アメリカ発 新メニューの登場でタコスが進化! 後編

ロサンゼルスでは近年、バラエティに富んだタコスが提供されている。今回は、高級食材やこだわりの食材を使ったタコスの提供で話題を集める店と、タコスの大型チェーンの新たな展開を紹介。

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Vol.80

アメリカのストリートフードとして、ハンバーガーと並んでなじみのあるタコス。ロサンゼルスでは、近年、バラエティに富んだタコスが提供されており、前編では個性的なタコスを提供して人気を呼ぶレストランを紹介した。後編では、高級食材やこだわりの食材を使ったタコスの提供で話題を集める店を紹介するとともに、タコスの大型チェーンの新たな展開にスポットを当てる。また、タコスの豊富さだけでなく、トレンドに敏感な女性やセレブな客層をつかんでいるサービスのよさやドリンクのラインナップなども紹介する。

ストリートフードだったタコスをレストランのメニューとして昇華させるとともに、店の内装やサービスもレストランと同様の質というスタイルが、ユーザーの心をつかんでいる
チェーン店も高級食材などを使ったタコスを提供するブランドを立ち上げた。手間暇かけた料理を提供するのが、最近のトレンド
タコスだけでなく、そのほかのメニューも充実しているのが人気の理由の1つ。写真は黒豆を練りこんで揚げたトルティーヤに、チキン、アボカド、酢漬けにしたタマネギなどを挟んだ「チキン・パヌチョス

安全なオーガニックの素材を用いて差別化を図る

1990年にオープンし、高級食材を使ったメキシコ料理を提供して話題のレストランが、ロサンゼルス中心地のオフィス街にある「ボーダー・グリル」(Border Grill)だ。ケーブルテレビの人気料理番組「トゥー・ホット・タマレス」(Two Hot Tamales)や、「トップシェフ・マスターズ」(Top Chef Masters)にも出演する有名シェフ、メアリー・スー・ミリケン氏とスーザン・フェニガー氏がオーナーシェフを務める。

グレープフルーツとコールスローの酸味が、グリルしたマヒマヒ(シイラ)によくマッチして、多くの人たちから支持を得ている「グリルド・フィッシュ」

店のコンセプトは、「安全な食材やオーガニックの材料を用いた料理の提供」。例えば、ホルモン剤や抗生物質を使用しないオーガニックの牛肉を使ったタコス「カルネ・アサダ」(17ドル=約2,000円)や、高級なラム肉をゆっくりと時間をかけてローストしたタコス「ラム・バルバコア」(18ドル=約2,100円)など、全11種類を提供する。サービスも徹底しており、黒いシャツとパンツを着たスタッフが料理をサーブ。ストリートフードであるタコスが洗練され、レストランにふさわしいメニューとして提供されているのだ。

一番人気のタコスは、「グリルド・フィッシュ」(18ドル=約2,100円)。魚は季節によって異なるが、いずれも高級魚を使用。例えば、11月ならグリルしたマヒマヒ(シイラ。欧米で人気の魚の1つ)の上に、ローストしたハラペーニョのアイオリソースとキュウリ、タマネギ、レタスをのせ、その上にライムを絞ったコールスローをのせてピンクグレープフルーツを飾る。

タコスと一緒によく注文されるのが、「ブランコ・マルガリータ」だ。「テキーラ・ブランコ(蒸留後、熟成させないで瓶詰めしたシャープな香りのテキーラ)を使い、ライムがさわやかなマルガリータは、タコスとの相性もぴったりです」と、広報担当のミーガン・プラスコー氏は語る。そのほか、魚介を使った料理など25種類のメニューをそろえ、タコス以外のメニューの充実ぶりも好評だ。高級食材やきれいな盛り付けにこだわったタコスと、豊富なメニュー、ていねいなサービスが繁盛に導いている。

同店で提供する8種類のマルガリータのなかでも、タコスと一緒にオーダーされるカクテルとして一番人気の「ブランコ・マルガリータ」
共同オーナーでシェフのメアリー・スー・ミリケン氏(左)とスーザン・フェニガー氏(右)
SHOP DATA
ボーダー・グリル(Border Grill)
445 South, Figueroa Street, Los Angeles, CA 90071
213-486-5171
http://www.bordergrill.com/

大型チェーンも食材にこだわった新ブランドを立ち上げ!

このような“高級化”の波を無視できなくなったのが、タコスのチェーン店だ。アメリカ全土で6,500店以上を展開するメキシカン・ファストフードの大手「タコベル」が、新たに展開したのが「U.S.タコ」(U.S.Taco)。同店は、サーフィンのメッカとして知られるカルフォルニア南部のハンティントンビーチに、2014年8月オープンしたばかり。

「U.S.タコ」で人気の「サザン・スクイーラー」。豚肉を使うが、「スクイーラー」(ブーブー鳴くものという意味。つまり豚のこと)と名付け、ネーミングでも印象付けている

「タコベルよりグレードアップした素材を使ったタコス」を提供することをコンセプトにしており、例えば「タコベル」では牛肉のタコスを2.39ドル(約280円)で提供するが、「U.S.タコ」ではホルモン剤を使用しない牛肉を使って「ブラザリー・ラブ」として約2倍の4.50ドル(約530円)で提供する。また、「U.S.タコ」には「タコベル」で取り扱っていない高級食材、アメリカ北東部産のロブスターを使ったタコス「ザ・1パーセンター」(9.99ドル=約1,170円)なども提供し、ブランドの差別化を図っている。

10種類のタコスの中でも、特に人気なのが豚肉を使った「サザン・スクイーラー」(4ドル=約470円)だ。コーンケーキの上にアメリカ南部の代表的なメニューの1つである「プルドポーク」(ポロポロになるほど柔らかくなるまで長時間弱火で煮込んだポーク)を敷き、ピーチとハラペーニョで作ったバーベキューソース、キャベツの千切りのコールスローをかけて、ハラペーニョとパクチーを飾る。「ピーチとコーンケーキの甘みと、ハラペーニョのピリ辛な味が合わさり、大好評です」と、「U.S.タコ」の広報担当者は語る。

この「サザン・スクイーラー」と合わせて多く注文されるのが、「フリッギン・フライド・アイスクリーム」(4.50ドル=約530円)。ラテンアメリカの伝統的なスイーツ「レチェ」(液体のキャラメルソース)を使ったシェイクで、かなり甘いのが特徴。そのほか、18種類の「クラフトソーダ」(小規模製造所で作られる自然素材を主としたソーダ)も提供するなど、フードだけでなくドリンクでも魅力的なメニューをそろえており、リピーター獲得に一役買っている。タコスの店も「薄利多売」から「高付加価値」の時代へと移り変わっていると言えるだろう。

液体のキャラメルソース「レチェ」をあらかじめ塗っておいた瓶に、バニラアイスクリームとミルクのシェイクを注いだ「フリッギン・フライド・アイスクリーム」
若い世代を意識してスカル(ドクロ)モチーフを使って印象的な店内に。10代から家族連れまで幅広い人たちに人気だ
SHOP DATA
U.S. Taco(U.S.タコ)
150 5th Street, Huntington Beach, CA 92648
714-536-6728
http://ustacos.com

取材・文/大山真理

※通貨レート 1ドル=約117円

※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。