ロンドン発 新型アフタヌーン・ティーが話題! 前編

イギリスでは新しいスタイルのアフタヌーン・ティーが続々と登場し、人気となっている。前編ではでイベントからインスピレーションを得てメニュー開発をしたアフタヌーン・ティーを紹介。

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Vol.77

イギリス伝統のアフタヌーン・ティー。日本でもよく知られているのは、3段重ねのトレーにサンドウィッチ、スコーン、ケーキが並ぶスタイル。しかし、ここ数年は新しいスタイルのアフタヌーン・ティーがロンドンに続々と登場し、観光客だけでなく、地元の人たちの間でも人気だ。なかでも注目を集めているのが、イベントからヒントを得て開発されたスペシャルメニューや、他国の文化を取り入れた新メニューを打ち出した店。前編では、ファッションショーや物語からインスピレーションを得て話題を呼んでいる、ホテルのティー・ルームでのユニークなアフタヌーン・ティーを取り上げ、アイデアのおもしろさに迫る。

ファッションショーからインスピレーションを得て、華やかなアフタヌーン・ティーを展開する店が注目の的
アフタヌーン・ティー用のメニューシートもオリジナリティのあるデザインに
イギリス人であれば小さな頃に誰もが読んだことのある物語を、アフタヌーン・ティーで表現する店も人気に

ファッションショーを表現したメニューが女性の間で一躍人気に!

ロンドンでアフタヌーン・ティーを楽しむとしたら、真っ先に思い浮かぶのがホテルのティー・ルーム。多くのホテルが顧客獲得のため、しのぎを削っている。なかでもいち早く伝統的なアフタンーン・ティーのイメージを打破し、ユニークなスイーツで人気を獲得したのが、百貨店「ハロッズ」など高級店が建ち並ぶナイツブリッジにある1972年創業のホテル「ザ・バークレイ」(The Berkeley)。その中にあるレストラン「キャラメル・ルーム」(Caramel Room)で提供されるアフタンーン・ティー「プレタ・ポルティー」(Prêt-à-Portea)だ。

ザ・バークレイの「プレタ・ポルティー」(41ポンド=約7,420円)では、たくさんのスイーツを楽しんでもらうために、色のバランス、食感、バラエティ豊かなフレーバーなど精巧な工夫が施されている

メニュー名の由来は、ファッションショーの1つ、ロンドン・コレクションで発表される「プレタ・ポルテ」(prêt-à-porter=高級既製服)と「ティー」(tea)をかけ合わせたもの。同ホテルのヘッド・ペストリー・シェフであるムラド・キアト氏が、ロンドン・ファッション・ウイークからインスピレーションを得たアイデアを基にスイーツメニューを考案している。毎年、春夏と秋冬コレクションの2回に合わせて期間限定で「プレタ・ポルティー」が展開される。

取材時には「2014年春夏コレクション」からインスピレーションを得た「プレタ・ポルティー」を提供中。なかでも、人気ブランド「ミュウミュウ」のトートバッグや、レッドソール(深紅の靴底)で有名なブランド「クリスチャン・ルブタン」のハイヒールをチョコレートビスケットで形作り、ターコイズ色のアイシング(砂糖と卵白を合わせたもの。製菓の飾りとして使われる)を施したものをセットにして提供。これらのスイーツがテーブルに運ばれると、その美しさに感激の声が上がり、口にすればおいしさに魅了され、女性ファンが多いというのもうなずける。

食器はイギリスを代表するブランド「ウェッジウッド」の特別仕様のものを使用。ファッショントレンドに合わせて鮮やかな色使いを意識し、華やかさをプラスしている。また、食べきれなかった分はテイクアウトも可能で、持ち帰り用のケースもハンドバッグ型にするなど、女性ファンを引きつけるこだわりは徹底している。この期間限定メニューは年に2回登場するため、そのたびにメディアでも話題になり、リピーターを獲得できることも強みの1つだ。

最新ファッションとのコラボレーションによる期間限定スイーツは、トレンドに敏感な若者や食にこだわる大人の美食家など、イギリス人だけでなく世界中の観光客も虜にしている。

皿には、スタイリッシュかつポップな色使いのデザインが人気の「ウェッジウッド」のものを使用
インスピレーションを得るためにも、毎シーズンできるだけ多くのファッションショーに足を運ぶようにしているというキアト氏
SHOP DATA
キャラメル・ルーム(Caramel Room)
ホテルThe Berkeley内
Wilton Place, Knightsbridge
London SW1X 7RL
United Kingdom
http://www.the-berkeley.co.uk/fashion-afternoon-tea/

話題の舞台作品をモチーフにした驚きと感動のアフタヌーン・ティー

同じく、人気作品をテーマにしたメニューで人気となっているのが、劇場が建ち並ぶウエストエンドにほど近い場所に位置する1998年創業のホテル「ワン・オルドウィッチ」(One Aldwych)内の「ザ・ロビー・バー」(The Lobby Bar)のアフタヌーン・ティーだ。

「チャーリーとチョコレート工場」とコラボした「ワン・オルドウィッチ」のアフタヌーン・ティー。通常は最初にサンドウィッチやキッシュなどが載った皿(手前)が供され、その後、スコーンやスイーツ類(奥)がサーブされる(34.50ポンド=約6,250円)

同ホテルが選んだのは、イギリス人が幼少期より馴染みのあるロアルド・ダールの児童文学「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory)。ティム・バートン監督の映画でもおなじみの作品だが、同ホテル近くの劇場でそのミュージカルが上演されることが、メニュー制作のきっかけになったという。

エグゼクティブ・シェフであるドミニク・ティーグ氏は、原作を読み返してアイデアを描き出し、キッチンで試行錯誤を繰り返しながら新作のアフタヌーン・ティーを完成させた。メニューは綿菓子、金の卵の形をしたチョコレート、小さな瓶に入ったチョコレートドリンク、ブルーベリーのブリオッシュ、カカオ豆の形をしたフィナンシェ、ライムとココナツ味のホワイトチョコレート、そのほかにスコーンやサンドウィッチもそろっている。

ティーグ氏は、このアフタヌーン・ティーを作るにあたり、まず綿菓子をメインにすることを発案。普通に作っては途中で厨房の温度で溶けてしまうところを、調理するタイミングなどを緻密に計算し、実現へと導いた。さらに、木製のディスプレイ用スタンドをオリジナルで作り、スイーツを並べて原作の世界観を表現することにこだわった。

以前は平日に1日5組、週末に20組程度のアフタヌーン・ティーのオーダーが平均だったが、このメニューを始めてから、平日は1日30~50組、週末には約130組も注文が入るという盛況ぶり。同作の舞台を観に行く前に立ち寄る人はもちろん、作品の世界観をもう一度味わいたいと、舞台鑑賞後に再来店するリピーターも多い。作品のイメージを壊さず、さらに何度も味わいたくなるクオリティの高さが最大の魅力と言える。

芝居や物語からアイデアを得たメニュー作りという視点は、今後もたくさんの新型アフタヌーン・ティーが生まれる可能性を示唆している。

プラス10.50ポンド(約1,900円)で、シャンパンか写真の煙が出る仕かけを施したカクテル「チャーリー」が付く。ノンアルコールにもできるため、大人も子供も喜ぶ一品だ
子供の頃親しんだ物語をメニューに再現したティーグ氏。アイデア考案からメニュー完成まで約3カ月を費やしたという
SHOP DATA
ザ・ロビー・バー(The Lobby Bar)
ホテルOne Aldwych内
1 Aldwych, London WC2B 4BZ
United Kingdom
http://www.onealdwych.com/food-drink/afternoon-tea

撮影/Kaori Ando(One Aldwych分)、©The Berkeley

※通貨レート 1ポンド=約181円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。