ロンドン発 新型アフタヌーン・ティーが話題! 後編

アフタヌーン・ティーといえばイギリスらしさを感じる食文化だが、最近のロンドンでは新しいスタイルが話題。ジャパニーズ・テイストを取り入れた、最新アフタヌーン・ティーをリポートする。

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Vol.78

アフタヌーン・ティーといえば、イギリスらしさを感じさせる食文化の1つ。1840年代にイングランド貴族の第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアが始めたとされるこの習慣は、現在でもホテルやティールームなどで楽しむことができ、イギリス人だけでなく観光客の間でも人気が高い。紅茶を飲みながら、サンドウィッチやスコーン、ケーキなどのスイーツなどを食べるのが一般的だが、最近では新しいスタイルのものが話題を集めている。前編ではイベントからインスピレーションを得てメニュー開発したアフタヌーン・ティーを紹介したが、後編では、ジャパニーズ・テイストを取り入れた、話題の最新アフタヌーン・ティーをリポートする。

抹茶を使ったエクレアをアフタヌーン・ティーのラインナップに入れたり、スイーツに合う日本酒や梅酒を提供する店が話題になっている
スイーツと一緒に供する紅茶にもこだわる。写真は、東インド産「イースト・インディア・カンパニー」のオリジナルブレンド
日本酒を提供するアフタヌーン・ティーでは、スタッフが客の目の前で日本酒を注いでくれるサービスも好評だ

人気浸透中の日本酒とアフタヌーン・ティーとのマリアージュ

1889年に開業し、2000年5月にリニューアルオープンした、ロンドン内でも屈指の高級ホテル「マンダリン・オリエンタル・ハイド・パーク・ロンドン」(Mandarin Oriental Hyde Park London)は、テムズ川西側のハイドパークに面し、老舗百貨店「ハロッズ」などの高級店が建ち並ぶナイツブリッジに位置している。そのホテル内にあるダイニングレストラン「ザ・ローズベリー」(The Rosebery)が、2014年5月のオープンと同時に、紅茶だけでなく日本酒を組み合わせたアフタヌーン・ティー「SAKEアフタヌーン・ティー」を提供し、話題を集めている。

盛り付けが美しい「ザ・ローズベリー」の「SAKEアフタヌーン・ティー」(78ポンド=約14,200円)。スコーンは焼きたてのものが別の皿で提供される

19世紀から続くイギリス伝統のアフタヌーン・ティーに、東洋の国、日本で生まれた酒を合わせるというユニークなアイデアを、「ザ・ローズベリー」のオープン前から考えていたというマネージャーのニコール・エブナー氏。「『マンダリン・オリエンタルホテル』グループは、香港を拠点にしているというバックグラウンドがありますから、メニューにもアジアンテイストを取り入れたいと思ったのです」と語る。

近年、日本酒は新鮮で清涼感があるというイメージの良さに加え、そのおいしさが認められ、ロンドンでも人気が増してきている。和食以外でもイギリス料理やインド料理などと合わせられてきたが、アフタヌーン・ティーで日本酒を一緒に提供したのはこのホテルが初めてだという。

特徴は、サンドウィッチ、スコーン、ケーキなどに、それぞれ個性の違う日本酒を合わせていることだ。サンドウィッチには、食事によく合い、清涼感のある宮城県産の本醸造「愛宕の松」を、スコーンには、ほんのりと梨と蜂蜜の風味を感じる福島県産の純米吟醸「真桜」でクリーミーなテイストとペアリングさせる。そしてケーキなどのスイーツには、宮城県産「浦霞」の梅酒で甘みのバランスをとる。どれも「食」と「酒」との相性を入念に考えて選んでいる。

ここでのアフタヌーン・ティーには当然、紅茶も同時に供されるが、日本酒との相性がいいことに驚く来店客も多く、そのマリアージュをもう一度楽しみたいというリピーターも多い。イギリス伝統の食文化と日本の酒とのマリアージュ。始まったばかりの新しい試みだが、「今後ますます人気が増すに違いない」と、ニコール氏は自信を持っている。

日本酒はアフタヌーン・ティーのメニューに合うことを基準に、産地や製造法の違うものをそろえている。写真はスコーンと合わせる純米吟醸「真桜」
自身も日本酒が好きだという同店のマネージャー・ニコール氏。日本酒とアフタヌーン・ティーのペアリングは大成功だと語る
SHOP DATA
ザ・ローズベリー(The Rosebery)
Mandarin Oriental Hyde Park London内
66 Knightsbridge, London
SW1X 7LA, United Kingdom
http://www.mandarinoriental.com/london/fine-dining/the-rosebery/

日本の食文化にインスピレーションを得て開発したユニークなアフタヌーン・ティー

一般的なレストランでも日本食を取り入れたメニューが並ぶほど、和食の人気が定着しているロンドン。だが、イギリス伝統のアフタヌーン・ティーに、日本食のテイストを取り入れる店は珍しく、その斬新なアイデアで話題となっているのがレストラン「ザ・マガジン」(The Magazine)だ。ロンドン中心地に近く、富裕層が多い「ケンジントン・ガーデンズ」エリアに2013年9月オープン。日本食に影響を受けたというシェフ、オリバー・ランゲ氏のアイデアがたっぷり盛り込まれた話題のアフタヌーン・ティーは、2014年7月から提供されている。

テーブルに運ばれた瞬間に誰もが驚く美しさの「ザ・マガジン」のアフタヌーン・ティー。価格は25ポンド(4,550円)、日本酒3種(グラス各1杯)付きで35ポンド(6,370円)

手作りのブリオッシュに挟むロブスターには、柚子風味のマヨネーズを合わせたり、アボカドとスモークサーモンをシソの葉で包んだりと、伝統的なアフタヌーン・ティーの常識では考えつかないような「ジャパニーズ・テイスト」が絶妙に加えられている。なかでも、しめじとネギを出汁と卵で作った卵液で蒸した料理は、シェフが日本から影響を受けたオリジナル料理だ。また、通常のアフタヌーン・ティーでは定番であるキュウリのサンドウィッチの代わりに、キュウリの漬け物で作ったカッパ巻きを提供するなど、随所にシェフの遊び心が感じられる。

さらに、アフタヌーン・ティーではずせないアイテムであるスコーンには、ほんのり味噌をきかせ、柚子のタルトや、イギリスで有名なケーキ「ヴィクトリア・サンドウィッチ」(スポンジケーキの間にラズベリージャムを挟んだもの)には、抹茶と日本酒で風味をつけるなど、ふんだんに日本テイストを取り入れている。

それらのメニューは小さな砂利を敷き詰めた木箱に入れて提供され、さながら日本庭園の箱庭の様相。シェフのジャパニーズ・スピリットが反映されたアフタヌーン・ティーとして、ますます人気が高まりそうだ。

2020年東京オリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」(2018年度完成予定)の設計者としても知られる建築家、ザハ・ハディド氏が手がけた建物。現代的な雰囲気の中で味わう「日本風アフタヌーン・ティー」は、メディアの注目も集めている
自分の会社を“Kokoro”と名付けるほどの日本びいきであるシェフ、オリバー・ランゲ氏。文字どおり「心と魂」を大切に、日々料理している
SHOP DATA
ザ・マガジン(The Magazine)
Serpentine Sackler Gallery内
West Carriage Drive,
Kensington Gardens, London
W2 2AR United Kingdom
http://www.magazine-restaurant.co.uk

写真提供/©Mandarin Oriental Hyde Park London、©The Magazine

※通貨レート 1ポンド=約182円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。