被災者の想いを一羽の中に込めて食で笑顔を届け、羽ばたきを願う
現地で見た被災者の笑顔に食の持つパワーを実感
大切な友人の実家が、福島県双葉町にある山野辺仁氏。その友人が震災直後から始めたボランティアの話を聞くうちに、「自分も何かしたい」という想いが募り、被災地での炊き出しを決めた。料理人仲間に声をかけ、食材と機材一式をトラックに積んで、最初は5~6人で被災地に入った。費用はすべて自費だった。
被災地の現実は想像以上だったが、そんななかでも用意した料理をうれしそうに食べる被災者たちの姿に、食が持つ力を感じたと山野辺氏は語る。「とにかく、温かくておいしい物を食べてもらうことで、"生きる力"を少しでも応援できればと思いました。食には人を元気づけるすばらしい力があると信じています」。
以来、20回以上被災地を訪れ、麻婆豆腐や中華丼、ステーキやフカヒレスープなどを振る舞ってきたという。数人で始めたボランティアは、「Power of JAPAN」という活動になり、今では参加者が80人以上になるときもある。「天厨菜館」の社長をはじめ、支配人やスタッフも山野辺氏を応援。そっと募金を渡してくれる中国人スタッフもいた。
そうしたなかから生まれたのが、今回のメニュー「みんなの想いを詰めた一品 アンコウとズワイガニとフカヒレの川俣シャモ包み」。そのキーワードは"詰める"と"羽ばたく"だ。
「被災地で接したみなさんの想いや、支援する人々の気持ちを、すべて料理に詰め込みたかった。鳥に詰め込むことで、羽ばたこうというメッセージも入れたかったのです」。
メイン食材に福島の川俣シャモを選び、福島の海産物として知られるアンコウとズワイガニ、石巻のフカヒレを詰めた。そのフカヒレを仕入れる商店も昔なじみで被災者の一人だ。
「天厨菜館」ではこのメニューをアラカルトに加え、支援の輪を広げる一助とする予定。"食べる復興支援"は今後も続いていく。