中国発 若者に人気!新スタイルの「老爸茶館」 後編

中国・海南島のお茶を楽しむ文化「老爸茶(ラオバーチャ)」。近年お茶を楽しむ場「老爸茶館」に新たなスタイルが誕生。後編ではフードメニューを見直し、若者・女性向けに変身した店を紹介。

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Vol.68

中国の海南島では、昔からお茶を楽しむ文化「老爸茶(ラオバーチャ)」があり、そのお茶を楽しむ店「老爸茶館(ラオバーチャーグァン)」があった。そして近年、老爸茶館に新たなスタイルが生まれ、地元の女性や若者、観光客までをも集めている。前編では、美容・健康ドリンクを提供する店や、店舗デザインで話題になっているスポットを紹介した。

後編では、「老爸茶」のもう1つの楽しみであるフードメニューを見直すことで、若者・女性向けに変身した2つの例を紹介。作り置きの菓子パンと饅頭(マントウ)しかなかった老爸茶の小吃(シャオチー/おやつ)に、できたてメニューを加えた店と、各地の特産メニューを巧みに取り入れることで、地元の若者や女性客にも注目されるようになった店をリポートする。

穏やかな昼下がりにお茶を飲み、おやつを食べながら友人と談笑してゆったりと時を過ごすのが、南国海南島の老爸茶文化
オープンキッチンでスタッフと客とのやり取りが交わされ、できたて、作りたてのメニューを売りにした老爸茶館。自分好みにできるのが魅力
海南島のみならず、中国各地のスイーツなどを提供する店が登場して大人気。写真は豆や果物にココナッツミルクシャーベットがかかった海南島のご当地スイーツ「清補涼(チンブリャン)」

冷たいものは冷え冷えで、温いものはアツアツで。決め手はできたて!

おいしいものは少しずつ、いろいろ食べたいという、女性の要望に応える「老爸茶館」が増えているのが最近のトレンドの1つ。しかし、単に品数を増やせばいいというものではない。従来の「老爸茶館」にあるような菓子パンや饅頭の種類が増えても、女性たちは振り向いてくれない。キーワードは「できたて」だ。冷たいものは“冷え冷え”で、熱いものは“アツアツ”で提供するという、できたて感を打ち出す店が増えてきた。

多種多様な小吃(おやつ)と、その場で作ってくれるアツアツの手作り料理が売りの「金水門江辺海鮮酒楼」。湯気が食欲を誘い、どれを食べようかと迷うほど

その代表と言えるのが「金水門江辺海鮮酒楼(ジンシュイメンジャンビエンハイシェンジュウロウ)」だ。もともとは海鮮料理の店として営業していたが、最近の「老爸茶館」のブームに乗り、カフェタイムの14時~17時を利用して老爸茶を始めた。

店内のあちこちにあるオープンキッチンでは、調理スタッフがその場で調理の最終仕上げをして提供。作り置きが中心だった従来の「老爸茶館」と、明確な差別化を図った。例えば、麺類。キッチン前に行くと、「麺の種類はどうしますか?」「ビーフンで」とか、「茹で具合はどうしますか?」「麺は硬めにお願いします。パクチーは多めに入れて」というやり取りが交わされる。トッピングにもあれこれリクエストが可能で、「自分だけの一杯」を作ってもらえる楽しさも味わえる。もちろん、できたて、アツアツで!

また、「餅(ビン)」と呼ばれているナンの一種は、その場で小麦粉から打ってくれ、ネギやバナナ、パイナップルなど様々な具材が選べる。「どれで作りますか?」「じゃあドリアンでお願いします」「はい、すぐできるからね」と、手慣れた様子であっという間に完成。外側がカリカリ、中はモチモチ。やはり焼きたては格別だ。サラダのコーナーでは、甘酢で味付けされたワカメやモズク、キュウリ、大根などを好きなだけ混ぜてくれる。さらに、少しボリュームのある飲茶メニューも用意されており、小腹を満たしてくれる大満足の内容。それも、1品当たり2~25元(約32~400円)とお手頃価格で提供されており、庶民の「老爸茶文化」を守り続けている。

椰子の果肉にもち米が包まれた海南島の特産料理「椰子飯(イエズファン)」。外側の果肉のサクサクとした歯ごたえと、内側のもち米のモチモチ感が絶妙のハーモニーで人気
「餅(ビン)」の実演販売。料理人の手際のよさに見とれる。ネギのほかにドリアン、バナナ、パイナップル味などもある
SHOP DATA
金水門江辺海鮮坊
海口市美蘭区新埠島金水門海鲜城西2号
http://jiangbianjl.com/

ご当地グルメを集め、若者やトレンドリーダーを呼び込む

「中国各地や国外の名物料理を出す」というアイデアを取り入れて人気店となっている老爸茶館もある。いわば百貨店の全国ご当地グルメ祭りや、多国籍料理レストランの老爸茶館バージョンである。その代表的な店が2013年12月にオープンした「国貿小吃城(ゴウマオシャオチーチャン)」。ここは各店舗がそれぞれの特色を出して展開するフードコート型の老爸茶館だ。

ココナッツ、マンゴー、ザボンで作った「楊枝甘露(ヤンジーガンルー)」は、南国フルーツを使ったスイーツの王様。ココナッツのコク、マンゴーの甘味、ザボンの爽やかさが絶妙のハーモニーで一番人気

中国・東北部のハルビンの料理から、北京、上海料理、香港料理や台湾料理、新疆(シンキョウ)ウイグル料理、ご当地海南島の料理まで、各地域の特色ある料理をそれぞれの店舗が小皿で提供する。さらには日本の寿司やインドのナン、韓国料理や東南アジア料理のゾーンもある。まさに「パスポートの要らないアジア一周グルメツアー」といった趣だ。

若い女性に人気ナンバーワンなのが、香港発祥のスイーツ「楊枝甘露(ヤンジーガンルー)」。マンゴーピューレをベースにココナッツミルクを加え、そこにマンゴーの果肉、タピオカ、ザボンなどが入る。マンゴーの濃厚な甘みとザボンのあっさりとした酸味をまろやかなココナッツミルクが包み込み、グラマラスな味わいだ。また、台湾生まれの芋のデザート「仙芋招牌(シェンユゥジャオパイ)」は、黄色いサツマイモ、紫芋、白いサトイモなど、色とりどりの各種芋類に、栄養満点の漢方ゼリー、豆類を加えたもの。ゴロゴロした食感が楽しめるとともに、冷たいアイスクリームとシャキシャキの黒砂糖入りのかき氷ものる。

そのほか、スナック感覚のおかずメニューも人気。広東省の特産「腸粉(チャンフェン)」は牛肉や海老、野菜などを米粉とデンプンで作られたトロっとした皮で優しく包んだもの。甘くとろみがある醤油味のタレでいただく。口の中でとけるような食感が人気のおかずだ。新疆ウイグルの羊肉の串焼きは、スパイスがピリリと効いていて羊肉の臭みを消しながら、独特な甘みのある肉の風味を際立たせている。刺激の強いものを食べてお腹を満たしたい男性に人気の味だ。

このように各地の様々なメニューを取り入れることで、いつも何か新しいものを求めている若者やいち早く流行をつかむ人たちを虜にする。次はどんな「老爸茶館」が登場するか楽しみだ。

女性に人気の芋のデザート「仙芋招牌(シェンユゥジャオパイ)」。台湾生まれのスイーツで、サツマイモ、紫芋、里芋などが入り、濃厚な味わい
広東省の定番人気料理「腸粉」。トロトロの皮の中は、プリプリの海老と豆もやしや葱などの野菜が入っている。スープのようにたっぷりとかかっているタレが味を引き立てる
SHOP DATA
国貿小吃城
海口市竜華区国貿大道57号

取材・文/林 由恵

※通貨レート 1元=約16円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。