2022年の夏を振り返る
一皿単位の投稿が話題のグルメコミュニティサービス「SARAH」の投稿内容からわかる外食ビッグデータの提供、その分析や商品開発等の支援を行うFoodDataBankによると、2022年の夏のトレンドワードは、「季節素材」「沖縄料理」「米粉」だったと言う。
①季節素材を使った意外なメニューが好評
2022年の夏、投稿された文章の中に出現頻度が多かった季節素材は、アスパラガス、キス、トウガン、ハモ、ラッキョウ、インゲンマメ、ビーツなど。特徴的なのは、それらの素材が意外なメニューで登場してくるところ。ラッキョウしゃぶしゃぶ、ビーツパスタ、ひやし鱧出汁ラーメン、トウガンカレーといった具合。メニューの多様化、アレンジの進化といったところに消費者が感動しての投稿という状況も垣間見える。
②朝ドラが後押ししたトレンドとは?
沖縄料理では、ラフテー、沖縄そば、ゴーヤチャンプルなどの定番メニューが多く投稿された。旅行先としての人気の高さや、NHKの朝ドラが、沖縄が舞台の「ちむどんどん」だったことなどが背景にあるのだろうが、投稿内容を細かく見ると、ラフテーラーメン、ラフテーカレーなどが登場しており、こちらもメニューの多様化、アレンジの進化というキーワードが見えてくる。
③国の政策が影響したトレンドとは?
最後に米粉だが、これは小麦の価格高騰への対応策として、国内で時給可能な米の消費促進を農林水産省が推進していることも影響しているだろう。グルテンフリーが話題になって以来、米粉料理の種類は増えている。投稿を見ても、米粉シュークリーム、米粉ベーグル、米粉ロールケーキなど、さまざまなメニューがアップされている。つまりこちらもメニューの多様化、アレンジの進化が背景にあると言える。
2023年のトレンド予想
想定される市況感から予想されるトレンドは「メリハリ消費」だという。原材料の高騰の影響で、販売価格の上昇は2023年もおそらく続く。だから、普段使う日用品は価格ファーストで選ぶようになる。一方で特別な日には、価格などの基本価値とは違う情緒的価値を求めてコストをかける選択もするようになるだろうと言うのだ。「外食や中食においては、これまで以上に普段の食事(内食)と差別化されたワンランクアップな価値が重要視されると考えられる」とFoodDataBankは言う。
具体的なトレンドを予想する上で、お客様がその商品を選ぶ意味を言語化することが重要なのだそうだ。たとえば、マリトッツォのブームを受けて、イタリア菓子が人気なのだと単純に考えるのでなく、たっぷりクリームの背徳感がポイントだったのではないかと考えるのが言語化。その言語化した消費思考を、6象限の座標にしたものが上記の図①。縦軸が目的買いと衝動買い、横軸が機能(日常的)と自己実現(非日常的)なのだが、2023年の外食トレンドを考える上で重要になるのは横軸の方。「普段の食事と差別化されたワンランクアップな価値」とは、つまり、非日常的な価値にほかならないからだ。
①2度楽しめる商品がヒットする
具体的に考えてみる。図②のように、2022年投稿が増えたキーワードに「ラーメン×〆め」「最後×変わる」「変化×楽しむ」という組み合わせがある。「ラーメン×〆め」は飲酒の後に食べるラーメンではなく、ラーメンを食べた後にリゾットにしたりという「味変」を楽しんだ投稿が多いらしい。これらのキーワードの背景に見える「味変」という言葉がよく使われるようになったのは2017年頃のこと。納豆にオリーブオイルなどの意外な味変は、斬新で面白いと話題になった。新しい味変を発見しようとする「好奇心/冒険」の消費思考を刺激して、「味変」ブームは成長している。2023年もこの傾向は続くだろう。「2度楽しめる商品がヒットする」というFoodDataBankの予想は、おそらく当たりだ。
②まるごとを演出した商品がヒットする
夏にだけ、急に投稿比率が高まるキーワードというのがある。「まるごと」「みずみずしい」「映える」「芳醇」などがそれで、ほかの季節の2倍ほどの投稿がある。その筆頭が「まるごと」なのだが、この言葉は贅沢感を刺激する。桃がまるごと使われたパフェ、マンゴーをまるごと凍らせて削るかき氷、確かに豪華で贅沢だ。そのハイカロリーなイメージは背徳感も刺激する。まさに非日常的な価値、「普段の食事と差別化されたワンランクアップな価値」がそこにある。
FoodDataBankは、2023年のトレンドを「メリハリ消費傾向と予想、内食では難しい情緒価値の訴求がヒット商品に」と結論付けている。前述の「2度楽しめる商品」と「まるごとを演出した商品」は、その一例ということになる。
2022年夏のトレンドでは、メニューの多様化、アレンジの進化が、共通するキーワードだった。アレンジメニューの広がりは、ヒット商品が生まれる背景に必ず存在するのだろう。情緒価値を意識して、一工夫したアレンジメニューを考えてみてはいかがだろう。
※株式会社テンポスホールディングス刊「スマイラー」85号より転載
※取材協力:株式会社SARAH TEL:03-6455-4003
外食トレンド分析サービス「FoodDataBank」