2024/08/02 コラボ企画

チップ制導入で成功した「ヤキニクマフィア」(池袋)の接客レベル向上ノウハウ

従業員を「ステージパフォーマー」と呼び、チップ制を導入した「ヤキニクマフィア池袋(YAKINIKUMAFIA IKEBUKURO)」。エンターテインメント性たっぷりの接客スタイルに行きつくまでのストーリーを、店長の堺本 卓哉 氏に聞いた。

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※スマイラー101号(2024年6月)より転載

日本初のチップモデルと超ポジティブ集団が実現する「人生で一番楽しい」時間

「ヤキニクマフィア池袋(YAKINIKUMAFIA IKEBUKURO)」では、従業員を「ステージパフォーマー」と呼ぶ。お店はステージであり、そこで働くスタッフは、お客様を楽しませるパフォーマーと言うわけだ。世界的にも評価の高いブランド牛「宮崎・尾崎牛」をジンギスカン風の鍋で食べる焼肉の味とともに、そのエンターテインメント性たっぷりの接客スタイルが評判を呼び、お客様が日本中、いや世界中から集まってくるという。しかし、最初から順調だったわけではない。店長の堺本 卓哉 氏に話を聞いた。

生産者の名前を冠した異色のブランド牛「尾崎牛」(写真左上)をジンギスカン風の特注鍋で焼くスタイル(同右)が好評。コースの締めはラーメン(同左下)

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Interview YAKINIKUMAFIA IKEBUKURO 店長 堺本 卓哉 氏

2,500万円の売上が500万円へ激減

「最初はとても順調でした。しかしそれは、オーナーの鴨頭嘉人のおかげ。人気ユーチューブ講演家である鴨頭には、たくさんのファンがついていて、彼らが鴨頭に会いたくて来店してくれました。僕たちの力ではありませんでした。その証拠に鴨頭が店に出なくなったら、ひと月に2,500万円あった売上が500万円まで落ちた。損益分岐点にも届かない金額です。これをなんとかしなければと、スタッフみんなで考えて出した答えが、それぞれのパフォーマンスの向上とイベント開催、そしてインバウンド対策でした」と語るのは、店長の堺本卓哉氏。

ファンに頼まれて著書にサインを書きながら、談笑する鴨頭嘉人氏(写真右)

実は、そこには鴨頭嘉人オーナーの危機感があった。たくさんのお客様が、自分に会いに来てくれるのはうれしいが、これではスタッフが成長しない。このままではダメだと考えた鴨頭氏は、自身は店に立たないことを決めた。自分ではなく、スタッフが主役になる店にしたかった。

鴨頭氏は「最初は何をどうすればいいのかわからず、お客様と向き合うこともできていなかったスタッフたちも、いまは精一杯お客様を楽しませようと気配りしながら接客してくれています。いまでは、それぞれのスタッフに会いたくて来てくれるお客様がたくさんいます。英語のできるステージパフォーマーのBONICAなんて、来日外国人たちがSNSで接客が素晴らしい、笑顔がいい、なんていろいろ書くものだから、有名になっちゃって、初来店なのに『今日はBONICAはいるの?』なんて言って席につく外国人もいる。みんな成長したなと思いますよ」と語る。

尾崎牛の提供パフォーマンスをする、堺本店長(写真左)とBONICA氏(同右)

チップ文化を日本に定着させるためのモデル店舗

「YAKINIKUMAFIA」は、実は日本では珍しいチップ制度を採用している。鴨頭氏の、日本にチップ文化を定着させたいという想いを実現させるためのモデル店舗でもあるのだ。

「鴨頭は、昔からサービス業は人を幸せにする天使のような仕事なのに、社会的評価も収入も低すぎるのを改善したいと言っていました。チップ文化を日本に持ち込むことで、飲食業を含むサービス業全体に対する考え方を革新する一助になるのではないかと考え、以前からそのための行動を起こしていました。私もその考えに共感していましたので、こういう店をやるから来てくれないかと言われたときには、2つ返事でOKしました。でも、当時和食の店を2店舗経営していたので、それをやめることになるわけで、妻に納得してもらうのには少し苦労しましたが(笑)」。

おもてなし文化が浸透している日本は、海外と比べても接客レベルが高いとよく言われる。鴨頭氏も以前はそう思っていたそうなのだが、アメリカの一流店で日本とは違うが、とても感動的な接客を体験する。

その時のことを鴨頭氏に聞くと、こんな話をしてくれた。

「『今日は、私がこのテーブルの担当です。なんでも言ってください。さあ、いまから最高の時間を共有しましょう。最高の食事を楽しんでください』と言った感じで、アミューズメントパークの案内のような、お客様を引き込むパフォーマンスからはじまって、私たちをとことん楽しませ、満足させてくれました。案内してくれた人に、すごい接客だね、と言ったら、そりゃチップがあるからだよと言う返事。聞けば、チップのおかげで日本とは比べ物にならないような収入があるのだとか。このとき、チップ文化を日本にも浸透させることで、サービス業従事者の地位を向上させ、収入を増やすことができるのではないかと考えたのです」。

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ステージパフォーマーたちの接客の神髄とは

「YAKINIKUMAFIA」のお客様は、チップシートに誰にいくら渡したいかを記入し、会計時に飲食代と合わせて支払う。強制ではないので、チップを払わないと言う選択もできる。しかし、ほとんどのお客様が、チップを支払っていく。お店全体でのチップ代は、1年間に1,800万円にもなると言うから驚きだ。チップは源泉徴収などの経費を引いてほぼ全額がステージパフォーマーに支払われる。社員の平均年収は678万円。トップパフォーマーは約1,000万円を稼ぐそうだから、これはもう一流企業の給料にも劣らない。

チップシステムは当然、従業員のモチベーションを高める。向上心を持って前向きに仕事に臨むようになる。だから、接客の質もどんどん向上していく。

赤いマントのあのヒーローの恰好で、〆のラーメンスープをお客様に届ける「スープマン」パフォーマンスをしたり、パーソナルジムの元トレーナーが、マッスルパフォーマンスでハイボールを提供したり、ステージパフォーマーたちの個性を生かしたユニークなパフォーマンスは、その場を盛り上げるだけでなく、SNSなどでも評判を呼び、集客の大きな武器にもなっている。

しかし、ステージパフォーマーたちの接客の神髄は、実はそこではない。もっと地味で基本的なころにこそある。

たとえばトイレ掃除。お客様が一回トイレを使用したら、すぐに清掃に入る。だから「YAKINIKUMAFIA」では、少しでも汚れたトイレに入るお客様はいない。お客様の行動に気を配っていなければ、これを実行するのは難しいと思うが、ほぼ100パーセント行われているという。

さらに感心したのが、万が一実現できなかった場合は、その理由を日報で報告し、翌日以降のサービス改善に役立てていくということ。この日報には、その日の失敗や成功が事細かに書かれ、それをスタッフ全員で共有する仕組みになっている。これこそが、「YAKINIKUMAFIA」の接客レベルが日々進化していく最大の秘密なのではないだろうか。

だから、お客様に話しかけるタイミングなどが、どのスタッフも絶妙だ。お肉などの食材の説明やお酒の説明などは、聞きたい時に話してくれるし、焼き方を教えてくれるタイミングや、ほっといてもらえるタイミングにもストレスがない。

接客の失敗と成功体験を共有しているから、全員の接客が洗練されていくのだろう。そして、その洗練がチップと言う報酬につながるのだから、すべてがプラスの相乗効果につながっていく。

実は「YAKINIKUMAFIA」は、チェーン店。池袋以外にも数店あるのだが、売上は池袋店が突出している。商品は同じなのだから、その差はつまり接客の質。接客が集客につながり、売上を押し上げている。

「池袋のステージパフォーマーは、超ポジティブ集団なんです」と堺本氏は語る。

「全員がいつも前向きで明るい。少しでも成長をしたいと努力を惜しまない。ここは、自分で考えて、工夫していくことが求められるので、ある意味厳しい環境だと思うのですが、それを楽しんでいるような人が多いんです。日々頑張ることを大変だと思うのでなく、楽しいと思っているからこそ、お客様も楽しんでくれるのだと思います。感動してくれるのだと思います」。

池袋店に来たお客様は、「人生で一番楽しかった」と言って帰っていくお客様が多い。それは、大人だけではない。5歳の子供が「帰り際に絶対にまたこの店に来ようね」と、両親にねだるようなこともあったそうだ。外国や地方から来るお客様も多いのだが、それは東京観光のついでではなく、この店に来ることを目的にしているケースも目立つ。

以前、中学校の修学旅行で、先生が子供たちに一生の思い出を作ってあげたいと、全生徒を連れて来店したことがあった。池袋店はオープン前の朝礼も有名なのだが、そこから見学して、飲食業、接客業の楽しさと奥深さを、子供たちは体験して帰って行った。

飲食業の社会的地位を上げるという鴨頭氏の願いは、この店で着々と実現できていると言っていいのではないだろうか。現在インターンを希望する人が殺到しているそうだ。池袋店のビジネスモデルを軸に、日本にチップ文化が広がっていく日もそう遠くはないのではないだろうか。

取材協力:「YAKINIKUMAFIA IKABUKURO」
東京都豊島区南池袋1-26-6 SH-ONEビル7階
https://www.instagram.com/yakinikumafiaikebukuro/

■飲食業界誌「スマイラー」

“飲食店の笑顔を届ける”をコンセプトに、人物取材を通して飲食店運営の魅力を発信。全国の繁盛店の紹介から、最新の販促情報、旬な食材情報まで、様々な情報を届けている。毎月15,000部発行。飲食店の開業支援を行う「テンポスバスターズ」にて配布中!

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