2012/12/04 挑戦者たち

株式会社アンシャンテ 代表取締役社長 魚住 祐次氏

岡山に個性的な店舗を出店してきた株式会社アンシャンテ。ユニークな空間は、大人の遊び心をくすぐる。「今までにない店をつくりたい」という魚住氏にこれまでの歩み、店作りのこだわりについて伺った。

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お客様の驚きと感動を大切にして、今までにない空間を提供していく

岡山市内に個性的な店舗を次々に出店してきた株式会社アンシャンテ。その業態は、カフェや個室居酒屋、フレンチレストランなど様々だ。店内に滝や隠し部屋があるユニークな空間は、大人の遊び心を満足させてくれる。「今までにない店をつくりたい」という代表取締役社長の魚住裕次氏に、これまでの歩み、店作りのこだわりなどについて伺った。

――飲食店以外も含めて、起業するまでに多くのアルバイトをされたそうですね。

生まれてから高校卒業までは、愛媛県の宇和島市で過ごしました。当時はアルバイト雑誌もなく、高校生ができるアルバイトを探すのに苦労しました。電話帳を見て、アルバイトを募集していそうな店に片っ端から電話をかけました。地元の名産である「じゃこ天」の工場やペットショップ、屋台の手伝いをしたこともあります。最初は単純に、自分の力で稼ぐということが楽しかったのですが、カフェやファミリーレストランのアルバイトを経験するなかで、飲食業界に興味を持つようになっていきました。それで、高校卒業後は岡山の調理専門学校に進学したのです。

調理専門学校を卒業した後は、当時、岡山市でもっとも大規模に展開していた居酒屋チェーン店に就職しました。「25歳になるまでに起業して、自分の店を持ちたい」と目標を立てていたので、まずは大手の居酒屋チェーンで、業務やフランチャイズのノウハウを勉強しようと思いました。すぐに3店舗ほどを任されるようになり、店舗運営についても学ぶことができました。その会社には3年間勤めましたが、毎日、目が回るような忙しさだったことを覚えています。

居酒屋チェーンを退職後は、ほかの業態についても学びたいと考え、創作和食、イタリアンレストラン、中華料理などの飲食店でアルバイトをしました。一時は、5店舗のアルバイトを掛け持ちしていたこともあります。

――最初に出店したのはカフェだと伺いました。なぜ、カフェ業態だったのでしょうか?

実は具体的な業態は決めていませんでした。まず、物件探しから始めたのです。起業するまでの間はアルバイトをしながら、自転車で岡山市内を走って出店する物件を探していました。そんなときに、条件の良い物件を紹介してもらうことができたのですが、そこはカフェや雑貨屋が多い立地でした。そこで、その客層に合わせて、カフェを出店することにしたのです。24歳で会社を立ち上げた翌年、25歳のときでした。

現在までにいくつかの店舗を出店してきましたが、私の場合はいつも、まず良い物件を探すことから始めます。そして、その場所で最適な業態をリサーチし、考えて、店のコンセプトを固めていきます。これは、もしかしたらほかの経営者の方とは違うやり方かも知れませんが、物件と社内にいる人材を照らし合わせて、新しいビジネス、店舗作りを考えていきます。

その後の店舗展開も、一つ一つの店舗をじっくりと育てていくというよりは、どちらかと言うと、タイミングを重視してきました。最初の1年で4店舗を出店しましたし、同時に2つの店舗を開店したこともあります。

1981年 愛媛県宇和島市生まれ/2001年 高校を卒業後、岡山の調理学校に進学。調理師学校を卒業後、岡山市内で居酒屋チェーンを展開する会社に就職/2002年 居酒屋チェーン店を退職。中華・イタリアンなどの業態でアルバイトを始める/2004年 独立し、株式会社アンシャンテを設立/2005年 最初の店舗となるカフェをオープン/2010年 気鋭の若手起業家として、OKAYAMA AWARDにノミネートされる

――経営するどの店舗も個性的な作りが特徴で、ブランドも異なっていますね。

現在は、6店舗を展開していますが、すべて異なるブランドです。共通しているのは、それまで岡山の飲食店にはなかった空間を提供しているということだと思っています。

現在は珍しくなくなりましたが、私が起業した当時は、岡山市内で個室のある居酒屋は、ほとんどありませんでした。個室でくつろげる飲食店そのものが珍しかったと思います。弊社の6店舗にはいずれも完全個室を用意しています。

もちろん、店舗展開する際には、同じ業態・ブランドや同じメニューの方がオペレーションや仕入れが効率的なことはわかっています。しかし、2号店を出店するよりも、別のまったく新しいお店を作る方が絶対に楽しいですし、これまでもそれを信じて実行してきました。私自身、厨房で料理を作ることも、ホールで接客することも好きなのですが、何よりそれ以上に、「店作り」にいちばんの魅力を感じています。

――店内に滝を作るというユニークなアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか。

これまでにどこにもなかった空間を作りたいと考えたときに、店内に水が流れている、川のあるお店はすでにありました。もっと迫力がほしい、ダイナミックに水を流したい、来店したお客様に楽しんでいただきたい、と考えていくうちに、「ハナミズキ」の吹き抜けに滝を作ることを思いつきました。「ハナミズキ」にはほかにも、シアタールーム風の個室や、本棚型の隠し扉から入るVIPルームなども作りました。VIPルームは内装にも力を入れて、シャンデリアやスピーカーなどにも、最高級のものを使用しています。これも、お客様にゆったりと空間そのものを楽しんでいただきたいという考えがあってのことです。

このVIPルームをはじめ、弊社の運営する店舗では、一度来店されたお客様に、「今度はぜひ、あの部屋を利用したい」とおっしゃっていただくことが少なくありません。「次回来店したときはあの個室を利用したい」「この個室は初めて入った」など、空間そのものを話題にしていただくことは、とても嬉しいですね。

いろいろな空間を“選ぶ楽しみ”は、異なるブランドの店舗を展開してきたことにも通じています。例えば、岡山産の厳選食材で作る創作料理が売りの「ICHIZU」では、プレミアム焼酎を含めて、様々な焼酎を提供していますが、これは岡山でいちばんの品ぞろえだと思います。来店目的に合わせて店舗を、さらにその中の空間を選んでいただきたいと考えています。

――短期間に多くの店舗を展開してきましたが、今後のビジョンをお聞かせください。

これまでに出店してきたどの店舗でも、凝った空間で“驚き”を演出して、お客様にご満足いただいているという自負はあります。そして、まだ具体的なプランではないのですが、将来的には東京にも出店したいと考えています。日本の最先端を行く東京で、これまでの自分のビジネスを試してみたいという気持ちがあるのです。

今までにない空間を提供するという点では、ある程度目標を達成できたと考えていますので、現在は新しい店舗を作ることよりも、今ある店舗のなかで、お客様の期待により一層、応えていくことに注力しています。というのも、お客様は料理やサービスの面においても、期待以上の驚きを求めていると、あらためて感じているからです。そして、それに応えていくためには、サービスの質を上げることが重要だと考えています。

お客様の期待以上のサービスを提供するというのは、ハードルが高い目標ですが、まずはこれをクリアしなければ先に進めないと考えています。運営する業態は異なりますが、その分、共有できるノウハウはたくさんありますので、各店の店長を集めて毎週ミーティングを行い、スタッフの接客サービスのレベルアップに向けて、施策を練っているところです。初心に帰って、現在の自分のビジネスを見つめ直すことが、次のステップに進むためには不可欠だと感じています。

ハナミズキ(岡山市・北区)
http://r.gnavi.co.jp/y152302/
岡山駅から徒歩5分に立地する、滝が流れる本格和創作料理の店。カウンター席のほかに、大小さまざまな個室がある。宴会は最大66名まで対応可能。
WATER HILLS kataomoi -かたおもい-(岡山市・北区)
http://r.gnavi.co.jp/y152303/
岡山駅から徒歩2分の居酒屋。和風でありながらモダンなデザインを取り入れた164席の完全個室が用意されている。各個室は廊下で結ばれていて、入口から個室に向かうまでの空間も楽しめる。「若鶏の塩ダレ焼」など人気メニューと、飲み放題がセットになった宴会コースは4名から対応している。
京都Dining Sunao -すなお-(岡山市・北区)
http://r.gnavi.co.jp/y152304/
京都の庭園をイメージしてデザインされた「和」の空間。上品で落ち着いた雰囲気の個室は、プライベートから接待まで、幅広いシーンで利用できる。フレンチ出身のシェフによる、和の食材を使ったオリジナル創作料理が楽しめ、70名まで対応できる宴会場には、大型プロジェクターも用意されている。

Company Data

会社名
株式会社アンシャンテ

所在地
岡山県岡山市北区問屋町18-102

Company History

2004年 株式会社アンシャンテ設立
2006年 「ICHIZ」オープン
2008年 「Sunao」オープン
2009年 「kataomoi」オープン
     「LA BOTTEGA vino」オープン
2010年 「ハナミズキ」オープン
     「giraffe-ジラフ-」オープン

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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