イタリア発 ハイクオリティなハッピーアワーが人気 前編

ミラノの「ハッピーアワー」では、通常の1.5~2倍の料金で料理やドリンク、空間もハイクオリティなものを提供するバーが増加中。どのようにミラノっ子達に受け入れられているのかをリポート。

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Vol.63

「ハッピーアワー」という言葉は世界各国で多様化し、それぞれの国に独自のスタイルが存在する。イタリアのミラノで「ハッピーアワー」といえば、19:00~21:30頃の時間帯に食べ放題のジャンクフードのビュッフェ(ピザ、パスタ、フライド・チキン、フライド・ポテト、ハム、ソーセージといったメニュー)、そして一律8~10ユーロ程度のドリンクを提供するのが一般的だ。

ところが最近、この1.5~2倍の料金で、ハイクオリティなハッピーアワーを提供するバー(バール)が、次第に街中に増えてきた。新しいスタイルのハッピーアワーが、どのようにミラノっ子達に受け入れられているのか。その実態を紹介する。

一般的にミラノで見かけるハッピーアワーの看板。従来、イタリアでハッピーアワーといえば、おつまみ食べ放題の食前酒タイムを指すものだ
ハイクオリティなハッピーアワーが登場し、料理にも変化が。高級ホテルのバーでは、野菜スティックと高級モッツァレラチーズにフォカッチャをセットにして提供
上質な空間で、オリジナルカクテルや高級な酒が飲めるのも魅力。写真は、アルマーニが手がけるバーのカクテル「チャイニーズ・ウイスパー」
写真提供:アルマーニ、バンブー・バー

高級ホテルのバーが提案する、ハイクオリティなハッピーアワー

ミラノの街中を19時ごろに歩くと、ハッピーアワーの看板を出しているバーを至るところで見かける。その時間帯のバーを覗くと、どこも食べ放題の料理が載ったビュッフェ・テーブルは黒山のような人だかりで、それは大変な賑わいだ。

広々としたブルガリ・ホテル内の「イル・バール」のカウンター。このラウンジに座っただけで、落ち着いた気分になれる

ところが今、このハッピーアワーに大きな変化が見られる。そのきっかけとなったのが、ブルガリ・ホテル内にある「イル・バール」(Il Bar)だ。ミラノの中心地にありながら閑静な超高級住宅地と美術館、植物園に囲まれたブルガリ・ホテルは、一瞬、ミラノの中心地にいることを忘れてしまうほどの静寂とくつろぎを与えてくれる場所。そしてホテルには4,000平米にも及ぶ広大なプライベート・ガーデンがあり、その庭の風景が楽しめる空間を構えるのが、「イル・バール」だ。「宿泊者のみならず、地元ミラノの人たちにも、幅広く利用してもらいたい」というコンセプト通り、ここのハッピーアワーは、オシャレなミラノっ子達でいっぱいだ。

「イル・バール」を一躍有名にしたのは、ボーイがテーブルを回って無料のおつまみをサービスするという、ミラノ初のスタイルだ。しかも提供されるおつまみは、五つ星のホテルシェフ、アンドレア・フェレッロ氏が監修したハイクオリティなもの。そしてテーブルに運ぶときには、ボーイが「ホウレンソウとリコッタチーズのキッシュです」などと、まるで高級レストランのように、料理の説明をていねいに行う。さらに、ハッピーアワーの時間内は、おつまみがなくなるとボーイがすぐに新しいものを持ってきてくれるのだ。

提供されるドリンク(アペリティーボ。食前酒の意味)は、オリジナルカクテルから伝統的なカクテル(スプリッツやモヒートなど)、そして赤ワイン、白ワイン、スパークリングワインなど。だが、料金は基本的にワンドリンク20ユーロ(約2,810円)と、高額だ。「確かに街中のバーに比べれば料金は約2倍になるが、超高級レストランのサービスと味。そのうえ、ゆったりした椅子やソファでくつろいで、友達とゆっくりした時が過ごせるのだから、決して高いとは思わないよ」と、30代の男性客は話す。

超高級ホテル・レストランの厨房で作られたハイクオリティなおつまみ。それを味わいながら、ゆったりとした気分で飲むカクテル。最高のサービスと、至福の空間。確かに、20ユーロ払っても、ここでハッピーアワーを楽しむ価値は十分にありそうだ。

サービスされる無料おつまみの一例。ジェノベーゼ・ペーストとパルメザン・チーズのトースト。五つ星ホテルのシェフによるペーストの味は格別だ
リゾット・ミラネーゼ。米の硬さから味付けまで、すべてにおいて「極上」の一品
SHOP DATA
イル・バール ブルガリ・ホテル(Il Bar Bvlgari Hotel Milan)
Via Privata Fratelli Gabba 7b - 20121 Milano
http://www.bulgarihotels.com/
Happy Hour Time 18:00~21:00

ファッションブランド・バーのオシャレなハッピーアワー

ブルガリ・ホテルの「イル・バール」が始めたワンクラス上のハッピーアワーは、瞬く間に流行に敏感なミラノっ子達の人気を集め、その後、ファッションブランドの「ドルチェ&ガッバーナ」が「ゴールドバー」(Gold Bar)というレストラン&バーをミラノにオープンした。同店も「イル・バール」と同じスタイルで、ハイクオリティなおつまみをハッピーアワーで提供している。

「バンブー・バー」のラウンジは、約6mの天上高がある広々とした空間。柔らかい光が、バーの空気を和ませる

さらに2011年、ファッション界の帝王「アルマーニ」がオープンしたのが、アルマーニ・ホテル・ミラノ内のバー「バンブー・バー」(Bamboo Bar)だ。ホテルの最上階にあるこのバーは、オニックス(宝石の一種)の壁やカウンターを透かした柔らかな光と、窓に広がるミラノの景観が調和した、都会的で洗練されたエレガントな空間を演出している。「当店は、"Stay with Armani"を体感してもらえるよう、アルマーニ自身がすべてをデザイン、監修したエレガントで洗練された空間です。お客様に心地よいハッピーアワーを過ごしていただくために、カクテルやフィンガーフード(おつまみ)はもちろんのこと、ラウンジ・ミュージックにまで細心の注意を払っています」とマーケティング・マネージャーのララ・プロスペリ氏。

そんな上質な空間で提供される同店のハッピーアワーでは、モデル風の女性やファッション業界の関係者とおぼしき人々がソファでくつろぎ、ゆったりと静かにその時間を楽しんでいる。そしてカウンターでは、スーパー・バーテンダーとして名高いマティア・パストーリ氏が、上品かつユーモラスな会話を客と交わしながら、芸術作品のようなカクテルを作っている。

プロフェッショナルなバーテンダーが作るオリジナルカクテルと、高級レストランのシェフが作るフィンガーフード、そして厳選されたラウンジ・ミュージック。これで、ワンドリンク18ユーロから。すべてがエレガントで洗練されたハッピーアワーは、ファッショナブルでハイクラスなミラノっ子達から強く支持されている。

バンブー・バーのカクテル「アップル・ピエ・カイピリーニャ」。カシャッサ(ブラジル特産スピリッツでラムの一種)とリンゴジュースなどで作るオリジナルカクテルだ
バンブー・バーで提供されるおつまみは「フィンガーフード」と呼ばれている。これはカルパッチョとサラダの盛り合わせ
SHOP DATA
ドルチェ&ガッバーナ ゴールド・バー(Dolce & Gabbana Gold Bar)
Via Carlo Poerio 2A
http://www.dolcegabbana.it/gold/
Happy Hour Time 19:00~
SHOP DATA
バンブー・バー アルマーニ ホテル ミラノ(Bamboo Bar Armani Hotel Milano)
Via Manzoni 31 20121 Milano
http://milan.armanihotels.com
Happy Hour Time 19:00~

取材・文/山口けいと

※通貨レート 1ユーロ=約140.5円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。