ハワイのソウルフード「ロコモコ」が劇的に進化していた

1940年代に生まれたハワイのソウルフード「ロコモコ」。伝統的なロコモコがある一方で、現代風にアレンジし新たな味・魅力を提供する店が増加中だ。今回は伝統ある店と最新の人気店をご紹介。

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更新日:2024.1.24

Vol.57

「ロコモコ」(Loco Moco)は、1940年代にハワイ島ヒロで生まれた、ハワイに住む人たちにとっては郷愁を誘うソウルフードである。ご飯の上にハンバーグをのせ、グレービーソース(肉などを調理したときに出た肉汁を使って作ったソース。日本で提供されるロコモコはデミグラスソースが多いが、ハワイではあまり見かけない)をかけたシンプルな料理は、地元住民の間に広まり、現在では観光客にも愛されている料理のひとつだ。

そんな伝統的なロコモコの味を守り続ける店がある一方で、現代風にアレンジして、新たな味・魅力を提供する店が増えている。今回はロコモコを広めた伝統ある店と、最新の人気店を紹介し、ハワイのロコモコの最新事情をお伝えする。

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ハワイ島ヒロにある「カフェ100」の“原型”ロコモコ。ロコモコを一般に広めた「ロコモコ大使」的な存在
ホノルルでは進化したロコモコも登場。「ホノルル・バーガー・カンパニー」では、ロコモコをハンバーガーにして提供
ホノルル・バーガー・カンパニーのオーナー、ケン・タカハシ氏。できるかぎりハワイ産の食材を使いたいと話す

「うまい、安い、早い、お腹いっぱい」がハワイのソウルフード

ロコモコの誕生は、1940年代。もともとハワイアンや白人が食べていた伝統食というわけではなく、生みの親は、ハワイに住む日系移民と言われている。お金のない男子高校生に安くてお腹がいっぱいになるメニューをということで考案され、ハワイ島ヒロの「リンカーン・グリル」という食堂の女主人が作ったという。当時のロコモコの値段は25セント。この「うまい、安い、早い、お腹いっぱい」の料理を好むのは、何も男子高校生だけではない。リンカーン・グリルの定番メニューとなり、あれよあれよという間にハワイ島を席巻し、オアフ島を含むハワイ全域に広がった。

ロコモコ発祥当時の1946年より営業を続ける「カフェ100」。最初の店は津波で破壊され、ここは3軒目。歴史ある食堂を地元のコミュニティがサポートする

そんなロコモコのさらなる人気の火付け役になったのは、ハワイ島に現存する最古のレストラン「カフェ100」(Cafe100)だ。第二次世界大戦中は米陸軍第百連隊に所属したという故リチャード・ミヤシロ氏が、1946年に開店。「リンカーン・グリル」での評判を聞きつけ、いち早くメニューに取り入れ、現在でもロコモコが人気のレストランとして繁盛している。現オーナーで2代目のゲイル・ミヤシロ氏は「父の口癖は、『みんなをお腹いっぱいにしたい』でした。ですから今も、ボリュームたっぷりの料理を低価格でお客様に提供するのがうちのポリシーです」と話す。

「カフェ100」では現在、牛肉ハンバーグのほかに鶏肉や魚、野菜などを使用したロコモコも提供しており、その種類は30種以上。数あるメニューの中でも一番人気は、やはりオリジナル版の牛肉ハンバーグ。価格は未だに2.75ドル(約290円)というから驚く。「カフェ100」は地元住民にとって、ハワイにおける食の歴史を語るうえで欠かすことのできない、ロコモコのシンボル的存在として君臨し続けている。

「カフェ100」のベーシックなロコモコ(2.75ドル=約290円)。オリジナルのレシピを忠実に守って提供している
SHOP DATA
カフェ100(Cafe100)
969 Kilauea Ave.
Hilo, HI
http://cafe100.com

ベジタリアン用ロコモコやロコモコ・バーガーなど、新時代のロコモコが登場

今やハワイのレストランにおいてロコモコを注文するのは地元客だけでなく、観光客も多く、広く楽しまれている。そして最近ではベーシックなロコモコのほかにも、様々なロコモコを提供する店が登場している。その代表格のひとつが、オハフ島ホノルルにある「ダウンビート・ダイナー&ラウンジ」(The Downbeat Diner & Lounge)だ。ここでは、ハワイ島などでのびのびと飼育された牛や鶏、卵を使い、野菜もなるべくハワイ産のものを使用したロコモコを提供。さらに、ベジタリアン用のロコモコや、動物製品を一切使わないビーガン(純粋菜食主義者)用のロコモコも用意している。

「ダウンビート・ダイナー&ラウンジ」の「ベジタリアン・ロコモコ」(8ドル=840円)。ふっくらとしたグレービーソースは野菜や豆がベースのため、量はあっても軽い印象。その下には玄米(ブラウンライス)が隠れている

オーナーのジョシュア・ハンコック氏は、オアフ島のノースショアで生まれ育ち、15歳でベジタリアンになったという。「ロコモコは好きでしたが、ベジタリアンになってからは、ハンバーガーを野菜や豆類で作ったベジ・バーガーで代用するようになりました」とジョシュア氏。そのため、グレービーソースも同店は野菜ベースで、ご飯には玄米が使用されている。全体が驚くほど軽く、新鮮なおいしさと好評だ。

さらに、ロコモコをハンバーガーにしてしまった店もある。ホノルル中央部にある「ホノルル・バーガー・カンパニー」(Honolulu Burger Company)の、その名も「ロコモコ・バーガー」(9.95ドル=約1,040円)。ロコモコで使われる食材(ハンバーグ、目玉焼き、グレービーソース)に、ベーコンとスパムを加えた一品だ。もちろん、ただ素材をバンズに挟んだだけではない。「当店では、安全で新鮮な地産食材を安価で提供しています」とオーナーのケン・タカハシ氏。牛肉には自然放牧され、トウモロコシや大豆などの穀物飼料を一切与えられていない「草食牛」を使い、野菜もできるかぎりオーガニックなものを使用している。

ロコモコ・バーガーはとても大きく、かなりボリュームがあるように見えるが、食べてみると思ったより軽い。ジューシーで肉厚なハンバーグが特においしいと人気を得ている。今後、同店を国内外で出店したいという夢を持つタカハシ氏。「今は、納豆バーガーを作ろうと研究しています。ロコモコだけでなく、あらゆるものをパンに挟んじゃいますよ(笑)。今の世の中、どんなアイデアがヒットするかは未知数ですからね」と話す。実はタカハシ氏は、前出の「カフェ100」の隣に住み、ここのロコモコを食べて育った。ハワイ料理のニューウェーブの中にも、伝統の味わいは息づいている。

「ダウンビート・ダイナー&ラウンジ」のオーナー、ジョシュア氏はロックミュージシャンでベジタリアン
見た目はボリュームたっぷりの「ロコモコ・バーガー」。だが野菜が多いため、思ったより軽く完食できる
SHOP DATA
ダウンビート・ダイナー&ラウンジ(The Downbeat Diner & Lounge)
42 North Hotel Street
Honolulu, HI
(808)533-2328
http://downbeatdiner.com
SHOP DATA
ホノルル・バーガー・カンパニー(Honolulu Burger Company)
1295 South Beretania Street
Honolulu, HI
(808)626-5202
http://honoluluburgerco.com

取材・文/カーソン佳子

※※通貨レート 1ドル=約104.4円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。