迅速でていねいな処理技術。肉の旨みを最大限引き出す
世界自然遺産に認定された北海道・知床半島の西側、オホーツク海に面する町・斜里町に、有限会社知床ジャニーはある。1997年の創業以来、農水産物を全国へ届けており、北海道ならではのジビエ(天然の野生鳥獣の食肉)、なかでもえぞしか肉が注目されている。2005年には自社の食肉処理施設を建設。代表の羽田野達也氏も自ら狩猟を行うほか、15人のハンターからえぞしかなどを買い取っている。
「肉の味はその処理技術で決まる」と話すのは、執行役員の大須賀文洋氏。血抜きの方法や解体技術、スピードなどで、味は大きく変わるのだという。えぞしかの肉は鉄分が豊富なため、時間を置くと黒く変色することも、加工スピードを要求される一因だ。知床ジャニーで販売するえぞしか肉は、ドングリなどを食べて脂がのった11~12月に獲ったもので、部位はロースがメイン。3歳以上の雄は獣臭さが強くなり、肉が硬くなるため、出荷する肉は雌か3歳以下の雄と決めている。狩猟後は素早く内臓処理を施し、精肉にして真空パック後、冷凍保存することで、1年中出荷が可能となっている。
全国から届く顧客の声の中には、「アレルギー体質の子供でも、えぞしか肉は食べられた」というメッセージも。「飼料を食べている畜肉と違い、低アレルゲンの野生肉ならでは。うれしいですね」と大須賀氏。えぞしか肉は、低脂肪、高タンパクで鉄分豊富。鹿肉などのジビエは、かつてヨーロッパでは貴族のみが食べられた高級食材だ。
そんなえぞしか肉をメニューとして取り入れたのが、札幌に店舗を構える「Grill Dining f」だ。代表の大久保景右氏は、「飲食店は生産者の『想い』を最後に伝える大事な役割を担っています。可能な限り生産者の声を聞き、メニューに取り入れ、“想いのバトン”をお客様に渡せるように心がけています」と話す。「えぞしか肉は臭いというイメージが強く、食べたことがなかった」(大久保氏)が、ぐるなびの「北海道知床食材フェア」(2015年10月19日~12月18日実施)を行うにあたり、知床ジャニーから届いた肉には驚いたという。色はきれいな紅色で、柔らかさの中に歯ごたえもあり、臭みもない。すぐにメニュー開発に乗り出し、試行錯誤の末に、「知床 えぞしか肉のロースト」が完成。開発にかけた努力は、即、来店客からの反響となって返ってきた。「プラス料金を払うので、フェアで出しているメニューを忘年会のコースにも入れてほしい、というリクエストもありました。今後も機会があれば、産地限定のフェアをやりたいですね」(大久保氏)。
生産者と飲食店。お互いを信頼し、こだわりや想いが強いからこそ、素晴らしい料理が生まれるのだろう。
知床ジャニー
北海道斜里郡斜里町美咲20番地
http://www.shiretokojourney.com/
1997年創業。「知床の自然を守り、感動と恵みをお届けします」をモットーに、農水産品やオリジナル商品、えぞしか肉製品などを販売。Web通販も行う。会社創設に関わった立松和平氏の特徴ある手描き文字が看板になっている。
Grill Dining f
北海道札幌市中央区南2条西3 カタオカビルB1
http://r.gnavi.co.jp/h728600/
「大人の隠れ家ダイニング」をコンセプトに、肉料理をメインに提供している。非日常を演出したいという想いから、見た目で感動し、匂いで楽しみ、音で食欲をそそるなど、“五感で楽しむ”メニューを念頭に開発している。
「産地フェア」で全国の食の魅力を発信!
http://r.gnavi.co.jp/foodfair/
テーマにあわせた各地の食材フェアをぐるなびが紹介する「産地フェア」。全国の“厳選食材”の生産者と飲食店を結び、ユーザーに提供することで、お店のファン獲得を狙うこの企画。実施エリアや開催スケジュールなどの問い合わせは担当営業まで。