2014/05/20 特集

“飲みたくなる”季節が到来!個性のあるドリンクで夏に打ち勝つ!

個性的なドリンクを提案することが夏の集客アップにつながる可能性は大。今回はオリジナルドリンクを積極的に開発し、ドリンクが集客のフックになっている店を紹介。“ドリンクで勝つ”方法を考察したい。

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「若者のアルコール離れ」が言われて久しいが、夏はやっぱり“飲みたくなる”季節!個性的なドリンクを提案することが夏の集客アップにつながる可能性は大だ。そこで、今回はオリジナルドリンクを積極的に開発し、料理だけでなくドリンクが集客のフックになっている店を紹介。“ドリンクで勝つ”方法を考察したい。

珍しいビールとワイン、体に優しいカクテルなど、ドリンクでも楽しめる店

【東京・六本木】イタリアン&ワイン SUNBUCA

今夏に向けて開発した(左から)「マンゴーのモヒート」「バナナのピニャコラーダ」「スイカのカイピロスカ」「ブルーベリーとヨーグルトのカクテル」。“体に優しいカクテル”をテーマにしている

幅広く個性的なドリンクのラインナップ

仕事帰りの人々が気軽に立ち寄り、その日の疲れを癒すことができるトラットリア&バールが、東京・六本木の「イタリアン&ワイン SUNBUCA(サンブーカ)」のコンセプトだ。原点は、20年近く前にイタリア・ローマの街中で見たバール。オーナーの上田憲征氏は、「上着を脱いで肩の力を抜き、ゆっくりとくつろぐことができる空間を、東京で作りたいと思ったのです」と、18年前のオープン当時を振り返る。

営業は17時半から翌朝5時までのため、前半は食事中心のレストラン機能、深夜以降は酒を楽しむバー機能が主となる。しかし、どの時間帯でもメニューは同じで、フードもドリンクも客のニーズに合わせて提供している。料理の看板メニューは北海道産のウニをふんだんに使った「生ウニのスパゲティ」。そのほか、ニュージーランド産の仔羊、スペイン産マンガリッツァ豚などを使った逸品が並ぶ。魚介料理はその日の仕入れに合わせた「おすすめ料理」を黒板で告知。「どの時間帯でも、まずはおいしい料理で満足していただくことが基本。そのうえでドリンクも充実させ、より喜んでもらいたい」と上田氏は語る。

その言葉どおり、ドリンクのラインナップは幅広く個性的だ。ワインはイタリア産を中心に常時200本をストック。メニューには載っていない銘柄も多数あり、客の好みと予算、料理に応じて提案することも。ビールではイタリア産はもちろん、各国の珍しい銘柄を20種類ほど常備。フルーティなものからコクの深いものまで、様々な味わいを提供する。ドリンクを担当しているバーテンダーの橋本秀之氏は「ビールも銘柄によってまったく違った味わいが楽しめます。“とりあえずビール”となりがちですが、そのときの気分や食事に合わせてビールも選んでもらえたらうれしいですね」と語る。

フルーツのヘルシーさに着目した夏の新カクテル

さらに、この夏は、新たに数種類のカクテルを開発して、積極的にドリンクをアピールする。テーマは「体に優しいフルーツカクテル」。「フルーツのヘルシーさに注目したのが、この夏の特徴。フレッシュフルーツをふんだんに使います。お客様が元気で健康であってこそ、店に来ていただけるのですから」と上田氏は開発の意図を語る。

試作は何度も繰り返し、「マンゴーのモヒート」「スイカのカイピロスカ(ウォッカとライムのカクテル)」「バナナのピニャコラーダ(ラムをベースにしたトロピカル・カクテル)」「ブルーベリーとヨーグルトのカクテル」を完成させた。「いずれもフルーツが持つ高い栄養価やヘルシーさを意識しました。季節感も大事にし、飲み口は夏を意識してさっぱりめに仕上げてあります。フルーツカクテルは女性客に好評ですが、楽しんでいる姿を見て、男性のお客様からも注文が入ります」と橋本氏。ほかにも、メロンを使ったカクテルなどにも挑戦し、夏のドリンクニーズに応える予定だ。

また、スパークリングワインに凍らせたフルーツを入れた「フルーツスパークリング」も用意。凍ったフルーツを徐々に溶かしながら楽しむもので、見た目も涼しげ。夏にはパイナップルや桃などを使って提供する方針だ。「これからも様々なドリンクを提供し、お客様が持つドリンクのイメージを変えるような提案をしていきたい」と意欲を語る橋本氏。上田氏も「ドリンクも料理と同じように大切に提供したい」と語り、店全体で一層のレベルアップを展望している。

ビールは、イタリアやベルギーをはじめ各国の珍しい銘柄をそろえ、カウンター上の大きな容器で冷やしながらアピール。料理との相性を考えながらていねいに選定し、来店客からも好評だ
メニューブックでは黒ビール「ガージェリースタウト」(左)など、あまりなじみのない銘柄を詳しく解説。ビールの幅広い楽しみ方を伝えることも店の役割と考えている
その日のおすすめのカクテルを黒板で告知し、カクテルをあまり飲んだことがない人にもアピール。注文を迷っているときにはスタッフが黒板を持って案内する
前菜、メインディッシュ、パスタ、ピザまで本格的なイタリア料理を提供する(写真はイメージ)
バーテンダー 橋本 秀之 氏(写真左)、オーナー 上田 憲征 氏(写真右)
オーナーの上田憲征氏は、脱サラし、共同経営で店を立ち上げた。食事はもちろん、ドリンクでも喜ばれる店を目指し、橋本秀之氏らバーテンダー2人を招聘。ともに店を盛り立てる。
イタリアン&ワイン SUNBUCA【サンブーカ】
東京都港区六本木3-13-10 KODAビル2F
https://r.gnavi.co.jp/hfmc72yk0000/
1995年、まだバール業態が普及していない時期に、カジュアルで活気のあるイタリアのバールをイメージしてオープン。6~7割が20~30代の女性客で、仕事帰りに食事とドリンクでクールダウンしていく、癒しの空間だ。

自家製フルーツ酢のドリンクで、幅広い年齢層の女性客を獲得!

【大阪・京橋】garden dining fuca

自家製フルーツ酢のドリンク。左から「マンゴーサワー」「キウイジンジャーエール」「ミカンサワー」「パインソーダ」。女性客に好評で、今ではドリンクの注文の半分がフルーツ酢を使ったドリンクだ

女性向けドリンク開発で、集客のフックに

活気のある繁華街・京橋への進出。隣駅の住宅街で和食店を経営するオーナーが、昨年夏にオープンしたのが「garden dining fuca」だ。コンセプトに据えたのが、“女性が気軽に集まれる居酒屋”。そのため、ラウンジにソファ席を備えたおしゃれな空間や、和食を洋風に盛り付ける料理など、カジュアルに楽しめる店づくりを進めてきた。それとともに、オーガニック野菜を使った健康指向のメニューを多数そろえた。

なかでもオープン半年前から開発に取り組んだのが、オリジナルドリンクだ。店の主任を務める滝内貴裕氏は、「ドリンクでもヘルシーで女性向きの商品を打ち出そうと、試行錯誤の末にたどり着いたのが、自家製のフルーツ酢を使ったサワーとノンアルコールドリンクでした」と振り返る。

現在、グランドメニューに載せて通年で提供しているフルーツ酢は、キウイ、マンゴー、パイン、リンゴの4種。「このほかにも、様々な果物と酢を組み合わせて、氷砂糖の量、はちみつの有無など、いろいろと試しました」と滝内氏。その結果、味はもちろん、見た目、仕入れの安定性、原価率などを勘案してこの4種に絞り込んだ。穀物酢やリンゴ酢に、それぞれのフルーツを1週間程度漬け込み、果物の香りとエキスを酢となじませる。焼酎で割ってサワーにするほか、ジンジャーエールやソーダ、オレンジジュースなど、客の好みのソフトドリンクで割って、ノンアルコールとしても提供する。いずれも果実の甘みや酸味、酢によるすっきりとした独特の口あたりが魅力で、風味豊かなオリジナル商品に仕上がった。スタッフが積極的にすすめ、ドリンクの注文で迷う人には、自家製の自信作であることをアピールしてオーダーにつなげている。

「常連さんのなかには、乾杯からフルーツ酢のドリンクを飲まれる方が多いですね。グループでも、アルコールが苦手な方はノンアルコールドリンク、アルコールが飲める方はサワーで注文できることで、同じドリンクを楽しんでいるような雰囲気を味わってもらえます」と滝内氏。甘みを抑えているため、食中酒としても飲みやすい。なかでも、若い層にはマンゴー、年配の層にはキウイが人気など、幅広い年齢層に受け入れられている。今では、ドリンクの売上の約半分をフルーツ酢のドリンクが占めるほど。確実に集客のフックの1つになっている手応えがある。

さらに、ベースの4種のほかに季節のフルーツ酢も提供する。秋にはブドウ、冬にはイチゴやミカン、春にはフルーツトマトやグレープフルーツで開発。今夏に向けてはメロンやスイカを使い、飽きさせない工夫をする予定だ。そのほか、ニュージーランド産をはじめワインのラインナップも充実させ、女性好みのドリンクでさらなる集客アップを目指す。

カウンターに並べられた自家製フルーツ酢。見た目にもインパクトがあるため、オーダーにつながることも多い
フルーツ酢ドリンクのメニュー。ヘルシーさを紹介してオーダー数アップを狙う
メニューシートでは、季節のフルーツ酢であるミカンとトマトのフルーツ酢をアピール
主任 滝内 貴裕 氏
系列店で勤め、一時退いたが4年ほど前に復帰。京橋店のオープンとともに現職。「頑張り次第でたくさんのお客様が来て、売上が伸びるのが楽しい」と語り、店の一層の発展に力を尽くす。
garden dining fuca
大阪府大阪市都島区東野田町2-3-26
サトウビルB1
http://r.gnavi.co.jp/c673001/
大阪市の繁華街の1つである京橋駅前に、2013年7月オープン。女性に喜ばれる店を目指して、オーガニック野菜やフルーツを取り入れた健康的な料理とドリンクを提供。幅広い年齢の女性客を獲得している。

産地・品種・質にこだわり、果物のおいしさを追求。究極のカクテルで差別化

【大阪・京橋】老松町 RABbit

2種類のラム酒とミントをふんだんに使ったモヒート。苦みを出さないように、ミントをつぶしすぎないところがポイント。右側はチェリーモヒート。フルーティな風味が漂う

フルーツを柱にした店づくりで好調!

大阪・西天満の路地にある隠れ家的な店「RABbit」では、オーナー宮内 健氏が作るフルーツカクテルが評判だ。そんな宮内氏が、フルーツを究めるきっかけとなったのは、10余年前、バーテンダーとして勤めていた店で、客が口にした一言だった。「あるお客様が『以前ほかの店で飲んだイチゴのカクテルがおいしくなかった』と、つぶやかれたのです。それから、カクテルにどんな問題があるのかを考え、試行錯誤を繰り返しました」と宮内氏。以来、様々なイチゴを使って試作を続け、産地や品種・品質によってカクテルの味や風味が違ってくることに気づいたという。その後、ますますフルーツへの興味を強めた宮内氏は、生産者とも交流。“フルーツへのこだわり”が自身の柱となっていった。

「そのころ、料理をするように素材を見極めて絶妙な配合でドリンクを作ることを“ミクソロジー”と呼ぶことを知りました。イギリスなどでは、“ドリンクのシェフ”として〝ミクソロジスト〟の活躍が知られており、私が追求しているのは、まさにそれだと思いました」(宮内氏)。以来、日本では数少ないミクソロジストの1人として、フルーツへの探求に一層の磨きをかけてきた。

宮内氏が作るフルーツカクテルは、果実本来の味や風味を、最大限に引き出すのが特長だ。そのため、リキュールは使わず、そのほかに加えるものも最小限。“ミクソロジー”の手法ではハーブやショウガなどをミックスする例もあるが、あくまで果実を活かすことにこだわる宮内氏。「だからこそ、本当においしいフルーツが必要です。カクテル作りのため、フルーツの生産地を訪ね、生育状況をチェックしたりもします」と語る。

来店客には、どんなフルーツを使い、それがどこでどのように育てられたのかを伝え、興味と関心を刺激。高品質のフルーツカクテルを提供することで、他店との差別化に成功し、多くのリピーターをつかんでいる。

この夏に向けては、国産では珍しいドラゴンフルーツや、パッションフルーツなどを入荷予定。どれも外国産のものとはひと味違うという。こうした入荷状況や果実の成熟度合いなどは、フェイスブックで発信。情報を共有することで、フルーツが店と客の結びつきのひとつとなり、集客にも大きく貢献している。また、店内に香り高い旬の果実を飾ったり、カクテルを目の前で作ってライブ感を演出するなど、フルーツとカクテルを徹底的に印象付けることで、初来店の客をファンにさせるのだ。

今では、フルーツだけでなく、野菜やほかの食材でも産地や品種、栽培方法などに気を配り、より安全でヘルシーな料理を追求。フルーツとドリンクへのこだわりが、「RABbit」を唯一無二の店にさせている。

熊本産河内晩柑(かわちばんかん)のカクテル。河内晩柑はその外観から和製グレープフルーツとも称される柑橘類。さわやかな酸味と甘みが印象的
沖縄産スターフルーツのカクテル。星形をしたフルーツのスライスを添え、鮮やかな色合いや味わいも、まさにトロピカル
カクテルは1階のカウンター内で客の目の前で作る。そのライブ感も魅力のひとつで、モヒートではミントの使用量に感嘆の声が上がるほど
エントランスの横には食材の展示棚があり、色鮮やかなフルーツが出迎えてくれる。香り豊かな旬のフルーツに期待値も倍増
株式会社U.H.P.R 代表取締役 宮内 健 氏
バーテンダーとして修業し、2007年に独立。フルーツを極め、ドリンクのシェフとも称される「ミクソロジスト」として活躍。
老松町 RABbit【ラビット】
大阪府大阪市北区西天満4-12-17
http://r.gnavi.co.jp/kbjf800/
大阪・堀江に2007年にオープンし、2年前、個性的な飲食店が多い現在のエリアに移転。狭い路地にある隠れ家的な佇まいと、産直の食材を使った料理、オリジナルのドリンクで、ビジネス層や女性のファンが多い。