Vol.211
世界的に拡散し続ける新型コロナウイルス感染症。多大な影響を受けつつも営業再開を果たした飲食店が徐々に増え始めている。その中から、消毒や飛沫防止などに関して独自の衛生管理をしている店を、カンボジアとフランスから紹介する。
入口に「自動消毒ゲート」を設置
政府主導の早期対応などによって感染拡大を抑えることに成功しているカンボジア。飲食店は、アルコールを提供する店に対して夜間の営業規制がかけられたが、それ以外は通常の営業が許されている。とはいえ、感染リスクを考慮して、それぞれの飲食店が感染予防策を取っている。なかでも、特徴的な取り組みをしているのが、首都プノンペンの古い住宅街に1993年オープンしたカンボジア料理店「プロヴ・プルオス・レストラン(Plov Pluos Restaurant)」だ。近隣では営業を自粛をする店も多い中、「休業するのではなく、お客様に安心して来店してもらいたい」と、入口に「自動消毒ゲート」を導入した。
まず、来店客は入口の前で消毒液で手を拭き、その後、自動消毒ゲートへ。ゲート内に入ると、センサーが感知して1秒ほどで、アルコール消毒液が自動的に頭上から足元まで噴霧される。来店客には、事前に念のため目をつぶるように伝えている。
さらに、各テーブルにも消毒液を用意し、客が入れ替わるたびにスタッフが消毒する。
自動消毒ゲートや徹底した衛生管理が安心感につながり、名物の米麺入りの牛肉の煮込みスープ「クイティウ・コーコー」(3ドル=約321円)などを求める客で連日賑わっている。
客層は、近隣に勤めるビジネス層や近隣に住む高齢者が中心。ゲートの導入にかかった費用は約400ドル(約42,800円)。1人当たりのGDPが日本の約4%のカンボジアではかなりの高額だが、「衛生管理を徹底している店」のシンボルとして安心感を生み、集客につながっている。
No.77, Street 214, Sangkat Veal Vong, Kan 7 Makara, Phnom Penh
アクリル製の円錐台型パーティションで飛沫防止
新型コロナ拡大の影響で3月中旬から飲食店の営業が禁止されていたフランス。約3カ月を経て、6月15日から全土でレストランやカフェの通常営業が許可された。ただ、7月初旬現在、「1つのテーブルに着席できるのは10名以下」「テーブル間の距離は1メートル以上空ける」「従業員はマスクを着用」といった義務が課されている。そのため、席数を減らす店が多い中、プラスアルファで感染予防のために独自の対策をしている店もある。その1つがルーヴル美術館にほど近い観光エリアにあるビストロ「ハンド(H .A .N. D.)」だ。
その対策とは、来店客一人ひとりを囲うように天井から吊るされた円錐台型のパーティションだ。
1台の価格は税抜き155ユーロ(約19,000円)で、設置や取り外しに大がかりな工事は不要。アクリル板などの各パーツは簡単に取り外せるため、コンパクトに保管することも可能だ。
客が入れ替わるたびに、厨房で使う消毒液入りウェットティッシュで、パーティションも消毒。衛生管理も徹底している。
6月後半から7月初旬にかけてルーヴル美術館や劇場、映画館などの営業も再開され、周辺は徐々に賑わいも回復しつつあり、同店にも昼夜を問わず観光客や地元住民などが多く来店している。飛沫感染のリスクを防ぎつつ、高いデザイン性で楽しい食事の邪魔にならないアクリル製のパーティション。フランスはもちろん、アメリカやメキシコ、ブラジル、日本など、様々な国でこのパーティションを導入する飲食店が増えており、今後も、こういった感染症対策のアイテムへのニーズは高まっていきそうだ。
39 rue de Richelieu 75001 Paris
https://www.instagram.com/handparis/
カンボジア 取材・文/青山直子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ドル=約107円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。
フランス 取材・文/羽生のり子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ユーロ=約120円
※価格、営業時間は取材時のものです、予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。