愛される店を創り続ける秘訣は、地域のニーズの綿密なリサーチ
「立地ありきの出店戦略」を掲げ、綿密なマーケティングに基づき、地域のニーズに応える魅力的な店舗を次々と展開し続けている株式会社ディーアール。全店黒字という業績を背景に、昨年には大阪にも進出。今後、日本全国、そしてアジアへの展開も見据えている代表取締役の谷脇宗氏に、これまで歩みと同社の成功の秘密を伺った。
――父親のラーメン店でのアルバイトが飲食業界で働くきっかけとお聞きしました。
大学受験に失敗して浪人すると決めたときに、「お前がやったことだから、自分で責任を取れ」と父から言われました。そこで、予備校の費用などを稼ぐために、それまでもアルバイトをしていた父の経営する「ラーメン道楽」で、初めて真剣に仕事に取り組み始めました。そうやって働いていくなかで、飲食業のおもしろさに目覚めたのです。こちらが作った料理に対しての反応を、目の前ですぐ見ることができますし、何かひとつ新しい工夫をすれば、結果が変わっていく。飲食業には、やり方によって様々な可能性があるのだと実感しました。そこで一浪して入った大学を中退し、思い切って父の会社に入社しました。
その後、しばらくして、「ラーメン道楽」3号店となる洗足池店(東京・大田区)の店長に就任。徐々に経営にも参加していくようになると、これから会社を大きくしていくにはもっと勉強が必要と考え、交流会やセミナーなどに積極的に顔を出すようになりました。また、食材卸のために新たに現在のディーアールという会社を立ち上げました。
――新しい店舗はどのようなコンセプトで出店しているのでしょうか?
まず、様々なところにアンテナを張り、いい物件情報を得たら、すぐに動けるように準備をしておくことが大切です。そして実際に現地へ足を運び、交通量はどのくらいか、どんな人が歩いていて、周囲にどんな店があるのかを徹底的に調査します。そのうえで出店する業態を考えます。
このような「立地ありきの業態開発」を行うきっかけになったのは、「立呑酒場 道楽 亀有店」の出店です。亀有の駅前にある7坪半の物件を紹介されたとき、最初は「ラーメン道楽」をやろうと思っていたのですが、実際に足を運んでみると、ラーメン店にしては小さいと感じました。では、狭くても効率のいい業態は何か。それが立ち飲み屋でした。また、周囲を見渡すと、安い串焼き屋さんがたくさんあったので、それらと差別化するために、レトロな作りの中にもモダンな雰囲気を加えて、女性でも入りやすい店内にしました。
バルやイタリアンなど洋食業態の展開においても、立地がポイントになりました。ビストロ「マルミチェ-marumiche-」を出店する際、周囲に洋食の店がなかったので、思い切って洋食に挑戦しようと考えたのです。「世の中の流れを見ても、ワインは必ず受ける!」という確信もありました。
オープンまではワイン業態の人気店を何軒もまわり、メニューやサービスなどをリサーチしました。また、従業員を集めてワインの勉強会を開き、一晩で100種類以上を試飲したこともあります。料理についてはフレンチのシェフに入社してもらい、ホルモン店「まるみち」で培ったノウハウを活かして、ワインと合うもつ料理を考案しました。
また、洋食業態に進出したことで、いい物件を獲得しやすくもなりました。土地やビルのオーナーさんに対して、「弊社はいろいろなお店ができますので、ご希望の業態を提案します」という交渉ができるようになったのは大きいですね。
――数多くのお店を経営するために、どのようなことに力を入れていますか?
まず、飲食店で大切なのは外観だと考えています。何料理を出すお店なのかがすぐわかり、インパクトがあって、行ってみたいなと思わせるような外観デザインを心がけています。
料理に関しては、よい材料の仕入れ先を確保することはもちろん、おいしい料理が提供できるように、社員や私自身が他店で修業させてもらうこともあります。また、お客様が喜んでまた食べたくなるような名物メニューも必須ですね。出張先で魅力的な料理に出会えば、それを自分たちの店にフィードバックするようにしています。
心地よいサービスを提供するためには、挨拶をきちんとして、お客様のことを常に第一に考えて行動することを従業員に徹底しています。また、月1回の店長会議は1店舗ごとにきちんと時間をとってじっくり行い、会社として目指すべき方向を各店舗にしっかり共有しています。
――昨年は大阪にも新店舗をオープンしました。今後、全国展開も考えているのですか?
「梅田ワイン酒場 バルミチェ」で、大阪に進出したきっかけは、東日本大震災です。これからもし、東京で直下型地震が起きて大きな被害が出た場合、東京にしか店舗がないと、会社全体の売上に大きな影響が出てしまうと実感したのです。そこで全国の主要都市を視察し、まずは大阪に進出することに決めました。
しかし、大阪と東京では、お客様が飲食店に求めるものや金銭感覚が違うので、同じやり方では通用しません。3500円払って、その料理の価値に納得するのが東京とするなら、例えば大阪のお客様は、「3500円の料理が3000円で食べられる!」というお得感を大切にします。そういった点を考えながら、店舗を運営しています。
東京以外の地域に進出したことで、「大阪の店舗へ行きたい!」と手を挙げる社員も出始め、社内のモチベーションも上がりました。また、現地の業者さんとの新たなお付き合いも生まれ、入ってくる情報量が格段に増えました。様々な部分でプラスに作用していると感じています。
昨年の大阪出店を皮切りに、これから2年で大阪にはあと3店舗ほど出店しようと考えています。また、2月には福岡・博多にイタリアンバルを出店します。さらに、東南アジアへの進出も予定していますし、国内だけでなく、世界にもどんどん進出していきたいですね。
――ますます発展が期待できそうですね。今後の具体的な目標と課題をお聞かせください。
今期、売上10億円の壁を突破できそうなので、次の目標は、中長期的に30億円を見据えています。新規出店はこれまで通り、年3~4店舗のペースで行う予定です。たくさん出店して、ダメなら安易に閉店するのではなく、しっかりとした店を出して長く愛され、求められるよう、一店一店の経営に全力を注いでいきたいと考えています。
課題は、会社が大きくなるスピードに、社内の体制が追い付いていないことです。それと個人的には、社員にはもう少しハングリー精神を持ってもらいたいですね。そのためにも、まずは私や幹部がもっと一生懸命に取り組んで、その背中を見せることが大切だと思っています。
まだまだ小さい会社ですから、フットワークが命。信用を勝ち得るにはそれしかありません。外食業界は厳しいと言われてはいますが、2013年はとても可能性のある年だと、前向きに捉えています。たとえ市場が縮小しようとも、外食する人は必ずいるわけですから、“本物だけが勝ち残る”ための努力をしないといけません。社員のモチベーションをさらに上げるためにも、これは絶対条件です。今後も前向きに、スタッフみんなで明るく挑戦し続けていきたいと思っています。
http://r.gnavi.co.jp/e012008/
http://r.gnavi.co.jp/e012002/
http://r.gnavi.co.jp/e012005/
Company Data
会社名
株式会社ディーアール
所在地
東京都品川区東大井1-21-9 マンションサメズ5F
Company History
2002年 株式会社ディーアール設立
2006年 「立呑酒場 道楽 亀有店」オープン
2007年 「まるみち」五反田店オープン
「ラーメン道楽」フランチャイズ開始
2011年 「マルミチェ-marumiche-」
「バル道」オープン
2012年 「梅田ワイン酒場 バルミチェ」
「そば道 東京蕎麦style」オープン