(後編)フィリピン発 庶民のおやつが進化系スイーツに

独自のスイーツ文化を進化させてきたフィリピンでは、昔からある庶民のおやつがおしゃれにアレンジされてコロナ禍でも人気だ。後編では、アボカドを使ったアイスクリームやケーキなどで人気の店を取り上げる。

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Vol.216

 近隣諸国や、かつての宗主国であるスペインやアメリカから様々な影響を受けたことで、独自のスイーツを生み出しているフィリピン。ほかの国ではサラダや料理の素材として使われるアボカドもスイーツに使われている。手押し車で路地を歩くアイスクリーム店でアボカドのアイスクリームを売っており、アボカドにコンデンスミルクをかけてデザートとして食べることもある。

 後編では、さらにおしゃれに進化したアボカドスイーツを紹介する。

ヘルシーなアボカドのスイーツが大人気

 マニラ首都圏のなかでもミドルクラス向けの住宅やオフィスが集まるマンダルーヨン市。その一角にある商業施設・SMライトモールに、2019年12月オープンしたのが「アボカドリア(Avocadoria)」。現在、マニラ首都圏で店舗を増やしているアボカドスイーツの専門店だ。

 定番メニューの1つ「アボカドイニピット」(68ペソ=約146円)は、スポンジ生地にアボカドのアイスクリームをはさんだサンドイッチ。昔から手押し車のアイスクリーム店で販売されていた、アボカドのアイスクリームをハンバーガーのバンズのような丸いパンではさんだサンドウィッチを思い出させることから、“郷愁を誘う”という意味のキャッチコピーで販売されている。食パンよりもしっとりしたスポンジ生地とほのかに甘いアボカドアイスが奏でる上品な口あたりが人気で、コーヒーとの相性もよい。

「アボカドイニピット」。約10センチ×8センチと小ぶりで、小腹が空いたときにぴったり

 一番人気は、アボカドを使ったパフェ「アボカドラバー」(8オンス=約237ml、110ペソ=約237円。12オンス=約350ml、125ペソ=約270円)。タピオカと砕いたビスケットの上にたっぷりとオリジナルのアボカドソフトクリームをのせ、角切りのフレッシュなアボカドとクラッシュアーモンド、チアシードがトッピングされている。ベースとなるアボカドソフトクリームはアボカドの風味が感じられ、食感は軽め。一般的なパフェと比べて甘さは控えめで、トッピングに使われている素材も含めてヘルシーさが人気の理由だ。

「アボカドラバー」(写真は12オンス)は、SNS映えすることから若い層を中心に人気が高い

 2番目に人気なのが、「アボカドシェイク」(170ペソ=約365円)で、たっぷりのアボカドとアボカドソフトクリーム、牛乳などをミキサーにかけて作ったドリンク。アボカドは甘くないので、コンデンスミルクで甘みを加え、タピオカやチアシード、フラックスシード(アマニ)などをトッピングし、約470mlの大容量だが、すっきりした味わいで最後まで飽きずに飲むことができる。

「アボカドシェイク」。アボカドにコンデンスミルクをかけて食べるフィリピンの定番スイーツから着想を得て開発したメニュー

 アイスクリームやソフトクリームは、屋台のものより甘さは控えめ。フィリピン人になじみのあるスイーツを、ヘルシーかつSNS映えするようにアレンジしたことで、若い層を中心に、ビジネス層や地元住民に好評だ。

アボカドリア(Avocadoria)
Ground floor, SM Light Mall, Mandaluyong City, Metro Manila
https://www.facebook.com/avocadoriasmlight/

伝統的な洋菓子と国産アボカドを組み合わせた新スイーツ

 古い住宅街と国内有数のオフィス街が同居するマニラ首都圏パシッグ市に、2004年オープンした「リアズ・ケイクス・イン・シーズン(Lia’s Cakes in Season)」。コロナ禍で飲食店が苦戦するなか、通販でも売上を伸ばしている洋菓子店だ。

 名物は国産アボカドをふんだんに使ったケーキ。特に「アボカドケーキ」(1カット220ペソ=約473円、ホール1,480ペソ=約3,182円)は、不動の人気商品だ。アボカドを生地に練りこんだふわふわのシフォンケーキに、たっぷりのアボカド入りバタークリームをデコレーションしている。フィリピン産のアボカドは果肉がねっとりしておらず、あっさりとしている。このアボカドがバタークリームに軽さと風味を加え、シフォンケーキとの絶妙なバランスを生み出している。見た目とは違い、甘いものが苦手な人でも食べやすいのが特徴だ。

「アボカドケーキ」。香ばしいクラッシュピスタチオがトッピングしてある

 また、しっかりした甘みが特徴の「アボカドチーズケーキ」(1カット220ペソ=約473円、ホール1,580ペソ=約3,397円)は、アボカドとクリームチーズを練り合わせたレアチーズケーキで、甘酸っぱいクリームチーズの味にふわっとアボカドの香りが加わる。口に入れると濃厚さを感じるが、脂っぽさは残らずすっと溶けて食べやすい。

もともとチーズケーキはフィリピンで人気が高く、「アボカドチーズケーキ」を珍しがって購入する人も多い

 このほか、「チョコレートアボカドケーキ」(1カット220ペソ=約473円、ホール1,480ペソ=約3,182円)も、アボカドの魅力を引き出した一品だ。チョコレートケーキの甘さとクリームに練りこまれたアボカドのコクにビターチョコレートのほろ苦さがマッチしている。

「チョコレートアボカドケーキ」は、ビターなシュレッドチョコレートがアクセントになっている

 家庭でも職場でもパーティーが多いフィリピンでは、ケーキは欠かせないため、オフィスでのパーティーや、そこで働く人たちが自宅用に購入するケースが多い。コロナ禍でイートインコーナーは閉鎖しているが、ヘルシーなイメージも奏功して、テイクアウトや通販での売上が好調だ。ビタミンや良質な脂質が豊富なスーパーフードとして注目を集めるアボカド。美容や健康への意識が高まっているフィリピンで、今後も新たなアボカドスイーツが生まれていきそうだ。

リアズ・ケイクス・イン・シーズン(Lia’s Cakes in Season)
25 A&B E Capitol Drive, Pasig City, Metro Manila
https://liascakes.com

取材・文/福田美智子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1フィリピンペソ=約2.15円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。