Vol.218
近年、世界各地で注目を浴びているのがカツカレーなどの「揚げ物カレー」。場所が変わればトッピングや味が微妙に変わるのも特徴だ。前編のアメリカ(ラスベガスとグアム)に続き、後編ではヨーロッパからイギリスとフランスの事例を紹介する。
揚げ物カレーをイギリス人向けにアレンジ
1992年の創業以来、ロンドンを中心にイギリス全土に135店舗を展開する日本食レストランチェーンの「ワガママ(wagamama)」。ロンドンの南東に位置するカンタベリー市のメインストリートに2011年オープンしたカンタベリー店も人気店の1つだ。
同店では、ラーメンや焼きそば、丼ものなどの日本食をイギリス人向けにアレンジしたメニューを提供。それまでなじみの薄かった日本食を現地の人にも受け入れやすい味付けなどに変えることで、イギリスでの和食ブームを牽引してきた。
人気料理の1つ「チキンカツカレー」(10.75ポンド=約1,512円)は、カツカレー人気の火付け役になったと言われる不動の定番メニューだ。イギリスでは、「チキングージョン(チキンフライ)」など鶏肉のメニューになじみがあることや、“鶏肉はヘルシー”というイメージが浸透していることから、チキンカレーが好まれている。カツの衣には、イギリスの揚げ物に使われるブレッドクラム(パンくず)ではなく、日本のパン粉を使っており、繊細なサクサク感を楽しめることも人気の秘密だ。
また、イギリスにはベジタリアンも多いことから、「ヤサイカツカレー」(9.75ポンド=約1,370円)も用意。サツマイモとナスを1つずつ、バターナッツ・スクワッシュ(カボチャの一種)を2つ、それぞれパン粉で揚げてトッピングしており、甘みのある野菜がカレーによく合う。
さらに、2018年に開発したヴィーガン向けのカレー「ベーカツ」(10.75ポンド=約1,512円)も話題。しょうゆでほんのり味付けしたセイタン(グルテンミート)をパン粉で包んで揚げており、肉と遜色ないしっかりとした食感が好評だ。
カレーのルーはショウガ、ニンニク、カレー粉、ターメリックなどを丁寧に炒めて香りを出し、チキンストックとココナツミルクを加え、小麦粉でとろみをつけている。甘みを出すためにタマネギを使用しており、ルーのとろみと、カツのサクサク感、日本米のモチモチ感が絶妙なバランスでまとまっている。
客層は、20~60代と幅広く、学生やファミリー、カップルなど様々。現在は、メニューブックを廃止して、紙の使い捨てランチョンマットにメニューを印刷するなど新型コロナの感染対策を行っている。食に保守的と言われるイギリス人、そして近年増えているベジタリアンやヴィーガンにも受け入れやすいようにカツカレーをアレンジすることで、人気店へと成長を遂げている。
7-9 Longmarket, Canterbury CT1 2JS
https://www.wagamama.com/
フランスでも日本の揚げ物カレーが人気!
フランス・パリで、おしゃれなカフェや雑貨店、ブティック、ギャラリーなどが集まるマレ地区。ここに2016年12月末オープンした「ポントシュー(PONTOCHOUX)」は、日本風カレーの専門店だ。
カレーは、4種類(各13ユーロ=約1,599円)で、特に人気なのが「ポークカツカレー」だ。20種類のスパイス、チョコレートやケチャップをブレンドして作るルーは、辛さの中に深みがあり、味のバランスもよい。
このほか、「唐揚げカレー」や、素揚げした野菜をトッピングした「ベジタブルカレー」といった揚げ物カレーが人気だ。
ヨーロッパで「日本風カレー」といえばこうした「揚げ物をトッピングしたカレー」が一般的だが、同店で新規客のオーダー率が最も高いのは、「ビーフカレー」だという。「フランス料理では『牛肉の赤ワイン煮込み』が定番なので、それに近いビーフカレーで味を確かめたいと考える方が多いようです。そして、ビーフカレーをきっかけに日本のカレーのおいしさを知って、2回目以降はポークカツカレーや唐揚げカレーなどをオーダーする傾向が強いです」と、オーナーのフィリップ・ウーマン氏は語る。
出店にあたり、ウーマン氏は日本人の妻と相談を重ねて、当時パリでは珍しかった日本風のカレーで勝負することにした。「最初はみんなに笑われました。『どうして日本なの?カレーといえばインドじゃないの?』と。でも、徐々に日本のカレーのおいしさが浸透して、常連客も増えていきました」とウーマン氏は笑顔を見せる。
客層は、ファミリーやビジネス層、観光客など幅広い。誰でもフラッと立ち寄って居心地よく過ごせる「食堂」をコンセプトにしている。フランスでは珍しくコーヒーやデザートを置いていないため、長居する人は少なく回転も早いが、それでも昼から夕方まで来店客が途絶えることはない。カレーは仕込みさえしておけば、営業中のオペレーションの負荷は少なく、提供スピードが早いこともプラスに働いている。また、日本のカレーをメインにしながらも、現地のニーズに合わせたアレンジをしていることも成功の秘訣といえそうだ。
18 Rue de Pont aux Choux, Paris
https://www.instagram.com/pontochoux/?hl=ja
イギリス 取材・文/ボッティング大田 朋子(海外書き人クラブ)
フランス 取材・文/水島ちさ(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ポンド=約140円(イギリス) 1ユーロ=約123円(フランス)
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。
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