Vol.21
18世紀イギリス、第4代サンドイッチ伯爵のジョン・モンタギューが1762年に考え出したという説があるサンドイッチ。今年誕生から250周年を迎えるサンドイッチは、今なお手軽なランチを好むロンドンっ子や外国人にも大人気だ。元祖イギリス系のサンドイッチの隆盛と、人種のるつぼロンドンで多様に進化するサンドイッチを2回にわたってリポートする。
行列が絶えないサンドイッチ店
ロンドンで日本のようなランチを摂ろうと思うと苦労する。定食メニューを置いているようなところはほとんどなく、レストランとなると必然的に値段は高い。それに加えてロンドンでは(特にビジネスマンたちは)、ランチは手軽に済ませるのが習慣になっている。結果、サンドイッチを買ってテイクアウトという選択が多くなる。
昼どきに大手サンドイッチチェーンの「イート」(EAT)や「プレタマンジェ」(Preta Manger)などに行くと、ビジネスマンやOLたちの長い行列にぶつかる。
なかでもプレタマンジェは新鮮なサンドイッチをその場で作ることで人気を得ており、設立から25年間、着実に成長してきた(日本へも出店したことがあるが残念ながら撤退)。店舗数は2011年時点で287店。ほとんどがイギリス国内だが、海外進出を加速。今年は44店の出店を計画しているが、うち20店が海外への出店で、今年の第一四半期だけでパリに2店舗出店。好調なため、さらに同じパリに2店舗出店する予定だ。また2011年は、前年比115%という過去最高レベルの売上の伸びを記録している。
店舗でのイートインやテイクアウトだけでなく、プレタマンジェが力を入れているのが、デリバリーだ。客はプレタマンジェのWebサイトで会員登録を行ない、当日10時までに注文を入れ、クレジットカードで決済。そうすれば、新鮮なできたてサンドイッチが11:30~12:30の間に、指定した時間に配達される。また朝食ミーティング向けに8:30に届けるデリバリーも行ない、サンドイッチのデリバリー需要を開拓している。
また、インターネットを利用する客のためにiPhone用アプリも提供。自分が今どこのプレタマンジェに一番近いのか検索できたり、当日の特別メニューなどを知ることができる。店舗内でも常時無料でWi-Fi接続ができるようにし、インターネットユーザーの使い勝手を向上させるなど、工夫に余念がない。
http://www.pret.com/
本家サンドイッチ伯爵が里帰りのロンドン出店!
サンドイッチは18世紀英国の第4代サンドイッチ伯爵ジョン・モンタギューが無類のカード好きで、カードの最中に食事をするのが面倒だったため、メイドにスライスした肉をはさんで持って来させたところから始まったと言われる。
そのモンタギュー家がアメリカで始めたサンドイッチ店が「アール・オブ・サンドイッチ」(EARL OF SANDWICH)だ。そして、今年がサンドイッチ生誕250年であり、それに合わせるかのように昨年、アール・オブ・サンドイッチが“故郷”のロンドンにオープンした。
サンドイッチ大激戦区のロンドンに本家の威信をかけてオープンした同店のシグネチャー(看板メニュー)サンドイッチは、何と言っても元祖サンドイッチであるジョン・モンタギュー発明の「オリジナル1762」(4.75ポンド=約585円)。ここからサンドイッチが始まったという”歴史的”な商品であり、ローストビーフ、チェダーチーズをはさんでおり、そこにホースラディッシュソースをかけて食べる。
本家の誇りあるサンドイッチは伝統と新奇をともに愛する英国で大いに受け、同店もいつも行列が絶えないサンドイッチ店となっている。
本家の参入で、イギリスのサンドイッチ市場は盛り上がりを見せ、そのほか世界各地のサンドイッチも広がっている。次回はアジア、南アメリカのサンドイッチやバーガーなど、ロンドンで展開される“新サンドイッチ”を紹介する。
38-40 Ludgate Hill, London EC4M 7DE
営業時間
月-金7:00~18:00、土・日10:00~16:00
http://www.earlofsandwich.co.uk/
取材・文/栗原伸介
※通貨レート: 2012年7月9日現在 1ポンド=123.2円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。