食事をする場所から離れ、独立したスペースであるトイレは、お店からのメッセージやアピールがお客に届きやすい場所。リピーター獲得やお店のファン作りをはじめ、コミュニケーションのきっかけとしてトイレ空間をうまく活用している2店舗を紹介。
トイレの中はもちろん待ち時間も楽しませて客とスタッフの距離が縮まる
【宮城・仙台駅前】 九州男児 仙台店
知恵の輪を解いてもらえるおいしいデザートに笑顔
ビルの構造上、客席80に対してトイレはひとつ。そのため、宴会ともなるとトイレ前が渋滞することも。そこで少しでも客の気を紛らわせるためにと、トイレ前に知恵の輪や心理テストの本が置かれ、壁になぞなぞが貼られた。「トイレに並んだことで、店にマイナスイメージを持たれてしまうのは避けたい。そもそも、お客様には、笑って楽しんで帰ってほしい。そのための策です」と店長の鈴木皓祐氏。知恵の輪は、はずせた人にデザートサービスの特典を付けた。グループ全員がはずしたら、盛り合わせで用意するなど、その日によって違ったデザートをサービス。また、心理テストの本は、客同士で読みながら待つ輪にスタッフが加わったり、なぞなぞは、近くにいるスタッフが答えを聞かれるなど、客とスタッフのコミュニケーションを生むツールとして活躍している。
“トイレ大作戦”はトイレの中までも続く。個室内でまず目に入るのは、壁に貼られたトイレ限定メニューの数々。「これはメニューに載せていない裏メニューで、実は私のいちおしメニューのこともあります。新しいメニューを考案した時には、お客様の反応を見るためにも、トイレに貼ったりします」と鈴木氏。また「宝探しゲーム」もあり、おもちゃのアヒルを見つけると、ドリンク1杯のサービスを付けている。さらには、スタッフの紹介文なども壁に貼り、名前を覚えてもらうきっかけとしても利用している。トイレという閉ざされた空間だからこそ、貼紙一枚一枚に、客はじっくり目を通すことができる。
トイレ周りの楽しみを充実させることは、コミュニケーションだけでなく、強いインパクトで「楽しい店だった、また来たい」という印象を残す狙いもある。「設備はお金をかければ解決できるかもしれません。しかし、それで良しとせず、マイナス面もアイデア次第でプラスにすることが重要」と鈴木氏。スタッフにもトイレ前での客との会話は、業務に支障がない限り積極的に行なってほしいと伝えている。