(前編)グアム発 ウベ&タロイモのスイーツが人気

グアムでウベとタロイモを使った色鮮やかなスイーツが人気上昇中だ。スーパーフードとしても注目を集める2つのイモはどんなスイーツに使われているのか。見た目にもこだわったドーナツやケーキなどを紹介する。

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Vol.223

 日本人にも観光地として人気のアメリカ・グアムで最近、スイーツの素材として注目を集めているのが、濃い紫色のイモ「ウベ」と、東南アジアにルーツを持つ薄紫色のイモ「タロイモ」だ。どちらもグアムでは昔から親しまれてきた食材だったが、さらに人気が高まった背景には近年のヘルシー志向が関係している。ウベには強い抗酸化作用を持つアントシアニンが大量に含まれており、タロイモに含まれるアラビノガラクタンには腸内フローラを整える効果があることから、どちらもスーパーフードとして評価が高まっているのだ。そこで、前編はウベ、後編はタロイモを使って人気を集めているスイーツを紹介する。

ウベの食感と風味を生かしたドーナツ&ケーキ

 グアムの繁華街から離れたのどかな住宅街に、1972年オープンした「クラウンベーカリー(Crown Bakery)」。毎日焼き上げる種類豊富なパンやケーキ、パイ、ドーナツを求めて朝5時30分の開店前から地元住民が並ぶ人気店だ。

 数あるパンやスイーツの中で売れ筋の一つとなっているのが、3年前から販売をはじめた「ウベドーナツ」(1.75ドル=約184円)だ。ウベドーナツは、ムースクリームとココナッツの2種類。ムースクリームは、小麦粉とウベの粉をミックスして焼いたドーナツの中に、ウベで作ったゼリーを詰め、ウベ味のアイシングをコーティングして、さらにウベのバタームースクリームをトッピングした、まさに“ウベ尽くし”と言える一品。バターをしっかりと泡立て、空気をたくさん含んだバタームースクリームは舌触りがよく、口どけの良い優しい味だ。

 もう一つのココナッツは、ムースクリームの代わりにから焼きしたココナッツフレークをトッピングしたもの。しっとりとしたウベ生地のドーナツにシャリシャリした食感のココナッツフレークの甘みが加わることで、ウベの味わいに深みをもたらしている。

「ウベドーナツ」のムースクリーム(左上と右下)とココナッツ(右上と左下)。見た目が鮮やかで子供からの人気も高い

 また、記念日用に人気なのが「ウベハウピアホールケーキ」(35ドル=約3,675円、3日前までの予約制)。しっとりとしたウベのシフォンケーキと、ウベを混ぜたハウピア(ココナッツミルクで作ったプリン)を何層も重ね合わせたもの。ウベの濃厚な風味を味わえ、紫色の美しいビジュアルも誕生日などにぴったりと好評を得ている。

「ウベハウピアケーキ」の大きさは9インチ(約23センチ)。周りにはココナッツフレークがトッピングされている

 このほか、「ウベゼリーロール」(15ドル=約1,575円)も人気の一品。ウベで作ったスフレ生地に、柔らかいウベのゼリーとウベを使った生クリームをたっぷり塗って巻いたもの。ウベの生クリームはコクがあるのに軽やかな口どけで、濃厚な味わいだが飽きが来ない。

ウベの生クリームをたっぷり使った「ウベゼリーロール」。スフレタイプの生地はきめが細かく、しっとりふわふわでやさしい食感

 店には老若男女問わず、幅広い世代の地元住民が来店。これまでグアムでは、ウベと米粉と酢を混ぜた蒸しパン「プト」や、ウベを使ったイモきんとん「ウベハラヤ」が伝統の味として親しまれてきたが、ウベを使った色鮮やかなドーナツやケーキが若い世代を中心に新たなファンを生んでいる。

クラウンベーカリー(Crown Bakery)
121 Route 10 Barrigada, Guam 96913
https://crownbakeryguam.com

フレンチのスイーツにウベを活用!

 グアムにおける観光の中心地の一つ、タムニン地区の商業施設内にある「パティスリー・パリスコ(Patisserie PariSco)」。日本人の父親を持つ女性オーナーのシズカ・ルブタン氏は、日本でパティシエの基礎を学んだ後、フランスの修業先で同じくパティシエのミシェル・ルブタン氏と出会って結婚。2人で2013年に同店を創業し、本場フランスのマカロンやケーキを提供し人気を集めている。

 常時20種類近くそろえるマカロンの一番人気が、ウベをたっぷり用いた「パープルマカロン」(1個2ドル=約210円)。小麦粉の代わりにウベの粉を使った生地は、外がサクッと香ばしく、中はもっちりしたやさしい食感。中に入れるガナッシュは、バタークリームとウベで作っており、口どけが良くて濃厚かつ豊かな風味が特徴だ。

手軽に食べられる「パープルマカロン」は、ウベの風味を堪能できると地元住民から人気

 また、フランスの伝統的なおやつであるシューケット(ベビーシュークリーム)にウベのクリームを入れた「パープルシューケット」(8ピース6.95ドル=約730円)も人気。クリームにウベのペーストを加え、一般的なカスタードクリームよりもよりもなめらかで甘めに仕上げている。

「パープルシューケット」。これを使ったプロフィトロールタワー(小さなシュークリームを積み上げたケーキ。「クロカンブッシュ」とも呼ばれる)は、結婚式などお祝いの席で好評
新型コロナ感染予防策のため、店内のショーケースには、個別包装されたスイーツが並ぶ

 同店のウベスイーツも幅広い世代に人気。素材としての汎用性も高く、シフォンケーキやスフレ、シュークリーム、ドーナツ、マカロンなどバリエーションは多種多様。もっちりとした食感や濃厚な味わいのほか、スーパーフードとしても注目されていることから、今後もさまざまなメニューに活用されていきそうだ。

パティスリー・パリスコ(Patisserie PariSco)
285 Farenholt Ave, Tamuning, Guam 96913
https://www.patisserieparisco.com/bakery

グアム 取材・文/陣内 真佐子 (海外書き人クラブ) 撮影/Kristina Yamamoto
※通貨レート 1ドル=約105円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。