アジア発 台湾生まれの「チーズティー」がヒット! 前編

台湾発祥のドリンク「チーズティー」が、今、アジア各国や欧米で人気を集めている。日本でも提供する店が出始め、2018年には東京・原宿に専門店もオープン。前編では、チーズティー発祥の台湾の専門店を紹介する。

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Vol.177

 数年前から、台湾で生まれたタピオカミルクティーやフルーツティーが日本を含む世界で人気となっている。そのタピオカミルクティーと並び、注目を集めている台湾発祥のドリンクが「チーズティー」だ。アジア各国や欧米で人気となっており、日本でも数年前から提供する店が増え始め、2018年には東京・原宿に専門店もオープンした。

 チーズティーとは、五分立て程度の生クリームにチーズや岩塩などを加えて作るとろりとしたクリームを、様々な種類のお茶にのせたもの。甘みと塩気、苦みが混じり合った独特なハーモニーを味わえる。台湾ではアイスティーが基本だが、ほかの国ではホットで提供する店もある。
 前編では、発祥の地・台湾での人気ぶりを紹介する。

チーズティーの原型を作ったドリンクスタンド

 台湾で、台北に続く第2の都市と呼ばれる高雄で、2006年にテイクアウト専門のドリンクスタンドとして創業した「貢茶GONG CHA」。今、世界的に注目を集めつつある「チーズティー」の原型を作った店だ。

 創業当初は、当時流行していたタピオカミルクティーやフルーツティーなどを販売していたが、街の至るところに同じような店が乱立していたことから、他店との差別化を図ろうとオリジナルドリンクの開発に着手。そして、カプチーノのミルクフォームをヒントに、アイスティーの上に泡状にした生クリームをのせるアイデアを思いつく。そこから約1年間、クリームの味付けなどの試行錯誤を続け、岩塩で塩気や風味を加えるスタイルにたどり着いた。生クリームと岩塩の絶妙なバランスにより、飲んだときにチーズのような風味が口に広がるのが特徴だ。こうして完成したドリンクを「招牌奶蓋茶(ザオパイナイガイチャ)」(招牌=看板メニューの意)と命名した。これが、のちに世界各国で人気となる「チーズティー」の原型になるのだが、「招牌奶蓋茶」にはチーズが入っていないこともあり、台湾では「チーズティー」という名称はまったく定着していない。

「招牌奶蓋茶」(写真はLサイズ、ベースのドリンクは「青茶」)は、売上の30%を占める看板メニュー。お茶のさわやかな苦みと濃厚なクリームがよく合う

 そして、2006年から、M(約500ml、45元=約160円)、 L(約660ml、55元=約200円)の2サイズで「招牌奶蓋茶」の販売を開始。すると、紅茶やコーヒー、スムージーなど50種類以上あるドリンクメニューで一番の人気商品になり、売上の30%を占めるまでになった。上にのせるチーズ風味のクリームは1種類だが、ベースのお茶は、紅茶、烏龍茶、青茶(チンチャ、発酵度の低い烏龍茶)から選べる。お茶の甘さは、好みに合わせて無糖~10分唐(甘み100%)まで5段階でオーダーでき、店のおすすめは 3分糖(30%)か5分糖(50%)だという。

 ストローは使わずに直接カップから飲むのが一般的で、口に含むと、まず塩気のある濃厚なクリームが広がり、その後、お茶の爽やかな苦みと甘みが混ざり合って絶妙なハーモニーを生み出す。まるで塩キャラメルを食べたときのような塩気と甘みのループを楽しむことができ、お茶がさっぱりとしているため、しつこさも感じずに飲みやすい。

生クリーム、岩塩などを配合した濃密なクリーム。お茶とクリームの層が美しくなるようにゆっくりとお玉でのせていく(写真は、仙草ゼリーを入れた「奶蓋黒森林」)

 ほかにも、招牌奶蓋茶にタピオカか仙草ゼリーをトッピングする新感覚デザート「奶蓋黒森林(ナイガイヘイセンリン)」(約470ml、50元=約190円)など、アレンジ商品の開発にも余念がない。

 名前どおりの看板メニューとなった招牌奶蓋茶を引っさげて、「貢茶GONG CHA」は台湾全土でフランチャイズ展開を行い、海外にも進出。2018年12月現在、台湾(32店)や韓国(約400店)のほか、日本にも2015年に上陸し、東京や大阪などに15店舗を構えている。そのほか、アメリカ(約50店舗)、カナダ(約20店舗)、オーストラリア(約50店舗)など、世界で約1500店を展開。こうして海外で店舗展開を進めるなかで、チーズのような風味がする「招牌奶蓋茶」をヒントに、海外のほかの飲食店がクリームにチーズを混ぜたドリンクを提供するようになり、これが「チーズティー」として世界的なヒット商品へと成長していった。

もっとも多くの店舗を抱える韓国で実績を重ね、貢茶グループのCFO兼COOになった吳潤澤(ウールンザァー)氏。今後のさらなる海外展開への指揮をとっていく

 「貢茶GONG CHA」では、今でもチーズは入れておらず、オリジナルの味を守り続けている。高雄の玄関口である左營(ズゥオイン)駅に隣接したデパートのレストラン街に2013年7月オープンした彩虹(ツァイホン)店には、場所柄、ファミリーや旅行客、外国人など、毎日幅広い層が来店。味はもちろん、SNS映えするビジュアルも話題となり、“新しいスタイルのお茶”は多くのファンを魅了している。

貢茶 GONG CHA 彩虹店(ゴンチャ ツァイホンディエン)
高雄市左營區高鐵路115號3F (新光三越 彩虹市集内)
http://www.gong-cha.com/tw/

3種類のクリームでバリエーション豊かに

 台北で人気観光スポットの一つとなっている士林夜市(しりんよいち)が開かれる大通り沿いに、2017年オープンした「台灣不二茶鋪」。学校帰りの学生や、夜市を訪れた外国人観光客などで賑わう台湾茶のカフェだ。

 ドリンクメニューは、タピオカミルクティーやフルーツジュースのほか、旬のフルーツを使った季節限定のドリンクなど、常時30種類ほどをそろえており、「チーズティー」もオープン当初から販売。「貢茶GONG CHA」とは違い、お茶の上にのせるクリームにチーズを混ぜている。また、カスタマイズの自由度も高く、上にのせるクリームのフレーバーが3種類、ベースとなるアイスティーが8種類あり、好きな組み合わせを楽しめることで、学生など若い世代の心をつかんでいる。

クリームの厚みは2㎝を目安にたっぷりとのせるのがこだわり。ひと口目はクリームたっぷりの味わいを楽しみ、2口目、3口目と徐々にクリームが減っていき、最後はお茶をメインにすっきりと飲み終わるように計算されている

 3種類のクリームのなかで一番ベーシックなものは、塩気の強い「玫瑰鹽奶蓋(メイグゥイイェンナイガイ)」。牛乳とクリームチーズ、生クリームなどを混ぜ合わせ、そこにヒマラヤ産のローズ岩塩を加える。隠し味に入れる練乳のほのかな甘みとチーズや岩塩の塩気が、渋めのお茶にマッチする。このほか、「玫瑰鹽奶蓋」に砕いたオレオクッキーを混ぜ、ココア風味をプラスした「OREO芝士奶蓋(オレオチーシーナイガイ)」と、ホイップした生クリームにキャラメルとマロンソースを加えた「焦糖栗子奶蓋(ジャオタンリーズナイガイ)」がある。「焦糖栗子奶蓋」は、チーズや岩塩を使っていないこともあり、3種類のなかで唯一塩気がないクリーム。甘い物好きのニーズに応えるべく開発された。

甘さや氷の量は来店客が選ぶ。オレオクッキー入りのチーズクリームを乗せた「魚池紅玉奶蓋」は、ハーフシュガー(甘み50%)が人気。甘みを加えることで、紅茶の香りがさらに引き立つ

 一方、8種類あるアイスティーのうち、特に女性から人気が高いのが、ハチミツのような芳醇な甘みが後味に残る台湾紅茶「ルビーレッド(紅玉)」を使った「魚池紅玉奶蓋(ユーチーホンユーナイガイ)」(約500ml、140元=約518円)。相性のよいクリームは「OREO芝士奶蓋」で、コクと渋みのあるルビーレッドと、甘いチョコレートクッキーが見事に調和。細かく砕かれたクッキーのサクサクとした食感もあいまって、濃厚なチョコレートケーキを食べながら紅茶を飲んでいるような贅沢な気分に。一杯でお腹も気持ちも満たしてくれるスイーツドリンクだ。ほかにも、茶農家出身のオーナーが厳選した最高級台湾烏龍茶を使った「梨山凍頂奶蓋(リーシャンドンディンナイガイ)」(約500ml、180元=約670円)など、高級路線で他店との差別化に成功している。

店長の林姿彣(リンズーウェン)氏。「観光スポットの夜市が近くにあるので、外国人観光客も多いです。一度、奶蓋茶を飲んでから、旅行中に毎日来店する人も少なくありません」と語る

 台湾では現在1店舗のみだが、台湾でのオープンと同時期に中国・上海に出店したところ人気を博し、2018年12月現在、上海だけで9店舗を構えるほどに急成長。今後はさらにクリームのフレーバーの開発を進め、バリエーション豊富なチーズティーを武器に、アジア圏を中心に海外へも店舗展開したいと考えている。

台灣不二茶鋪(タイワンブーアーチャープー)
台北市士林區文林路102號1F
https://www.facebook.com/198477827330852/

取材・文/石井三紀子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1元=約3.7円
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