Vol.24
前編ではソーシャルメディアの概要と、キャンペーンにソーシャルメディアを効果的に取り入れているアメリカのレストランの事例を紹介した。後編では、まったくのゼロからソーシャルメディアの活用を開始したレストラン「エル・グリンコ」の取り組み、そして位置情報ソーシャルメディアを活用し、ファンの輪を広げているベーカリーカフェ「ラ・ブーランジェ」を紹介する。
ゼロからスタートし1カ月で1,500人のフォロワーを獲得
南カリフォルニアの海岸沿いに3店舗を展開するメキシコ料理店「エル・グリンゴ」(EL GRINGO)。もともと1986年にハーモサビーチにオープンした店を、現オーナーのビル・グロー氏が2001年に購入してから発展し、2004年、2006年といずれも近郊のビーチ沿いに新たに出店した。
地元密着型で固定客もいるが、今後チェーンを拡大するにはソーシャルメディアを使った集客が必要と考えたグロー氏は、ソーシャルメディア専門のコンサルタントに相談。すると、コンサルタントは常連客に目をつけ、ツイッターで彼らに日々店舗情報を発信し、エル・グリンゴのことをいつも覚えていてもらえるようにアドバイス。それを実践し始めた。
さらに、同店の一番の強みは何かを分析すると、イベント・パーティ向けにケータリングを行う"タコトラック"が特徴であることがわかった。すると、"タコトラック"を使ってフェイスブック・ファンを増やそうと、ファンの一人にスーパーボウルサンデー(アメリカのナショナルフットボールリーグ「NFL」の決勝戦の日。通常、2月の第一日曜に行われる)に500ドル相当のパーティケータリングをプレゼントする特典をつけた。
ツイッターでは「エル・グリンゴのケータリングでパーティをしよう!」というメッセージとフェイスブックのリンクを何度も流し、フェイスブックへのアクセスを増やす。これが噂を呼び、フェイスブック・ファンは数カ月間で大きく増え、売上が伸長。特にケータリングの注文が増加しているという。
ツイッターのフォロワーは初期の500人からこの戦略を打ち出してわずか2カ月以内で1,500人に増加。この結果にとても満足したグロー氏は、今度はフェイスブック上でファンのコメントコンテストを行い、さらにホームページへのアクセスを増やしている。
http://www.elgringo.com/
位置情報ソーシャルメディアは、レストランの強力なツール
様々なソーシャルメディアの中でも最近、特に注目されている位置情報ソーシャルメディアが「フォースクエア」。フォースクエアには立ち寄った店などに「チェックイン」できる機能があるが、チェックインをする理由は主に3つある。
- 1.友人に今どこで何をしているかを伝えることができる
- 2.指定の場所にチェックインすると、Web上でバッジ(ポイント)がもらえ、その場所のメイヤー(市長)になれるなどゲーム感覚の楽しみがある
- 3.チェックインした人や、よくチェックインする人には店から割引クーポンが渡されることがある
サンフランシスコを中心に20店舗展開するベーカリーカフェ「ラ・ブーランジェ」(La Boulange)は、いつもフォースクエアを使う客たちでにぎわっている。
ここではチェックインした回数によってもらえるバッジが“メイヤー”(市長)になるとすべての商品が25%引きになるという特典が魅力なのだろう。フォースクエアの同店のサイトを覗いてみると、みんなパンの写真や自分の写真を投稿するなど、ラ・ブーランジェでフォースクエアを楽しんでいる感じが伝わってくる。すると、それを見ている人は“行ってみたい”と思ったり、投稿した人(来店客)はゲーム感覚で“他の店舗にも行ってみたい”と思うようで、ラ・ブーランジェは各店舗で集客を増やしているという。
フォースクエアには、チェックインすると自動的にフェイスブックやツイッターに投稿できる機能があるため、利用することで、どんどん情報とその仲間の輪が広がり、多くの人が集まる場所になりうる。そして、それぞれが料理や店舗の様子を写真で投稿するため、店の宣伝にもつながるのだ。
ソーシャルメディアはこれからのレストランにとって、欠かすことのできないコミュニケーションツールになると言えるだろう。まずは実際に使ってみながら、自分の店にもっとも効果のあるソーシャルメディアを使ってみてはいかがだろうか。
http://laboulangebakery.com/
取材・文/栗原伸介
取材協力/アイ・モバイル株式会社
※これらの情報は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。