更新日:2024.6.18
飲食業界では、ユーザーが外食に戻ってきた今、継続的な人手不足が深刻な課題となっています。
ぐるなびが2023年2月に全国の加盟店に対して行った
アンケート「人手不足と加工食品に関する調査」
では、
6~7割の店舗がホールスタッフ・キッチンスタッフともに人手不足を感じています
。毎日の店舗オペレーションに大きな影響を与えており、6割を超える経営者や店長がこの問題に日々悩まされています。あなたのお店でもきっとそうではないかと思います。なぜ飲食業界はこのような人手不足に常に悩まされているのでしょうか。有能なスタッフを定着させるにはどんな取り組みをすべきなのでしょう。
優れたスタッフを確保し定着させることは店舗オペレーション改善の第一歩です。そこでこの記事では、飲食業界における人手不足のワケを考えつつ、スタッフの定着を促進するための具体的な方法について考えてみます。
目次
飲食業界の人手不足の現状のおさらい
定着したスタッフとの飲食店経営はメリットだらけ
スタッフに定着してもらうためにやるべきこと【理想編】
こんな方法で人手不足を解消しています【事例編】
1.キッチンスタッフに裁量権を持たせて、モチベーションアップ
2.インセンティブ強化のキャンペーンでスタッフ・店舗・お客様の三方良し
3.短期採用の求人サービスを入り口に、良い人材の長期雇用を実現
4.話題のスポットワーカー(タイミー) をマックスまで活用
5.外国人労働者とのマッチング「外食特定技能」からの雇用
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飲食業界の人手不足の現状のおさらい
まずは帝国データバンクのデータ「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」をみてみます。これによると、 正社員の人手不足に陥っている企業の割合は52.1% で、中でもインバウンド需要が戻ってきた「旅館・ホテル」業界では75.6%の企業が正社員不足に直面しています。
インバウンド需要の回復といえば飲食業界も同様の傾向があり、こちらはアルバイト含む非正社員不足が顕著でした。非正社員不足に悩む企業は30.9%で、 飲食業界では実に82%の企業が非正社員不足に直面しています 。外食や観光が回復しても、人手不足が原因で売上が頭打ちになっている状況が推察されます。
次に離職率のデータを見てみます。厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」 によると、
新卒就職者の就職後3年以内の離職率が高い産業は、高卒・大卒ともに「宿泊業、飲食サービス業」がワーストワン
となっています。高卒が62.6%、大卒が51.4%なので実に半数以上が3年以内に離職することが分かっています。
新卒の離職率が高い飲食業界。なぜこのような状況なのかは店舗によって様々な理由があるかと思いますし、「飲食業とはそういうものだ」という認識の経営者の方ももちろんいらっしゃると思います。とはいえ常に人手不足に悩まされている飲食業界。
定着率を高め、採用コストを減らしていくことも立派な店舗経営戦略のひとつ
です。
釈迦に説法ですが、飲食店が人手不足になる原因を列挙してみます。ここでは一旦、飲食業界が直面している「非正社員不足」すなわちアルバイト人員不足について考えてみます。下記は飲食業界だけの問題ではありませんが、よくあがる理由となっています。
-
労働環境が厳しい
- 長時間勤務が当たり前
- アルバイトなのに質・量ともに正社員レベルの業務をまかされる
- クレーム処理など責任の重いお客様対応が必要 -
報酬や待遇に不満
- 時給や月給が相場よりも低い
- 福利厚生がない -
シフトの融通がきかない
- 人手不足の店ほどシフトの融通が利かない状態になっている
- 社員が病欠の場合もシフトに入らされる
- 最近では「バイ畜」という言葉でブラックアルバイト環境を揶揄する言葉も -
やりがいを感じない
- 与えられた業務をこなすだけ
- 時給が上がる基準が不明瞭
- スキルアップにつながらない
ほかにも人間関係のトラブルや採用基準などの問題があがるかと思います。ご自身のお店や近隣の店舗と比較していかがでしょうか。
定着したスタッフとの飲食店経営はメリットだらけ
冒頭で触れましたが、外食やインバウンド需要の回復に伴いアクセルを踏み直したい飲食業界にとって、人手不足は大きな問題です。しかし、同時に言えることは、人手不足が解消され優秀なスタッフが定着することでお店は回り始め、その分の販促と集客につながるかと思います。予約の枠も拡大することでユーザーの予約体験と来店時の満足度も上がるでしょう。何よりも、スタッフの定着は採用コストの削減を意味しますから、店舗経営には数え切れないほどのポジティブな影響が発生します。
スタッフに定着してもらうためにやるべきこと【理想編】
ここからはスタッフを定着させるための理想をまとめておきます。現実は難しい点もかなり多いと思いますが、 「働き方改革」の時代に、飲食業界だけ遅れているわけにはいきません…! 導入のヒントになればと思います。
-
環境を整備する
- 柔軟にシフトを組むための環境整備
- 休憩スペースの充実など、職場環境の改善 -
トレーニングを充実させる
- スキルアップの機会提供やキャリアパスの明確化
- 新人研修やマンツーマン指導の強化 -
コミュニケーションを促進する
- チームビルディングイベントや定期的なミーティングの導入
- マネージャー/スタッフ間のオープンで透明なコミュニケーションの構築 -
インセンティブを強化する
- パフォーマンスに応じた昇給やボーナス制度の設定
- スタッフの貢献を評価する文化の醸成 -
福利厚生を充実させる
- 健康保険や福祉施設の提供
- スタッフ割引や特典の充実
ぜひ、導入可能なところから検討してみてはいかがでしょうか。
【ぐるなび通信関連記事】
目的を明確化し、店の成長につなげる! 戦略的会議のススメ
こんな方法で人手不足を解消しています【事例編】
ぐるなびの関連のお客様から、スタッフ採用やスタッフ定着に関しての事例を紹介させてください。
1.キッチンスタッフに裁量権を持たせて、モチベーションアップ
東北にある居酒屋さんで取り入れているのは、厨房のスタッフのモチベーションアップにつながっている「従業員おまかせ刺盛り」。盛り付け方は従業員が自由に決め、お客様にサービスする前に店長が最終チェックします。通常よりお得なお値段で提供されるため好評で、従業員のモチベーションアップにつながっているんだとか。他にない発想を取り入れることで、働きがいにつながっている事例かと思います。
2.インセンティブ強化のキャンペーンでスタッフ・店舗・お客様の三方良し
九州にあるレストランで開催したのは、スタッフがシフトにより入りやすくする施策として、インセンティブ強化の販売キャンペーンを開催しました。内容としては、ある特定の品目に絞ったワインリストを作成し、販売したスタッフにはインセンティブとして売価の2割を即日現金払いで還元する施策を行いました。これが結果として大成功。まとめると
- 販売のためにお客様と積極的にコミュニケーションすることでユーザー満足度が上がる
- 販売のためスタッフが商品について勉強することで勤務に対するモチベーションが向上する
- 注文件数および客単価がアップ
- シフトがしっかりと埋まり、人手不足の解消
といった事例です。シフト希望率の改善、注文点数の増加による売上アップ、原価コントロール、顧客満足度の向上。インセンティブの付与をモチベーションにつなげて、結果として様々な面に効いたのが素晴らしいと思いました。
3.短期採用の求人サービスを入り口に、良い人材の長期雇用を実現
1日限定のアルバイト採用サービスを活用し、単発で採用したアルバイトスタッフの中から良い人材を見極めてスカウトし、長期雇用につなげている「吉祥 CHINESE DINING 銀座インズ」様を取り上げたぐるなび通信の記事がこちらです。
人材採用に強い店になる!【短期採用編】~吉祥 CHINESE DINING 銀座インズ~
長期雇用につなげるために良い人材には積極的にアプローチしているそうで、現在勤務しているアルバイトスタッフ10人のうち6人を、短期雇用から長期雇用につなげたそうです。
4.話題のスポットワーカー(タイミー) をマックスまで活用
新橋を中心に「烏森百薬」などの居酒屋を展開する株式会社ミナデインと、働きたい時間と働いてほしい時間をマッチングする“スキマバイト”サービス「タイミー」を提供する株式会社タイミーが飲食業界の深刻な人材課題を解決したい、盛り上げたい”という思いから協業に至った店舗を紹介しているぐるなび通信の記事がこちらです。
【注目の新業態】アルバイトが全員スポットワーカーを成立させ、飲食業界に新しい雇用を創出!「新橋銀座口ガード下 THE 赤提灯」
スポットワーカーにシフトに入ってもらう店舗は上昇傾向と聞いておりますが、完全に振り切ったスタイルで店舗運営する事例を紹介しています。最近話題になった記事でも、スポットワーカーに関するものが上がっていました。
タイミーで、飲食店として凄まじい経験をした話|Sotaro Karasawa
5.外国人労働者とのマッチング「外食特定技能」からの雇用
公に推進されている施策もあります。農林水産省では「外食業分野における外国人材の受け入れについて」というページを持っており、これに関連する「外食特定技能」というものがあります。
外国人が日本で働くためには、在留資格の中でも就労が認められている通称「就労ビザ」が必要で、就労ビザは複数の種類があり、そのうちの一つが「外食特定技能」です。特定技能は日本の深刻な人手不足を補うために創設された制度・在留資格で、特定技能「外食業」分野においては、レストランなどのホール業務から、ラーメン店の調理スタッフなど、外食業とその関連業務が可能です。特定技能「外食業」を申請するためには、外食業特定技能1号技能測定試験と日本語能力試験に合格が必要で、外国人採用をした飲食店は4割弱となっています。
採用している店舗からは・日本人の雇用だけだと人員不足になるため戦力になるのであれば同じ採用に変わりはない、よく働く方が多く、人数を増やしたいとの声があがっています。
ただ、飲食店関係者でも「外食特定技能」について「詳しくは知らない・全く知らない」と半数以上が答えています。この制度についても調べてみてはいかがでしょうか。
外食業分野における外国人材の受入れについて:農林水産省
今日からあなたのお店でできること
以上、駆け足で飲食店の人手不足について見てきました。人材採用とは少し軸がズレますが、QRメニュー、モバイルオーダーやAIチャットボットなどを活用したオペレーション改善で人手不足を乗り切る飲食店様もたくさんおられます。また、担当の営業がオフラインで人材会社を紹介できることもございますので、人手不足解消のためにも、ぜひぐるなびをご活用いただければと思います。
人手不足に関する疑問や不安、具体的な相談事があれば、ぐるなびにお気軽にご相談ください。
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ぐるなびでは、多くの飲食店経営者様との実績を持ち、業界の専門知識を活かしてお手伝いさせていただきます。安心してお問い合わせください。
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