2012/11/27 特集

ぐるなびシェフ BEST OF MENU 2012 No.1メニューへの道のり

日本最大級の料理コンテスト「ぐるなびシェフ BEST OF MENU 2012」。テーマは“ニッポンの恵み 〜素材再発見〜”。料理部門とデザート部門それぞれの優勝者の声とともに、決勝審査会・表彰式の様子をリポート。

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料理部門 優勝作品 比内地鶏の巣~新きりたんぽ~

秋田の郷土料理「きりたんぽ鍋」をアレンジ。熱した陶器鍋に、炊いたあきたこまちを油で揚げた"新きりたんぽ"と、香ばしく焼いた比内地鶏、野菜、比内地鶏の半熟卵を重ね入れ、鳥の巣に見立てた。ここに焼いた鶏ガラを3時間煮込んだスープを注ぎ、素材の風味と旨味を引き出す。半熟卵には、ブラックペッパーとりんごのすり下ろしをバターで固めたものを隠し入れ、和から洋への味の変化が楽しめる。

洋食ボストン 川崎 祐介氏
小学生のとき、共働きの母の負担を減らすために食事を作り始めたことが、料理人を志すきっかけとなる。ハンバーグやオムライスなど、日本人に愛され続けてきた"洋食"にこだわり、高校時代にハンバーグレストランでアルバイト。卒業後、老舗の洋食屋などで修業を積む。現在、「洋食ボストン(昭和町 BOSTON 蒲生店)」料理長。

決勝審査員評

「きりたんぽ鍋」を解体し、再構築しているが、鶏や野菜などすべての食材の旨味がバラバラにならずに縦につながって、深い味わいを生んでいる。スープが絶妙で、食感の違う素材が混じり合うおもしろさもあり、しみじみとおいしい料理だ。味の段階的な変化も興味深く、バランスもいい。日本の郷土料理のなかにもグローバリズムがあることを感じさせてくれる。

秋田食材の「再発見」が応募の決意につながる

まず最初に私自身が、秋田の食材の豊かさを再発見したこと、それが応募のきっかけになりました。実は前回も出品したのですが、書類審査で落選。自分の甘さを思い知らされ、今回は応募の決心がつかなかったのです。

そんな私の背中を押してくれたのが、秋田の食材。協賛賞に秋田賞があると聞き、興味がわいて調べてみました。すると、名産や郷土料理として、酒や米はもちろん、ハタハタや比内地鶏、きりたんぽ、しょっつる、数多くの野菜、きのこ、果物などが出てきて、日本が誇る食材が豊富なことに驚かされたのです。今まで秋田のことはほとんど知らずに料理をしていましたが、これだけ魅力的な素材があれば、今の私にも何かできるかもしれないと思ったのです。

私は、イタリアンでもフレンチでもなく「洋食屋」の料理人。料理の技術や知識はまだまだですが、おいしいものを作る自信はあります。自分なりの料理のテーマは"置き換え"。既存の料理を、何かに置き換えることで、新しい味わいを引き出すことです。今回、"置き換え"の対象として注目したのは、秋田の郷土料理「きりたんぽ鍋」。本来のきりたんぽは、米を棒に巻いて焼くのですが、私はあえて揚げておこげにすることで、きりたんぽの風情を残しながら違う食感を楽しめる、まったく新しい料理に仕上げようと試みました。鍋を鳥の巣に見立て、最終的には比内地鶏の半熟卵を使い、糸とうがらし・白髪ネギ・りんごの皮の細切りを飾りました。味のバランスがよくなり、見た目のインパクトも出せたと思います。

香ばしさを引き出すため、比内地鶏を網焼き。一瞬の判断が仕上がりを決める

二次審査の講評を基に万全の体制で決勝へ

一次の書類審査をパスしたときはうれしくて、それだけで満足していました。しかし、二次の試食審査のとき、審査員に最高の状態でお出しできず、「おいしいのに、もったいない」と指摘され、悔しさが募りました。慣れない厨房にとまどい、時間が足りなくなってしまったことも一因でしたが、食べる瞬間のことを考えて提供できなかったのは、料理人としての詰めの甘さが原因です。反省と後悔だけが残りましたが、決勝進出の知らせを受けてからは、店舗の厨房をわざと狭く区切って調理したり、あらゆるシミュレーションを行いました。全力を出すこと、悔いを残さないこと、それだけを考えていましたね。

優勝の瞬間は、頭が真っ白。母の顔、家族の姿、修業がつらくて料理人をやめようと思ったことなどが、次々と浮かんできて言葉に詰まりました。私にとって、料理は人生そのものです。料理があるから、今の自分がある。「BEST OF MENU」はそのことを、あらためて教えてくれたのだと思います。

洋食ボストン(昭和町 BOSTON 蒲生店)
http://r.gnavi.co.jp/ka8d101/
大阪市内で6店舗を展開するハンバーグレストラン「BOSTON」の1店舗として、2009年12月、蒲生四丁目駅そばにオープン。長屋をリノベーションした店内は、昭和レトロの雰囲気が漂い、様々な本格洋食が楽しめる。

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