Vol.121
今、ロサンゼルスを中心に「カリフォルニア・ポケ」がトレンドとなっている。そもそも「ポケ」(ハワイ語で「切り身」の意)とは、マグロなどの生魚をぶつ切りにして、醤油やゴマ油などで漬け込んだハワイ料理。そのまま酒の肴にしたり、ごはんに盛って丼風にするなどして親しまれてきた。
その「ポケ」が、2015年頃からカリフォルニアで一躍注目を集めている。生魚をあらかじめタレに漬け込むのではなく、その場で好きなソースをドレッシングのようにかける独自のポケが人気。さらに、ごはんではなく春雨にのせたり、野菜と合わせてシーフードサラダ風にしたりと、「自分流にカスタマイズできる」スタイルも好評で、今やトレンドの波はほかの州にまで広がっている。
魚9種、タレ9種、トッピング9種などから自由にカスタマイズ!
ロサンゼルスの中心部・ハリウッドから車で5分ほど南下したビバリーグローブと呼ばれる地区の繁華街にある「コーラルフィッシュポケショップ(Coral Fish Poke Shop)」は、2016年5月にオープンしたばかりだが、すでに地元の人たちから評価の高い店だ。
人気の「ポケ・ボウル(丼)」は、「Build Your Own Bowl(ビルドユアオウンボウル/BYOB)」、つまり自分の好きなトッピングを選べるスタイル。魚2種類を選べるスモールが8ドル90セント(約890円)、3種類選べるミディアムが10ドル50セント(約1,050円)、4種類選べるラージが12ドル(約1,200円)だ。
魚の種類は、キハダマグロ 、ビンナガマグロ、サーモンやタコなどの定番のほかに、他店ではあまり見かけないハマチやホタテ、さらにはベジタリアン用の豆腐を含めて合計9種類。4~5種類の店が多いなかで、豊富なラインナップも差別化の一因となっている。
選べるのは魚だけではない。ベースを白米か玄米にして丼にするか、生野菜かルッコラにしてサラダにするかを選ぶことが可能。合わせる具材も紫オニオンやキュウリのスライス、まさご(魚卵の塩漬け)、パクチー、パイナップルの5種類から好きなだけ選べる。タレはハワイ伝統の「ゴマ油と醤油」のほか、「わさび入りアイオリ」「ポン酢」など9種類から2つまで選んでミックスできる。さらに最後にかけるトッピングは、ハラペーニョ、オニオンフライ、ガーリックフライ、のりや鰹節のふりかけなど9 種類から好きなだけ選べて、組み合わせは無数になる。
自分の好きな組み合わせを見つけて「マイスペシャル」を完成させるもよし、毎回その日の気分に合わせて違う味を楽しむもよし。食材の好き嫌いが激しいアメリカ人にも向いており、個人の食事制限や食物アレルギーにも対応可能。そのため、客の年齢層は20代から年配まで幅広いが、共通しているのは“食を自分流に楽しみたい”という意識だ。
選択肢が多すぎて逆に悩むという人には、5種類の店のおすすめ「ハウス・ボウル」(いずれもスモールが9ドル95セント=約995円、ラージが13ドル95セント=約1395円)もあり、好評を得ている。
6357 Wilshire Boulevard Los Angeles, CA 90048
元寿司職人がプロデュースする「カリフォルニア・ポケ」専門店
ロサンゼルスのなかでも日本人がもっとも多く住むサウスベイ地域に位置するロミータ市。そこのショッピングモール内に2015年5月から店を構える「キング・ポケ(King Poke)」は、元寿司職人の日本人がプロデュースするカリフォルニア・ポケ専門店だ。
人気の「ポケ・ボウル(丼)」(スモール7ドル50セント=約750円、ミディアム8ドル95セント=約895円、ラージ11ドル95セント=約1,195円)には、キハダマグロ 、ビンナガマグロ、サーモン、白身魚、まさごがすべて入る豪華海鮮丼風。だが、嫌いな魚があれば抜いてくれて、その代わりにほかの魚を増量してくれる。魚と合わせる具材はきゅうり、オニオン、アボカド、カニカマ、ごま、ネギの6種類が基本だが、こちらも嫌いなものは抜くことができる。同じカリフォルニア・ポケ流のカスタマイズでも、前半で紹介した「コーラルフィッシュポケショップ」が好きなものをプラスしていくのに対して、こちらは好まない食材を抜いていくのがユニークだ。
丼のごはんは元寿司職人のこだわりもあり、酢飯を使っているが、ゆでた春雨に変更することも可能。前半で紹介した「コーラルフィッシュポケショップ」が米ではなくサラダを使ったポケ・ボウルも出すのと同様、低カロリーの代替案を用意するのがより多くの集客を呼ぶポイントだ。また、このポケを上にのせた「カリフォルニアロール」(ラージのみで12ドル50セント=約1,250円)も人気商品になっている。
ソースは、オリジナルのポン酢、スパイシーマヨネーズ、味噌入りゴマソース、辛子酢味噌 、コチュジャン入りスパイシーソースの5種類から好きなものを選ぶ。特にポン酢が店のおすすめで、ハワイで定番の「ごま油と醤油」は置いていない。 仕上げのトッピングは、フライドオニオンやフライドガーリックチップ、海苔、パクチー、フライドワンタンチップスなど7種類から好きなだけ選ぶことができる。
また、引き算スタイルの「ポケ・ボウル(丼)」以外に、アメリカ人が大好きな「スパイシーツナ・ボウル(丼))」(スモール7ドル=約700円、ミディアム8ドル45セント=約845円、ラージ11ドル45セント=約1,145円)がある。こちらも酢飯を春雨に変更可能で、トッピングを7種類から好きなだけ選べる上に、別料金で追加素材を選べる足し算スタイルだ。
日本人が経営しているポケ専門店は少なく、在留邦人はもちろん、ポケを食べなれた現地のアメリカ人にも「生魚の扱いに信頼が置ける店」と人気。各種の刺身を扱う技術のある日本人の寿司職人たちが、今後新たなカリフォルニア・ポケを創造していくかもしれない。
2366 Pacific Coast Highway Lomita, CA 90717
取材・文/押見由香(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約100円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。