。押すな押すなの大繁盛です。近隣のライバル店の店主(店長)が、その繁盛ぶりをうらめしそうに見ています。50%の原価で繁盛をわがものにした、ある経営者はこう言っていました。「私は外食のまったくの素人です。調理の技術を持っているわけでもない。私のようなド素人が勝つためには、何をしたらよいか。食材の原価を上げるしかなかったのです。お客様にとって、違いがいちばんわかりやすいですからね」。

 この店のワインは、すべて小売店での価格と同じレベルです。ワインの持ち込みもオッケーで、どんな銘柄を持ち込んでも、持ち込み料は約999円。実にわかりやすい。

儲けようと思うと利益は逃げていく

 そうなのです。原価率の差は「歴然たる違い」としてお客に訴えかけます。最近のお客は、原価に対して実に確かな目を持っています。原価をかけている店、いない店を、瞬時に見抜きます。小手先でごまかそうとしても、そんなものに惑わされるほど甘くはありません。

 また、料理にはある程度原価をかけても、アルコール類でしっかり儲けようという店が少なからずありますが、もっとも愚かなやり方です。お客はだいたいの小売価格を知っているのですから、それを高く売ろうなどと考えている店はたいてい苦戦します。有名な日本料理店の、特に日本酒に多いのですが、その価格は一合1,000円とか、1,500円などがザラです。ちょっと飲みすぎると、料理代よりも高くなったりします。いったい何を考えているのでしょうか。

 先の原価率50%を掲げて大繁盛をものにした経営者は、「これだけ繁盛すると、原価って下がるものなのですね。今は40%でいけています。不思議なものです」とも話していました。そういうものなのです。食材の質を落としたわけでもなく、価格を上げたわけでもない。繁盛し、集客が増え、売上がアップすることが、原価を引き下げます。原価50%でやったところ大繁盛をして、40%に下がった店と、40%でカツカツの営業をして、40%にとどまっている店を比べてみますと、料理の内容や価値が全然違うのです。そして、後者はいっこうに儲からず、前者はお客がお客を呼び、ますまず儲かる店としての確固たる地位を確立していきます。

 そもそもの違いは何だったのか。ひとつは勇気ですね。勇気があったのか、なかったのかの違い。もうひとつは、価値を提供しようとしていた店と、儲けようとしていた店の違い。儲けようとすると利益は逃げていき、価値を提供しようとすると、利益は転がり込んでくるものです。

 「業界の常識を疑え!」今回のテーマはこれに尽きます。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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