お客様と価値観を共有し、街の風景を形づくる店を目指す
独自の「QSC」を経営理念に掲げる株式会社イーデザインは、飲食店激戦区、東京・恵比寿で着実に客の心を捉えている。経営者、店舗スタッフ、来店客が価値観を共有し、10年経っても変わらない、その街にあるべき繁盛店をつくる。そんな堅固なポリシーを胸に秘める代表取締役社長の佐藤充氏に店づくりと人づくり、そして街づくりについて伺った。
――御社は独自でユニークな「QSC」を経営理念に掲げていますね。
当社の経営理念にあるQSCとは、一般的な飲食業での「クオリティー・サービス・クレンリネス」ではなく、「クオリア(Quaria)・センス(Sence)・クリアー(Clear)」です。クオリアは第一印象、センスは五感、クリアーは透明性という意味で使っています。この理念は、創業当時から変わっていません。これは飲食店でのアルバイト時代に、店長や複数店の統括業務などを経験し、独立するまでの過程で自分自身が感じたこと、必要だと思うことをまとめたもの。クオリアは自分でも使い慣れていない単語ですが、直感的な第一印象を大切にするという意味で、キーワードの一つとして選んでいます。
その中でも特に重要視しているのが、クリアーであること。つまり、「見せる」「見える」ことの大切さです。例えば、キッチンが清潔であることは飲食店の基本中の基本ですが、そこに磨き上げられたステンレス製の什器があれば、より清潔さを伝えることができます。料理であれば過剰な盛り付けをせず、よりシンプルにすることで、お客様が食べたい食材、お客様に味わっていただきたい食材に集中していただくことができます。
「見える」ようにすることは、経営者、スタッフ、お客様が同じ価値観を共有することにもつながる重要な要素だと考えています。
――そのQSCを、店舗設計としてどのように具現化しているのでしょうか?
どのような店なのかを、お客様に第一印象で理解していただくためには、しっかりとしたコンセプトが重要です。例えばバル業態であれば、適度な窮屈さ、シェアできるボリューム、立ち飲みスタイルなど、バルらしい環境を追求し、どう演出するかを徹底的に考え抜きます。
また、透明性という点では、当社はすべての店舗がオープンキッチンです。「見られて困る仕事はしてほしくない」という意味もありますが、調理や盛り付けの過程をすべて見せることで、食材へのこだわりなどを、お客様に直接お伝えすることができます。料理やサービス、スタッフとのやり取りなど、居心地のよさを五感で感じ取っていただける環境の提供を、常に目指しています。
店舗設計では、お客様の使い勝手についても配慮しています。お客様の目的に合わせて店を選択していただけるようにすることも重要ですが、ひとつの店の中でもカウンター席と個室を用意し、普段使いでも、接待や食事会などでも利用していただけるようにしています。一人でお見えになっても、グループで来店されてもくつろいでいただける空間を提供していきたいですね。
しかし、飲食店を経営する上で、やりたいことをやりたいタイミングでできる、ということはほとんどありません。オペレーションでは「ワンウェイ、スリージョブ(1つの行動で3つの仕事を心がけること)」が基本ですが、これはビジネスでも同様だと考えています。出店する際には、「人・物件・資金」をうまく組み合わせて、タイミングを逃さないことを心がけています。
――店舗とスタッフ、あるいは会社と従業員の関係についてどうお考えになっていますか?
料理とサービスについて、当たり前のことをきちんとやらなければいけないのは、言うまでもありません。しかし、不思議なことにそれができるベテランスタッフをそろえた店でも、その店の最高の売上を達成できないことがありました。そして、その理由を考えていくと、スタッフにも常に「成長する環境」が必要なことに気づいたのです。
ベテランのできるスタッフと比較して、スキルや経験の不足しているスタッフが入ることで、現場にある種の緊張感が生まれます。また、その若いスタッフに教えることで、ベテランスタッフ自身もさらに成長します。様々なレベルのスタッフがいる店の方が、全体のパフォーマンスが上がるのです。人の成長こそ店の成長。スタッフそれぞれが成長できる環境を用意していくことも、経営者の重要な役割だと考えています。
また、働く環境という点では、当社は役職ごとの給与体系や昇級に関する項目を、すべてオープンにしています。ある意味、現実主義で実力主義です。その一方で、給与水準や福利厚生などは、同業他社と比較して高い水準にあると自負しています。とりわけ、責任や報酬、負担とやりがいのバランスには配慮しています。
サービス残業などが社会問題にもなっていますが、当社ではもちろん、残業代はすべて支払います。これからの飲食業界は、一般企業と同様にコンプライアンスを遵守するのは当たり前のこと。従業員の待遇向上を進め、雇用の拡大を促し、業界全体の価値を上げたいですね。
――これまでの出店は恵比寿が中心ですが、このエリアへの想いを教えてください。
実は恵比寿でなければいけない、という理由はあまりありません。ただ、恵比寿は自分自身、もう10年以上住んでいる場所で、土地勘もあります。恵比寿には多くの飲食店があり、その中のいくつかが当社の店ですが、出店している企業として、恵比寿という街への責任のようなものは感じています。飲食業を通じて何かできないかと考えて、数年前から、街づくりの活動に参加しています。
その街づくりというという点も踏まえて考えると、当社の目指す飲食店は「流行店」ではなく、10年後も変わらない「繁盛店」です。そこにあるべき店、何より自分が行きたいと思える店を作っていきたいと思っています。
恵比寿の街の風景の一部として、欠くことのできない存在。お客様の思い出の一コマとして、いつもそこにある、スタッフが誇りを持って働くことのできる、そういう店と街が理想です。
――今年は既に2店舗をオープンしました。今後の事業展開や出店計画を聞かせてください。
何年後に何店舗出店するといった、きっちりとした計画はあえて立てません。それは、何のために出店するのか、店の存在意義が大切だから。それと、「人・物件・資金」のタイミングを逃さずに、臨機応変に対応するためです。
スタッフの成長や押さえておきたい物件など、外食ビジネスでは計画できない要因が少なくありません。とはいえ、現在考えているのは、食に関連した事業の拡大・展開です。例えば、ワイン輸入業やパン専門店を経営して、グループ内での食材供給やスタッフの専門知識習得の場としても活用したいと思っています。これは条件さえそろえば、すぐにでもやりたいことです。
また、ラーメン店やファミリーレストランといった、これまで当社が手がけてきた店とは、まったく異なる業態への進出も考えています。
私は、当社が10年後も同じ企業理念を貫いていることを確信しています。そして、当社での経歴が飲食業界で働く上での「お墨付き」になるような企業文化を育てていきたいと考えています。
http://r.gnavi.co.jp/b446016/
http://r.gnavi.co.jp/b446011/
http://r.gnavi.co.jp/b446015/
Company Data
会社名
株式会社イーデザイン
所在地
東京都渋谷区恵比寿西1-13-6
ブラッサムZEN 5F
Company History
2007年 株式会社イーデザインを設立
「ボデガス ガパ」オープン
2009年 「焼鶏 松本」オープン
2010年 「地中海バル クアトロ」オープン
2011年 「マジカメンテ」、
「スペインバル エルヴエロ」オープン
2012年 「居酒屋 佐藤」オープン2013年本社移転
「恵比寿 黒帯」オープン
「ビストロ アンコニュ」オープン