Vol.217
近年、寿司、ラーメンなどに続いて、世界各国で注目を集めている日本食がカツカレーに代表される「揚げ物カレー」だ。トンカツなどの揚げ物料理をカレーと組み合わせるスタイルは日本で生まれたものといわれており、そのボリューム感が海外でも人気の要因になっている。
カレーのルーもまさに日本のカレーそのもので、インドカレーやタイカレーとは明らかに異なる。加えて、日本のカレーにはないトッピングも人気になっている。
前編では、アメリカのラスベガスとグアムのカツカレーを紹介する。
9種類の揚げ物を売りにした大人気のジャパニーズカレー専門店
世界最大級のカジノ都市・ラスベガス。その中心部から車で西へ10分ほどの場所にあるチャイナタウンは、アジア各国の飲食店が集まるグルメエリアだ。その一角にあるのが、2012年10月にオープンした「ゼンカレー(Zen Curry)」。現在、ラスベガス内に3店舗を構える人気のカレー専門店だ。
売りは、ジャパニーズスタイルのカレー。カレールーは、ターメリック、クローブ、シナモンなど10種類以上のスパイスを独自に調合したオリジナル。とろりとしていて、口に含むと最初に甘みを感じ、徐々に辛さが広がっていく、まさに日本の王道のカレーだ。価格はご飯のサイズによって異なり(スモール 5.75ドル=約620円、レギュラー 7.95ドル=約857円、ラージ 11.45ドル=1,234円)、ご飯の種類(白米、十六穀米、玄米)、カレーの辛さ(10段階)を選べ、トッピングも約20種類から好きなものをチョイスできる。ご飯は、当初白米だけだったが、健康志向のトレンドに合わせて玄米(無料で変更可)や十六穀米(1.5ドル=約162円)を加えたという。
トッピングで人気なのが、9種類の揚げ物だ。チキンカツ、チキンささみカツ、ロースカツ、ヒレカツ、エビフライ、豆腐カツ、串揚げ、スパムカツ、コロッケをラインナップし、特に注文率が高いのが、「チキンカツ」(3ドル=約323円)。脂分の少ないムネ肉を使ったチキンカツは、ヘルシーなイメージを抱いている人が多い。ささみカツのほうがムネ肉よりもさらにヘルシーだが、食感が少しパサつくためか、ムネ肉が圧倒的に好まれている。
また、「豆腐カツ」(3ドル=約323円)も人気のトッピングの1つ。いわゆる厚揚げではなく、豆腐にパン粉をつけて揚げたもので、サクサクの食感が思いのほかカレーとよく合う。
そのほか、トッピングで人気なのが「串揚げ5本セット」(6ドル=約646円)。しいたけ、ズッキーニ、チキン、うずらの卵、エビの串揚げを乗せ、、それぞれの素材の味とカレーが合うと好評を得ている。
オーナーの善林(ぜんばやし)隆也氏は、アメリカでカレー専門店を開業するにあたり、アメリカ人向けに味を変えることはせず、“王道の日本のカレー”で勝負したいと考えた。とはいえ、オープン当初は日本のカレーはほとんど知られていなかったため、カレーを小さなカップに入れて来店客らにサンプルを味見してもらうサービスを1年以上続け、地道に認知を広げたことで人気店へと成長した。
客層は20代からシニアまでと幅広く、アジア系が6割。残りのほとんどはアメリカ人で日本人はごくわずか。コロナ禍により9月末現在、席数を半分に減らしているが、ボリュームがあり、提供も早い揚げ物カレーの人気は衰えず、店内の食事だけでなく、売上の4割を占めるテイクアウトやデリバリーも好評だ。
5020 #1 Spring Mountain Road, Las Vegas, NV, 89146
https://www.curryzen.com/
シーフードなど6種類の揚げ物カレーが人気
アメリカ・グアムの中心地・タモン地区で2000年にオープンして以降、メニューの豊富さ、味とサービスの良さ、ボリューム、お手頃な価格が人気となっている日本食レストラン「SAKURA KITCHEN (サクラキッチン) 」。定食やラーメンなど数あるメニューの中で、ここ数年、急速に人気を高めているのが揚げ物をトッピングしたカレーだ。
一番の売れ筋商品は、脂身が少なくヘルシーなイメージの「チキンカツカレー」と「唐揚げカレー」(各10.90ドル=約1,155円)。「やわらかい鶏肉を使ったカツや唐揚げのサクサクとした食感が人気を呼んでいます」と総支配人の豊嶋裕太氏。カレーのルーはドロっとしていてパンチの効いた辛口だ。
また、「海老フライカレー」(11.90ドル=約1,261円)も、旨みたっぷりのエビとサクサクの衣がスパイシーなカレーと相性抜群で人気が高い。
さらに、常連しか知らない「裏メニュー」として、サーモンフライ定食にカレーをセットにした「サイドカレーソース・ウイズ・サーモンフライ」(11.9ドル=約1,261円)も好評。サーモンフライ以外にも、カキフライやマグロの竜田揚げの定食とのセットも用意している。
このほか、揚げ物ではなくオムライスにビーフカレーをかけた「オムレツビーフカレー」(12.90ドル=約1,367円)も用意。とろとろの卵とスパーシーなカレーが合うと、人気を博している。
オープン以来、現地住民を中心ににぎわっていたが、現在はコロナ禍の影響でテイクアウトのみ営業している。
揚げ物はもちろん、卵などとの相性もいいカレーはテイクアウトにも向いており、コロナ禍のニーズにも合っている。今後も、カツカレーをはじめとするジャパニーズスタイルのカレーが世界各国で広がりを見せていくかもしれない。
667 Marine Corps Drive Suite 103, Tamuning, Guam 96913
https://www.sakuraguam.com/
取材・文/石川葉子(海外書き人クラブ) 撮影/May Coffman
グアム 取材・文/陣内 真佐子 (海外書き人クラブ) 撮影/Kristina Yamamoto
※通貨レート 1ドル=約106円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。