2024/03/18 特別企画

法改正で注目度UP!飲食店が特定技能外国人を受け入れるには?採用までの流れと、採用後の注意点をプロが解説!

人材不足が叫ばれる飲食業界で外国人採用の注目度が年々増しています。中でも特定技能外国人は即戦力を採用できる方法の一つ。法改正で2023年からは在留期間に上限の無い「2号」が飲食業にも適用されたことで注目度もアップしています。ここでは、特定技能外国人の採用や管理に詳しいリフト株式会社の杉村哲人氏に、採用前後の流れやポイントを解説してもらいます。

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日本語&技能試験に合格した人材の採用が可能!今後の人手不足の解決策に!?

特定技能外国人は、飲食店など特定の分野について即戦力となりうる外国人を採用できる方法の一つ。特に、2023年からは法改正によって、在留期間に上限の無い「2号」が飲食業にも適用されることになり、優秀な外国人を長く雇用し続けることが可能になり、ますます注目度もアップしています。ここでは特定技能外国人の採用や管理をサポートする登録支援機関であるリフト株式会社の代表取締役・杉村哲人氏に、採用までの流れや採用後のポイントなどを解説してもらいます。

リフト株式会社 代表取締役 杉村 哲人 氏
2015年、特定技能外国人を含む外国人の人材紹介サービスを行うリフト株式会社を設立。2021年、一般社団法人外国人雇用協議会の理事に就任。東京商工会議所主催セミナーや(公財)栃木県国際交流協会セミナーなど、外国人材関連の講師実績を多数持つ。

【目次】
外国人採用が増えている理由
特定技能外国人とは?メリットは?
採用できる飲食店の条件
特定技能外国人の採用フロー
一人を採用するためのコスト
どんな募集に外国人は集まる?
長く働いてもらうためのポイント

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なぜ外国人採用のニーズが高まっているの?

少子化はもちろん、コロナ禍の影響も

少子化などにより、どの業界でも外国人採用のニーズは高まっています。特にコロナ禍以降はオンライン授業が増えたことで通学日数が減るなど、これまで飲食店のアルバイトスタッフの主力を担ってきた学生のライフスタイルが変化したことも関係しているようです。

こうした背景から、年々外国人採用のニーズは高まっており、2023年の調査(株式会社シンクロ・フード)では、「直近1年で外国人採用をした」という飲食店が全体の約4割を占めています。また、留学生アルバイトの比率も年々高まっており、彼らの在留資格を特定技能外国人に変えてそのまま社員として採用を継続するパターンも増えています。

個店から大企業、高級店まで、さまざまな飲食店が特定技能外国人を採用!

弊社では現在650人ほど特定技能外国人の支援を行っており、1番多いのが食品工場での飲食料品製造業、2番目が建設業で、外食産業は3番目に多く、80人が飲食業に従事しています。

弊社に求人をいただく会社の規模感は小規模の個人店から200店舗を超える上場企業までさまざま。先日はミシュラン三つ星のお店から問い合わせがあり、セントラルキッチンで外国人を採用することになりました。このように、今後は業態を問わず、さまざまな飲食店で特定技能外国人の採用が増えていくと予測しています。

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特定技能外国人とは?採用のメリットは?

技能実習生とは違い、飲食店のあらゆる業務を担うことが可能

※他分野や他企業で特定技能1号として働いていた場合、その期間も通算して5年

特定技能と技能実習は、いくつかある外国人の在留資格のうちの1つで、特定技能は2019年4月から導入された資格です。

技能実習生は日本で得た技術を母国に持ち帰って広めるという国際貢献が目的である一方、特定技能は日本の人手不足解消のために生まれた制度。外食産業を含む、国内で人材を確保するのが特に困難な12の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的としています。

そのため、専門性の高い技術を学びに来ている技能実習生には単純作業をさせることができませんが、スタッフとして長く一緒に働いてもらう特定技能外国人は、あらゆる業務を担当してもらえます。飲食店でいえば、皿洗いや盛り付けなどの単純作業を含めて、ホール、調理、配達、接客、販促や営業企画など、キッチンとホールの業務は全てOKと考えてください。ただし、外国人だけに単純作業を任せたり、彼らだけ特定の業務に関与させない、といった業務配分はNG。ほかの日本人スタッフと同じ業務を行うことが採用の前提になっています。

2023年から、在留期間に上限の無い「2号」が飲食業にも適用!

また、特定技能の資格には「1号」「2号」の2種類があります。

1号と2号の大きな違いは
・在留期間
・家族帯同
・技能水準
の3つ。

1号は在留期間が通算で上限5年ですが、2号は上限が無く、一定の条件を満たせば永住権の申請も可能です。また、1号は基本的に家族帯同が認められていませんが、2号は配偶者や子どもなど要件を満たせば家族の帯同が可能。さらに、技能水準も2号の方が高く、マネージャーや店長など管理職として2年以上の経験を積んだ上で「特定技能2号試験」に合格していることが条件になります。

つまり、2号はプレイングマネージャーの経験を必要とし、より高い専門性が求められる在留資格。1号で経験を積んだ外国人労働者が、一定の要件を目指すことで2号にレベルアップできるようなイメージです。

加えて、これまで2号の対象分野は「建設」「造船・舶用工業」のみでしたが、2023年から外食業なども対象となることが発表されました。今後は飲食店でも、優秀な外国人をより長く雇用し続けられるようになったといえます。

1号や2号の試験は日本国内はもちろん、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、インドネシア、ベトナムなど16カ国でも行われています(2024年現在)。

【国内外での試験の予定はこちら】
一般社団法人外国人食品産業技能評価機構

特定技能外国人を採用できる飲食店には条件がある?

雇用契約は日本人と同等に!個店は登録支援機関に相談を

特定技能外国人を受け入れるためには、上記の4つをクリアしている必要があります。

まず、①給与は日本人と同じでなければなりません。福利厚生、手当、賞与、退職金などもすべて日本人と同等に支払いをする必要があります。

次に、②店が税金の支払いや労働法令違反をしていないかなど、13の基準を満たしている必要があります。

さらに、③出国時の送迎や日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、定期的な面談・行政機関への通報など、必要な支援の内容が10項目定められています。これは実施が義務のため、例えば「日本語学習の機会」については、日本語学習の手段や学習に役立つ教材、日本語ボランティアの情報などを必ず提供しなければいけません。

最後に、④10項目の支援を誰がどのように行うかをまとめた計画書(特定技能外国人支援計画書)も必要です。これを入国管理局に提出する必要があり、この計画に沿って適切な支援を実施するため、支援責任者の配置が義務付けられています。ただし、支援責任者には入管法違反や労基法違反があったら役所に通報する第三者的・外部監査的な意味合いが含まれているため、店長や直属の上司、役員などを配置することはできません。そのほか、「過去2年間に外国人の指導業務を行った経験がある」「支援計画を中立的に行える」など、さまざまな要件を満たしている必要があります。そのため、人事部や総務部などがあり、上記に当てはまらない人材を用意できる会社の場合は問題ありませんが、そうでない場合は基本的に外部に委託するのが一般的です。

③④は自社で行う企業もありますが、個人経営のお店などの場合は登録支援機関に委託するケースが前提。2022年の統計では15%が自社、85%が外部委託という状況で、飲食店では7~8割の企業やお店が外部に委託しています。

特定技能外国人を採用するための流れは?

人材募集はSNSの活用も〇。面接はオンラインが主流に

海外から特定技能外国人を採用する場合、上記のような流れが一般的です。

人材募集(①)は弊社のような登録支援機関や外国人材紹介会社に依頼する方法のほか、SNSを使って自社で募集をする場合も。海外では仕事探しにWebやSNSを利用する比率が高く、現地語でページを作成すると有効です。

面接(②)について、最近は国内外での採用を問わずオンラインが主流(約8割)です。訪問面接になると応募件数自体が下がる傾向にあるため、採用の確率を上げるためのポイントの一つといえます。

支援計画(④)は、採用する外国人の母国語への翻訳を併記する必要があります。これはなかなか大変な作業なので、支援計画のみ行政書士に依頼するお店も少なくありません。また、雇用契約を締結した後は、特定技能の協議会への加入が必要。これまでは雇用(実働)を開始してから4カ月以内に加入すればよかったのですが、2024年6月15日以降は、⑥で入国管理局に提出する書類にも、協議会の入会証明書を提出する義務が発生するため、その前に加入をしておきましょう。

このほか、健康診断(⑤)は、海外から受け入れる場合は現地で受診をしてもらい、診断書は英語で提出してもらう必要があります。

日本に在留するための在留資格認定証明書交付申請(⑥)は、労働者が海外にいる場合、受け入れ機関が代理申請を行います。申請・許可が出た後、在留資格認定証明書を雇用予定の外国人に郵送し、現地の日本大使館にビザを申請してもらいます。

採用にかかる時間はケースバイケース。採用決定から来日までは約半年

これらすべての手続きを終えたら、何月何日にどの空港から入国するか、入国管理局に申請を。入国時に在留を証明するための「在留カード」を受け取り、自分が住む場所の編入手続きをし、カードに住所が表記された時点で初めて働けるようになります。

登録支援機関に委託することで、前述した採用フローにあるすべての項目について支援を受けることも可能ですが、一部を外部に任せるという方法も少なくありません。

最も時間がかかるのが募集から選考・内定までで、自社で行う場合は特に予測がつきにくい過程です。国外から受け入れる場合、採用決定から来日までにかかる時間は最低でも4~5カ月、約半年は見ておくと安心です。

1人を採用するためのコストはどれくらいかかるの?

国内採用なら10~20万円、海外からの採用は20~40万円が相場

外食業で、すべてを外部に委託する場合の初期費用は、国内採用であれば10~20万、海外からの場合は20~40万(送り出し費用含む)が目安となります。

受け入れに必要な書類や申請の手続きは外部に委託することで手間が省けますが、その分コストもかかります。そのため、会社の規模などに合わせて、プロセスごとに委託する業務と、自社で行う業務を分けるのが一般的です。

特に人材紹介は、日本人を雇う時と同様に、費用に合わせて人材会社の利用や、リファラルなども含めてミックスで採用するのが主流。すでにお店で外国人が働いている場合、家族・親戚、友人の紹介が採用につながるケースも多いです。

そのほか、外食業の場合、登録支援機関への費用が毎月1万5,000~2万3,000円、ビザの更新に毎年2~3万円、協議会の年会費といったランニングコストもかかってきます。また、支援にかかる費用について注意しておきたいのは、支援責任者の配置です。前述した通り、個人事業主など小さなお店は外部への委託が必須となるでしょう。

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どんな募集をかけると外国人が集まりやすい?

店の画像や動画の掲載は効果的。寮の有無もポイントに

求人票には画像や動画の活用を。自店の空間や一緒に働くことになるスタッフ、近隣の情報などを写真や動画で紹介すると効果的です。渡航費やビザの申請費用の負担、家賃手当など、金銭的な支援も有効です。

また、海外から人材を受け入れる場合は特に寮の有無も大きく影響します。不動産情報を提供するだけでも受け入れ条件は満たされますが、外国人にとって家を借りるのは大きなハードル。家賃は給与から天引きするなど本人負担でもかまいませんが、寮がなくても、シェアハウスを斡旋(あっせん)する、会社が保証人となり敷金・礼金などの初期費用を負担するといった住まいの支援を条件に組み込むと求人において有利に働く可能性が高いです。

長く働いてもらうためのポイントは?

事前の丁寧な説明でトラブルを回避。現場との意思のすり合わせは必須!

当然ですが、ビザの申請・更新など、日本人の採用では必要ない手続きがあるため、ビザが切れないかどうか常に注意が必要です。

また、外部委託・自社採用を問わず起こりやすいのが「聞いていた話と違う!」というトラブル。例えば、寮の立地は事前に説明していても土地勘がなく実際に勤めてみたら勤務先から思っていたより遠かった、休憩時間も仕込みや掃除でしっかりと休めないなど。「このくらいは大丈夫かな」と思いがちな細かい部分まで丁寧な説明を心がけましょう。

そして最も重要なのが、外国人労働者と直接働く現場スタッフとの意思のすり合わせです。なぜ外国人労働者を採用するのか、対応のために心がけることなど、ポジティブな未来も含めてしっかりと説明し、現場の理解を得る。ここを怠らないことで、店長と合わなくて辞めるといった離職の防止にもつながります。

さらに、定着率を高めるためには、日本人と同じように福利厚生を含めた働きやすい環境や給与体系、モチベーションにつながる評価制度のほか、文化の違いを認め合うなど現場のスタッフと良好なコミュニケーションが取れるように会社全体でサポートしていくことも重要です。

自社で活躍する“先輩”を育てることが未来につながる

外国人労働者の採用で成功している会社に共通するのが、リファラル採用がうまくいっていること。短期的な助っ人としてではなく、中長期的な視点で外国人を採用し、トップランナーを育てていくことで、採用から育成までどんどん自社でまわせるようになっています。

外国人はいまだに「安い労働力」と考えられがちですが、そんなことはまったくなく、実際に日本人を採用するより大変な部分もあります。しかし、少子化の進む日本では外国人の力を借りずにやっていくのは難しくなっていくかもしれません。さらに、中国など近隣諸国でも少子化が進むなか、日本経済や中東・近隣のアジア諸国との競争力を考えても、外国人の雇用は今年より来年、来年より再来年と、どんどん厳しくなっていくことが予想されます。

そんな時、会社にとって大きな「宝」となるのが、自社で活躍する“先輩”の存在。外国人労働者にとって、その職場にロールモデルがいることは大きな安心感につながり、魅力やモチベーションを感じるポイントになるはずです。

特定技能2号は永住権を取得できる可能性も高く、まさに自社の中核になりうる人材を育てるための制度。2023年から外食業にも適用が拡大したことは、自社でノウハウを蓄積し、戦力になる人材を育てていくチャンスといえます。今から3年、5年、10年先を見据え、外国人の長期採用に力を入れることは、きっと今後の経営に大きなメリットをもたらすはずです。

取材協力:リフト株式会社
https://lift-group.jp/
特定技能をはじめとした現場で活躍する外国人材を中心に、人材紹介から在留資格申請、定着支援、企業様が外国人雇用を自社で行うためのコンサルティングサービスまで、幅広くサービス展開を行う。

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