2023/02/14 特集

外食トレンドキーワード2023(1)~「フードスタジアム」編集長 大関まなみ氏~

2022年を振り返りつつ、2023年の外食トレンドを読み解いていく全3回の企画。第1回は、飲食店・レストランのトレンドを配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム」の編集長・大関まなみ氏が登場。

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目次
新たな二極化がさらに進みそう。Z世代の集客のポイントは「多様性」
2022年は、高級業態と超低価格チェーンが台頭。ネオ大衆酒場がさらに進化&細分化
2023年はカスタマイズできるドリンクに注目。韓国業態の進化系も増加!?

新たな二極化がさらに進みそう。Z世代の集客のポイントは「多様性」

 2022年を振り返りつつ、2023年の外食トレンドを読み解いていく全3回の企画。第1回は、飲食店・レストランのトレンドを配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム」の編集長・大関まなみ氏が登場。

 2022年の業界の動きとして、高級業態と低価格業態の二極化やネオ大衆酒場の細分化などが気になったという大関氏。2023年に注目したいトレンドとして、Z世代向けのカスタマイズドリンクや進化する韓国業態などをあげた。

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「フードスタジアム」編集長 大関まなみ氏
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月より「フードスタジアム」編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。Instagram:https://www.instagram.com/manami_ohzeki/

2022年は、高級業態と超低価格チェーンが台頭。ネオ大衆酒場がさらに進化&細分化

進む二極化と高級焼き鳥業態の増加

 2022年を振り返って感じるのは、飲食業界で高単価業態と低価格業態の二極化がさらに進んだ、ということ。これまで客単価3,000~6,000円の居酒屋を経営していた飲食企業が、客単価8,000~10,000円超の新店を出し始めたことと、客単価2,000円台の新たな居酒屋チェーンの急速な台頭が要因の一つだと思います。

 前者の中で印象的だったのは、「代々木 鳥松」(東京・代々木、株式会社けむり)や「焼鳥さく田」(東京・新宿、株式会社國屋)、「焼鳥 るい家」(同、株式会社ロイヤルストレートフラッシュ)などの高級焼き鳥業態。いずれも焼き鳥をコースで提供するスタイルが好評です。後者の代表格は「コンビニより安い」といわれる「新時代」(愛知・名古屋など、株式会社ファッズ)。名物の揚げ皮串「伝串」が1本50円、「生ビール」は1杯190円の超低価格で、2021年から2年連続で30店舗以上を出店するなど勢いがあります。

「炭火串焼 けむり」などを運営する株式会社けむりが、2022年11月、東京・代々木にオープンした「代々木 鳥松」。白木のカウンターの高級感あふれる空間で、熊本県の地鶏「天草大王」を中心に厳選した銘柄鳥を使った焼き鳥をおまかせストップ制で提供する

 こうした二極化の背景には、コロナ禍による消費者心理の変化があると考えています。飲食店の休業や時短営業などにより、消費者は半ば強制的に外食から遠ざけられました。その結果、外食の頻度が減った分、今までより「ちょっといい体験」を求めるようになったといえます。飲食店もそのニーズに応えるため、客単価の取れる層をつかむために高単価業態を出店するケースが増えているのではないかと思います。その一方で、「新時代」のような低価格帯の居酒屋が歓迎されているのは、物価高や低賃金といった経済的な要因が大きいのではないでしょうか。

 また、イタリアンやフレンチといった洋食より、和食や中国料理のほうが好調で、ギョーザや焼き肉、寿司、焼き鳥など、なじみのあるメニューを売りにしている店が賑わっていたように感じます。外食の頻度が減って、「失敗したくない」という意識から、食べなれないものにチャレンジするより、“外れ”の確率が低い業態が好まれているのかもしれません。

 前述した高級焼き鳥業態は、「なじみのあるメニュー」×「ぜいたく感&特別感」という組み合わせと考えると、好調なのもうなずけます。同じ理由で、寿司業態の「スシブヤ」(東京・渋谷、株式会社スパイスワークスホールディングス)、「寿司とワイン サンチャモニカ」(東京・三軒茶屋、株式会社マイルデザイン)など「カタカナ系スシ酒場」が好調。高級店か回転寿司が中心だったマーケットに、ミドルゾーンの業態として登場し、「おしゃれに、かつカジュアルに寿司とお酒を楽しみたい」というニーズを獲得しています。

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ネオ大衆酒場の細分化

 このほか、「大衆酒場ビートル」(東京・蒲田など、株式会社プロダクトオブタイム)に代表される「ネオ大衆酒場」が増えて飽和状態になり、業態の細分化が進んできたと感じています。その一つが「ストリート酒場」。これは、「アジアのストリートフード」「ストリートにあった大衆文化」「ストリート文化が生んだクラフトビール」「ヨーロッパの酒場文化であるパブ」といった、新旧のストリートカルチャーを混ぜ合わせた業態。JR東京駅の構内にオープンした「ヌードルハウスランドリー」(株式会社プロダクトオブタイム)がその一つです。

ネオ大衆酒場のパイオニア・株式会社プロダクトオブタイムが2022年4月、JR東京駅構内に出店した「ヌードルハウスランドリー」。これまでのネオ大衆酒場に新旧のストリートカルチャーをミックスさせた店づくりが特徴で、フォーやカオソイなどアジア各国のヌードルが売り

 もう一つ、ネオ大衆酒場の派生業態が「温故知新酒場」。これは、古き良き個店酒場へのリスペクトをベースに、インスタ映えなどのトレンド要素をあえて排し、居酒屋の定番メニューと居心地の良い接客&空間で集客に成功している店。「居酒屋さいちゃん」(東京・立川、有限会社たるたるジャパン)、「居酒屋 初場所」(東京・中目黒、有限会社近藤商会)などが代表例です。

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有限会社たるたるジャパンが東京・立川に2022年4月オープンした「居酒屋さいちゃん」。「IZAKAYA NEVER DIE」を掲げて、空間づくりやメニュー設計に古き良き大衆酒場のエッセンスを盛り込んでいる

他業種の知見を生かした業態開発

 異業界から参入したり、他業種の知見を借りた店づくりを行う企業もここ数年で増えました。例えば、ファッション業界で活躍する添田慎也氏が飲食企業オーナーの今井洋氏とともに手掛けた「渋谷 半地下酒場」(東京・渋谷、合同会社今添笑店)、クリエイティブディレクターでコピーライターの小西利行氏がブランディングやPRを手掛けた「挽肉と米」(東京・吉祥寺など、株式会社挽肉と米)などがあります。全く違う業界のアイデアやノウハウを店内空間やメニューなどに生かすことで、際立った存在感を放っています。

2023年はカスタマイズできるドリンクに注目。韓国業態の進化系も増加!?

Z世代に受ける「多様性」

 2023年の飲食業界の流れやトレンドを占う上で注目したいのが、「Z世代」(1990年代半ば~2010年代生まれ)が徐々にお酒を飲む年齢になってきていることです。彼らは「とりあえずビール」といったミドル世代の画一的な飲み方は好まず、それぞれが好きなお酒を好きな順番・タイミングで飲みたいと考えています。

 そうしたニーズに合わせて、飲食業界はこれまで以上に多様性が求められるようになると思います。例えば、「茶割」(東京・目黒など、株式会社サンメレ)は、抹茶や玄米茶などのお茶10種と、ジンや焼酎などスピリッツ10種を自由に掛け合わせて100種類の「お茶割り」を提供。「自分だけの1杯」が楽しめると若い世代に人気です。種類が多すぎると「選ぶストレス」が発生しますが、ある程度絞り込まれた中からのカスタマイズは「選ぶ楽しみ」が勝り、ファンを広げられるという好例です。

東京・目黒などに店舗展開する「茶割」では、10種類のお茶と、10種類の焼酎やリキュールなどの酒類の組み合わせで100通りのお茶割りが楽しめる。アルコールの飲み方にも多様性を求めるZ世代には、こうしたカスタマイズで“選べる楽しさ”を感じさせるドリンクが人気を集めそうだという

韓国業態の進化系

 ほかに、韓国業態の進化系も増えると予想しています。若い女性を中心に韓国料理ブームが起こっていますが、現在は客単価2,000~3,000円の店が主流。今後は「韓国食堂入ル 坂上ル」(東京・恵比寿、株式会社SOME GET TOWN)のように客単価5,000~8,000円で本格的な韓国料理が楽しめるミドルゾーンの業態や、「韓国スタンド@」(東京・学芸大学、同)のようにおしゃれ&カジュアルに立ち飲みできる業態など、業態のバリエーションが増えていくのではないかと思います。

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大阪の完全予約制(コースのみ)の高級韓国料理店「韓味一」を運営する株式会社SOME GET TOWNが2019年1月、東京・恵比寿に出店した「韓国食堂入ル 坂上ル」。「韓味一」をカジュアルダウンさせた業態で、「ミシュランガイド東京2023」でビブグルマンに選ばれている
同じく株式会社SOME GET TOWNが、2022年11月、東京・学芸大学に出店した「韓国スタンド@」。本格的な韓国料理を、客単価3,000円程度で気軽に楽しめると話題を集めている

NFTを活用した店舗も

 さらに、NFT(偽造不可のデジタルデータ)の会員券を持つ人だけが利用できる店も登場していると聞きます。NFTは顧客管理がしやすいなどのメリットはありそうですが、一般に普及するのはまだまだ先。今後、飲食業界との相性を含めて、注目しています。

 いずれにしても、多様化する消費者のニーズをいかにくみ取れるかが飲食企業には求められるようになると思います。新しい発想やセンスを持った30歳以下の、いわゆる「飲食第6世代」も含めて、業界に新風を起こす存在が増えることを期待しています。

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