アメリカ発 レストランとSNSの付き合い方(前編)

“ソーシャルメディア先進国”のアメリカで、レストランがいかにSNSを活用しているかをリポート。レストラン業界で使えるソーシャルメディアと、その活用例を紹介する。

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Vol.23

全米レストラン協会(National Restaurant Association)によれば、2008年のリーマンショック以降3年間続いた消費控えの反動で、今アメリカの外食需要が伸びているという。そしてもうひとつ、同時期に次々と誕生したソーシャルメディアによって、より簡単に、素早く望みのレストランが見つかるようになり、その影響はますます大きなものとなっている。そこで今回は、2回にわたってアメリカのレストランでソーシャルメディアがいかに活用されているかをリポートしたい。

携帯電話でSNSを使って、ものの数分でレストラン選びが可能に。位置情報を使ってナビをしながら、いざ目的のレストランへ
メキシコ料理のファストフード・チェーン、「カリフォルニア・トルティーヤ」ではSNSを使ってファン向けのコンテストを開催
今や飲食店のメニューブックもデジタルの時代!? ワインリストもiPadに収めれば、好みのワインがすぐに見つかる

レストラン業界で使えるソーシャルメディアは?

ソーシャルメディアとは、個人と個人、または個人と組織、組織と組織の間で情報交換ができるメディア(Webサイト)であり、昨今それぞれの関係を“つなぐ”コミュニティとしての機能も果たしている。フェイスブック、ツイッターは有名だが、それ以外となるとあまり馴染みがないかもしれないので、はじめにごく簡単に代表的なソーシャルメディアについて触れておきたい。

写真共有サイトのピンタレストの画面。文章よりも写真の方が実は情報量が多いというのがよくわかる

フェイスブックについては今さら説明を必要としないかもしれない。約8億5000万人が使う世界最大のソーシャルメディア。中国、インドなどの5カ国を除いて世界でもっとも使われているソーシャルメディアだと言われている。ここでつながったユーザーや企業は情報交換ができるため、レストランにとっても、自店の情報を発信して客と交流できる場として強力なマーケティングツールとなりうる。

ツイッターも、アクティブなユーザー数が世界で1億4000万人以上という巨大ソーシャルメディアだ。リアルタイムで情報を発信し、受け取れるので、「今から3時間限定で○○をサービス!」といったお知らせや、店の“今の様子”を伝える情報発信に有効だ。

ピンタレストは写真共有型ソーシャルメディア。主にアメリカの女性を中心に急速な広がりを見せており、好みの写真をスクラップする感覚で使えることで人気を呼んでいる。例えば、レストランがシズル感たっぷりの料理写真をピンタレストに掲示しておけば、その画像を気に入った人が自分のページに登録。視覚的に訴えることができるため、ユーザーにより「食べたい!」と思わせることもできそうだ。

フォースクエアは位置情報を使ったソーシャルメディアで、レストランなどに「チェックイン」するとポイント(バッジ)がもらえ、ゲーム感覚で使用できる。アメリカでは「チェックイン」したユーザーにクーポンやサービスを提供するレストランも増えており、このフォースクエアも集客に活用できるソーシャルメディアとなっている。

「ホームページだけでも手いっぱい。こんなにいろいろとやっていられない」とおっしゃる方もいるかもしれない。確かにこれらすべてを一から使おうとすると気が遠くなる。しかし上手に付き合えば、顧客との結びつきを強める、強い武器となる。次からは、それぞれのソーシャルメディアの特性を生かして実際に顧客獲得や囲い込みに成功している例を見てみよう。

位置情報を使ったフォースクエアでは、今、自分の知人がどの店に「チェックイン」しているのかもわかる
画面に次々と流れるツイートはリアルタイム情報の最強手段。その瞬間、一番“旬”な情報を流すのがポイント

フェイスブック+ツイッター+ピンタレストで集客力アップ!

本部のあるアメリカ・メリーランド州を中心に米国東部に40店舗近くを展開するメキシコ料理のファストフード・フランチャイズ店「カリフォルニア・トルティーヤ」は、何かとイベントを実施して客に“無料タコス”を配ることで知られるが、今年3月からはフェイスブック、ツイッター、ピンタレストをフルに使って客との交流をさらに深めている。

「ブリートエリート」カードで無料ブリートをゲット。ソーシャルメディアを楽しんでインセンティブがもらえるのが魅力のひとつ

例えば、ツイッターを使って同店のツイッターのフォロワーの中で、その日一番優れたツイートを選出。選ばれたフォロワーには、1年間無料で同店のブリート(トルティーヤに鶏肉やチーズなどの具材を載せて巻いたメキシコ料理)が食べられる「ブリートエリート」カードを進呈するというキャンペーンを1カ月間毎日実施。

また、ピンタレストを使って写真コンテストも行なった。参加者は月末までに同店をテーマにした写真をピンタレストに投稿。そのリンクを同店のメールに送信する。そして、翌月上旬に優秀者を決定し、選ばれた優秀者には、50人分のパーティー・ケータリングチケットを進呈した。

フェイスブックでは、該当月の1日から15日までに同店のフェイスブックページに集まった「いいね!」の数によって、16日にその日1日だけ使える限定クーポンの内容を決定して、配布。例えば、「いいね!」20,000人達成で、チップスとケソ(チーズディップ)の無料クーポン、25,000人でタコス無料クーポン、30,000人達成でブリートの無料クーポンといった具合だ。

こんなふうにソーシャルメディアを活用してお店のファンが楽しく、ゲーム感覚で参加しながら、ブランドに付加価値を付けるような仕組みがうまく作られている。レストランからの一方的なメッセージでなく、レストランスタッフとお店のファンが相互に交流しながら集客するという、ソーシャルメディアの特性を活かした手法がとられているのだ。

同店のファン“エリート”が集まるパーティ。デジタルだけでなく、リアルなイベントを通して客との交流を図る
特定の日にだけ使える無料クーポンの内容がフェイスブックの「いいね!」の投票数で決まるというのも楽しい趣向
カリフォルニア・トルティーヤ(CALIFORNIA TORTILLA)
※メリーランド州を中心に約40店舗を展開
http://californiatortilla.com/
http://www.facebook.com/caltort
https://twitter.com/caltort

取材・文/栗原伸介

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