2024/06/03 特別企画

2024年4月から労働条件明示のルールが改正!採用時に明示が必要になるポイントを弁護士が解説

2024年4月から会社が労働者を雇用する際に労働条件を明示する労働条件通知書に記載が義務付けられる項目が追加されたのをご存知でしょうか。飲食店の雇用にも関係するこの法律の変更を確認して通知書の内容を見直しましょう。

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全従業員に対して「就業場所及び業務の変更の範囲」を追加明示する義務が発生

とある会社にて・・・

取締役Aさん この前面接したXさんの採用の件はどうなった?

取締役Bさん 内定を出す方向で、このとおりの労働条件通知書を渡す予定との報告を受けているよ。

取締役Aさん ちょっと待って。その労働条件通知書は以前の書式をそのまま使っているから変更が必要だよ。令和6年4月から労働条件通知書の記載事項が増えて、違反すると罰金が科せられる可能性もあるんだよ。

2024年4月から会社が労働者を雇用する際に労働条件を明示する労働条件通知書に記載が義務付けられる項目が追加されました。この法律の変更について、日本橋法律会計事務所の代表弁護士・水上卓氏に話を伺い、チェックすべき項目、盛り込むべき内容を聞きました。

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日本橋法律会計事務所 代表弁護士 水上卓(みずかみ すぐる)氏
新潟県出身。仙台の法律事務所に勤務後、東京日本橋に事務所を開設。主な取扱業務は、企業側の労務問題等の企業法務、相続、不動産事件、一般民事・家事事件等。一般社団法人日本相続学会に所属し、山梨県等後援の記念事業連携の研究大会で講演を行うなど、講演・執筆にも注力。通知税理士としても登録。

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労働条件通知書とは

会社が労働者を雇用するときには、労働者に対して労働条件を明示することが義務付けられています。その際に交付する書面が労働条件通知書です。

この労働条件通知書と似ている書面として雇用契約書があります。雇用契約書は会社と労働者との間で合意した労働契約の内容を示す書面ですが、実は法律上作成は義務付けられていません。他方、労働条件通知書は会社が労働条件明示義務を果たすために交付する書面で、法律上作成が義務付けされています。

ただし、実務上は「労働条件通知書兼雇用契約書」といった形で両者を兼ねた書面を作成することも可能です。

労働条件通知書の交付

労働条件通知書は、基本的に労働契約を締結する際に交付する必要があります。

このとき注意が必要なのが、判例上、採用内定の段階で「始期付解約権留保付労働契約」という、就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間、採用内定の取消自由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと判断した事例があります。

そのため、そのように採用内定により労働契約が成立する場合には、その採用内定時に労働条件通知書を交付して労働条件を明示することが必要になります。

また、有期労働契約の場合、同契約の締結時だけでなく、その更新時にも労働条件通知書の交付が必要になることにも注意が必要です。

従前の労働条件通知書などで明示すべき事項

労働条件通知書などで明示すべき事項としては、必ず明示が必要な事項と会社において一定の制度などを設けている場合にのみ明示が必要となる事項の2つがあります。

必ず明示が必要な事項
例えば、労働契約の期間に関する事項、就業場所、従事する業務内容、始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、賃金に関する事項、退職に関する事項などがあります。

会社において一定の制度などを設けている場合にのみ明示が必要となる事項
退職手当に関する事項、臨時に支払われる賃金や賞与などに関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償に関する事項、業務外の傷病扶助に関する事項、休職に関する事項などがあります。

なお、上記のような法律で労働者に対する明示が義務付けられているものの中には、書面の形式で明示しなければならないものと口頭で明示することで足りるものがあります。

法改正による令和6年4月以降の追加明示事項

法改正により、令和6年4月以降については全労働者と有期雇用労働者に対する新たな明示事項がそれぞれ追加されました。

➀全労働者に対する追加明示事項

全労働者については、これまでは雇い入れ直後の就業場所と業務内容についてのみ明示が義務付けられていました。

令和6年4月以降は、就業場所や業務内容の変更の範囲、すなわち将来人事異動や配置転換などによって就業場所や従事する業務内容が変わる可能性がある場合には、労働契約締結時や更新時などにその変わる可能性がある範囲についても明示しなければならなくなりました。

②有期雇用労働者に対する追加明示事項

有期雇用労働者については、当該労働契約の更新に上限が設けられているかどうかや、更新に上限が設けられている場合はその内容を明示する必要があります。後者の内容とは、例えば契約の更新は「最大5回までである」、「通算5年までである」などです。

また、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時に、同申込みができること、その申込みができるタイミング、無期転換後の労働条件を明示することが必要になりました。無期転換ルールとは、同一の企業で働く有期雇用労働者が5年を超えて勤務している場合に、当該労働者が希望すれば期間の定めのない労働契約に転換するルールです。

その他改正

以上のほか、有期雇用労働者について、契約更新の上限を新たに設けたり、明示した更新上限を短縮したりする場合には、労働者に事前に説明をすることが必要になりました。

また、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際に明示すべき事項が追加され、求職者等に対して、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期雇用契約を更新する場合の基準の明示が必要になりました。

最後に

会社が法律で義務付けられた労働条件の明示義務に違反した場合、30万円以下の罰金に処される可能性があります。

今回の令和6年4月以降の法改正に対応していない場合にもこの違反に当たる可能性があるため、これまで使用していた労働条件通知書などの書面を見直してみましょう。

取材協力:「日本橋法律会計事務所」
東京都中央区日本橋富沢町7 14岡島ビル8階

スマイラー99号(2024年4月)より転載

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