飲食店が店内で行う様々なイベントは、来店客にとって驚きや感動を生む“この店だけの”特別な体験。地元の酒や食材を活用したり、限定のお得なサービスを提供するなどしてファンを生み、リピートにつなげている店を取材した。
新潟の酒や食材の魅力を発信する会が盛況!
【新潟・新潟駅】和食酒場 風花
会の盛り上がりを考え余興や席次にも気を配る
JR新潟駅から徒歩6分の場所にある「和食酒場 風花」は、“地産地消×産地直送”をコンセプトに掲げる和食店。オーナーシェフの長吉和幸氏が作る地元食材を使った創作和食と、40銘柄以上をそろえる日本酒が売りで、地元住民を中心に賑わっている。
そんな同店が、「風花会」と称する店内イベントを始めたのは、オープン1年後の2016年1月。「新潟の日本酒や食材の魅力を発信したいと思って始めました」と、長吉氏は狙いを語る。付き合いのある約40の蔵元の1つに、大吟醸や季節の酒など8種類ほどを用意してもらい、それに合う新潟の様々な食材を使った料理(約8品)とともに提供するというもの。定員は、店の席数と同じ26名で、40代を中心に地元住民などが多く参加している。
会の当日は、蔵元や野菜の生産者なども店に招き、日本酒についての豆知識や飲み方のアドバイス、食材の説明などをしてもらう。また、受付のときに日本酒などに関する簡単なクイズを参加者に出して回答してもらい、正解者には、会の最後にお猪口などの景品をプレゼント。参加者を飽きさせないような余興を組み込みつつ、交流を深めている。
この「風花会」の参加費は、6500円前後。「当店の客単価は、4500円ほどで、数字だけを見ると『風花会』の方が高いですが、高単価な大吟醸酒や、原価をかけた料理を提供しているため利益はそこまで出ません。ただ、『日本酒のおいしさを初めて知った』など、参加者の方に驚き、喜んでいただくことで、結果的に店のリピーターが増えていると感じています」と、長吉氏はメリットを語る。
最近は日本酒だけではなく、新潟産のワインやビール、地元の野菜にスポットを当るなど、内容のバリエーションも広がり、ファンは着実に増加。定期的に開催を続け、今年7月には記念すべき10回目を迎えた。
しかし、過去すべてがスムーズに進行したわけではない。「屋外でビールを楽しむ内容にしたとき、料理の提供が遅くなってしまった」「参加者の自己紹介タイムを設けたら、時間がかかって間延びしてしまった」などの反省点を踏まえ、内容をブラッシュアップしてきた。例えば、テーブルごとに盛り上がりに差が出てしまった反省を活かし、現在はあらかじめ店が参加者の席を決めている。「参加者には店の常連さんも多いので、ムードメーカーになりそうな人にテーブルの中心に座ってもらうなど、会が盛り上がるよう席の配置には気を配っています」(長吉氏)。こうした気遣いもあり、初対面でも話が弾み、参加者同士が仲良くなるという。
「予想外だったのは、参加者と生産者や蔵元との間にもつながりができたこと。『風花会』がきっかけで、興味を持ち、蔵元などから直接商品を購入するようになった人も少なくありません」と、長吉氏は笑顔を見せる。現在、同じ通り沿いにある飲食店と連動した企画にも力を入れており、今後も“新潟の酒と食材”を伝えるイベントで、地域を盛り上げたいと考えている。
長吉和幸氏新潟県五泉市出身。料亭などで修業後、35歳で独立。新潟県の食材を使った日本料理と地元の日本酒にこだわった店づくりを進める。
新潟県新潟市中央区米山2-7-20 ITPケヤキビルII
https://r.gnavi.co.jp/5vcwktw70000/2014年、新潟駅南口のけやき通り沿いにオープン。女性も入りやすい、カフェのような雰囲気。ランチ、ディナーともに近隣企業に勤めるビジネス層や地元住民で賑わっている。