※スマイラー110号(2025年4月)より転載
アルバイトから正社員へ。差別のない魅力的な職場
チャンさんが来日したのは2014年のこと。日本が好きなお父様に勧められたことがきっかけだった。自身も興味があったので日本で日本語を学ぶことを決断した。日本語学校で1年半勉強した後、日本の大学に進学した。その間にチャンさんも日本が大好きになったという。そして日本で仕事をしたいと思うようになった。
「大学生の4年間、ずっとガストでアルバイトをしていたんです。大企業ですし、福利厚生や労働環境もいいので、卒業後もここで働きたいと思うようになりました。そんなときに当時のマネージャーに、正社員になりませんかと誘われたんです。その頃はキッチンを担当していたのですが、その後、社員になるんだったらと、フロアやマネジメントの仕事もいろいろ教えてくれました。いい会社だな、いい先輩だなと、改めて思った出来事でした」と振り返る。
当時から、外国人だからと差別されるようなことはなかったとチャンさんは言
う。「みんな優しかったです。仕事はとてもしやすかったです。アルバイトを始めたとき、外国人は私一人だけだったんですが、ここで日本人の友達ができて、ベトナムから一人で来ていた私には、とてもうれしかったことを覚えています。その後、私の外国人の友達をお店に紹介して、一緒に働くようになり、だんだん外国人も増えました」。
外国人スタッフを雇うことのメリットの一つとしてよく言われるのが、“友人紹介の輪が広がる”こと。いい職場だと認識すると、家族や親戚を紹介することもある。求人が難しい時代に店としてはとても助かっているとよく聞く。
「お店のマネージャーさんなどから、外国人の採用は、本当に良かったと言われます。みんな一生懸命だし、素直だと言ってくれることが多い。これはトレーニングをしている私もうれしいです」と話す。
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外国人が外国人に教える強み
チャンさんの仕事はインストラクター。クルーにオペレーションの基本を教える。インストラクターチームには8人のスタッフがいて、そのうちの3人が外国人だそうだ。外国人クルーの教育は、この3人が主に担当する。
「私たちは、いろんな店をまわって新人の教育をすることが多いです。最初の数回を私たちが担当して、その後は各店舗に任せるのですが、ときどき確認に行って、そこで気が付いたことは指導して修正します。日本に来たばかりの人も多いですから、よく使う簡単な日本語を教えるところからはじめます。仕事だけではなく、日本の習慣を教えることも必要です。どの国の出身であっても異文化の壁は必ずありますから、自分の国の習慣が日本では通じないということは、たくさんあります。プライベートなことを相談されることも多いです。よく聞かれるのは、日本語学校を卒業した後の進路です。専門学校と大学、どちらに行った方がいいかと相談されて、その違いを説明したり、私のわかる範囲で教えます。就職と進学で悩む人もいますね。自分の人生なので自分で選ぶしかないのですが、私の経験を伝えて考える材料にしてもらいます」。
チャンさんがトレーニングを担当したミャンマー人のカインさんに、チャンさんの印象を聞いてみた。「とても優しい先生です。なんでもすごい。動きがテキパキしているし、早い。笑顔も素敵で、かわいい! 教え方もわかりやすいです」と笑顔。
カインさんは、ミャンマーで特定技能1号の資格を取り、ミャンマーで面接、今年の1月に来日した。ガスト大久保店でクルーとして働いている。「お店の先輩も優しい。一緒に働くのは楽しいです。ミャンマー人の先輩もいるので心強いです」とカインさん。
「お客様と話をするのも楽しいです。おいしいと言ってもらえるとうれしい。ありがとうございます、ごちそうさまなどと感謝の言葉をかけてくれるお客様も多くて、それがやりがいにつながっています」と充実ぶりがうかがえる。
取材前、少し時間があって、カインさんの働く様子を見ることができたのだが、お客様がグラスを落として割れてしまうというハプニングに、真っ先に対応している姿が印象的だった。お客様に「大丈夫ですか?」と声をかけながら、掃除を率先して行っていた。すかさず指導に来ていたチャンさんが褒める。二人とも笑顔だ。この明るいコミュニケーションこそが外国人が働きやすい環境を作っているのだと感じた。
そのことをチャンさんに聞いてみた。「最初は特に、楽しい雰囲気を作るようにしています。仕事を楽しいと思ってもらうことが大切ですから。インストラクターが率先してコミュニケーションをとって、孤独にさせないことを心がけています。私もそうでしたが、家族と離れて一人で日本に来ている人が多いので、みんな寂しいし不安なんです。職場や仕事が楽しいと思ってもらえれば、外国人は長く働いてくれます。友達も紹介してくれます。コミュニケーションはとても大切です」。
すかいらーくは、会社の方針としても、店舗ミーティングなどのコミュニケーションを大切にしているそうだ。みんなで話すだけでなく、1対1の面談もする。目標を共有し、課題の設定や評価を伝え、期待していることも話す。外国人も日本人も同じ。成長していく環境に差はない。
“秘密兵器”は多言語対応の動画マニュアル
すかいらーくグループには、スリランカ、ミャンマー、ネパール、ベトナム、ロシア、中国、インドなど30カ国以上の国の人が働いているという。それぞれ文化が違うし、言葉も違う。だからチャンさんをはじめ、インストラクターが教えるときには日本語でコミュニケーションする。
「みんな日本語を勉強したいから、日本語を積極的に使いたいんです。だから日本語でのコミュニケーションを嫌がる人はいません。お客様と話したいから、フロアを担当したいと希望する人も、とても多いです。わからないときには簡単な日本語で言い直します。そして私が見本を見せる。それで大体、大丈夫です。細かいところは、TeachmeBiz(テ ィーチミー・ビズ)という秘密兵器がありますので、それで勉強してもらいます」。
ティーチミー・ビズとは、マニュアル作成・共有システムのことだ。すかいらーくでは、このプラットフォームを使って、多言語対応の動画で料理の作り方などを学習できるようにした。スマートフォンなどで視聴することができるので、自宅や電車の中などで隙間時間に勉強することもできる。
カインさんは「ティーチミー・ビズのおかげで、いろいろなことが早く覚えられたと思います。ミャンマー語で見られるので、便利です。とても役に立ちました」と語る。
「私の場合は、同じ職場にミャンマー人の先輩がいたことも大きかったです。わからない日本語があっても、その先輩が教えてくれます。安心ですし、心強いです」。
チャンさんは、外国人を雇用する場合は、できれば2人以上を雇う方がいいと言う。友達がいたら楽しく働けるし、お互いに助け合うこともできる。外国人雇用を考えている飲食店経営者は、心に留めておくべきアドバイスかもしれない。最後に、二人に将来の夢を聞いてみた。
「私は、栄養士になりたいんです。日本で栄養士として働きたい。私が作った、おいしくて健康になる料理で、みんなが幸せになって欲しいです」と語るのはカインさん。
そしてチャンさんからは「今の仕事も、やりがいがありますし、楽しいのですが、マネージャーをやってみたいです。アルバイトから社員になって、私は考え方も働き方も変わりました。アルバイトの時は学費を稼ぐために働いていましたので、自分のことしか考えていませんでした。社員になって、周りのことや人のことを考えるようになりましたし、お金のためでなく、自分の成長のために仕事をしているという意識を持つようにもなりました。その成長した自分を試してみたい。店舗運営の責任を持つ立場で仕事をしてみたいという思いが、今はあります」という頼もしい答え。
すかいらーくには、実際に外国人のマネージャーは複数人存在しているそうだ。祖国を離れ、日本で仕事する外国人は、総じてチャレンジ精神が旺盛だ。目標をしっかりもって、自分の力で立ち向かっている。日本の飲食業界で活躍する外国人は、ますます増えていきそうだ。
住所:東京都武蔵野市西久保1-25-8
https://www.skylark.co.jp/gusto/
ガスト大久保店
住所:東京都新宿区百人町1-17-8 B1
https://store-info.skylark.co.jp/gusto/map/018876/
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