各国発「たい焼きパフェ」が海外で人気!前編

日本人にとってソウルフードの一つと言える「たい焼き」。近年、世界各国でたい焼きにソフトクリームなどをトッピングするメニューが人気だ。前編では、マレーシアとペルーの事例を紹介する。

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更新日:2022.9.30

Vol.161

目次
本場・日本の味と「カワイイ」見た目にこだわった「たい焼きパフェ」
月替わりのソフトクリームや限定商品で人気に

 日本人にとってソウルフードの一つともいえる「たい焼き」。鯛の焼き型のデザインや生地の厚さ、あんこの量など、店によって特徴は様々だ。そんなたい焼きが世界に飛び出し、ソフトクリームをトッピングするなど独自のアレンジを加えられて人気を呼んでいる。

 前編では、日本から比較的近い東南アジアのマレーシアと、地球の裏側、南米・ペルーの「TAIYAKI」を紹介する。

【後編はこちら】
各国発「たい焼きパフェ」が海外で人気!後編

ソフトクリームがたい焼きの口の上にトッピングされた、日本人には驚きのビジュアル(左奥)。日本のオーソドックスなたい焼き(手前)も販売しており、人気は高い
日本のたい焼きとは形が異なるため、当然、焼き型も現地のオリジナル。焼き上がりまでの工程を客が見えるようにしている店も多い
ペルーの店では、ソフトクリームなどを入れるため、たい焼きの口から胴体にかけて、生地の中を空洞にしている。一方、しっぽには日本のたい焼きと同様、生地の中に粒あんやカスタードなどが詰まっている

本場・日本の味と「カワイイ」見た目にこだわった「たい焼きパフェ」

 マレーシアの首都・クアラルンプール。大型のウォーターパークや5つ星リゾートホテルに隣接する複合商業施設「サンウェイピラミッド」は、地元の住民や観光客など様々な人々が集う人気のスポット。ここに2016年12月オープンしたのが、たい焼き店「楽しいデザート(Tanoshii Dezato)」だ。たい焼きが「日本のスイーツ」であることをアピールするため店名に“楽しい”という日本語を使い、「デザート」もローマ字風に表記している。

人気ナンバーワンの組み合わせ「粒あん×抹茶ソフトクリーム×イチゴ」の「たい焼きパフェ」。ほろ苦くさっぱりした抹茶のソフトクリームに、甘い粒あんがよく合う。甘酸っぱいイチゴは味だけでなく、見た目でもアクセントに

 常夏のマレーシアで人気の看板メニューが「たい焼きパフェ」(RM12.5=約346円)。大きく開いたたい焼きの口の上にソフトクリームがのった独特のビジュアルが特徴。注文する際は、①たい焼きの中身(粒あん、カスタード、抹茶、チョコレート、スイートコーン、ヤムイモ<ヤマイモの仲間>)、②ソフトクリームのフレーバー(抹茶、黒ゴマ、北海道バニラ、チョコレート、マンゴー)、③トッピングするフルーツ(イチゴ、バナナ、モモ、ブドウ)を選び、最後に、④提供スタイル(たい焼きの上にソフトクリームをのせる「Kimono」か、紙カップの中にたい焼きとソフトクリームを並べて入れる「カップ」)を決める。アツアツの生地と、冷たいソフトクリームやフルーツの相性が絶妙で、様々な組み合わせが楽しめ、見た目もユニークと好評だ。

 日本の味に近づけるため、生地に使うミックス粉や粒あんのほか、抹茶のソフトクリームなども日本からの輸入品を使用。日本の粒あんは、現地でデザートに使われる小豆よりもかなり甘いが、「日本の味」として受け入れられているという。

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 一番人気の組み合わせは、「粒あん×抹茶ソフトクリーム×イチゴ」。親日国のマレーシアでは、粒あんと抹茶の相性のよさが、すでに広く知られているのも注文率が高い理由だ。また、6種類あるたい焼きの中身のなかでマレーシアらしさを感じるのが「スイートコーン」と「ヤムイモ」。「スイートコーン」は、トウモロコシをすりつぶして作ったものでコーン風味のカスタードクリームといった味わい。一方、ペースト状にした「ヤムイモ」は、クリームのような舌触りとイモ特有の香りが特徴だ。

 オープン当初は、たい焼きの上にアイスクリームを丸く盛りつけるスタイルだったが、巻いた形のソフトクリームに変えたところ、“写真映えする”と、より注目が集まるように。平日は、20代のビジネス層や学校帰りの学生が客層の中心。週末には子ども連れのファミリーが増え、物珍しさから購入する観光客も少なくない。日本のオーソドックスな「たい焼き」(RM7.9=約219円)も用意しているが、オーダーの8割以上が「たい焼きパフェ」で、来店の目的となる名物となっている。

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「粒あん×マンゴーソフトクリーム×イチゴ」の組み合わせ。マンゴーソフトクリームは、甘すぎず、さっぱりとした味わい
「カップ」で提供する場合は、たい焼きの頭が下になるように立て、ソフトクリームとフルーツが添えられる。写真は、「カスタード×チョコレートソフトクリーム×バナナ」。
Tanoshii Dezato
LG2, Sunway Pyramid, 3, Jalan PJS 11/15, Bandar Sunway, 46150 Petaling Jaya, Selangor
https://www.facebook.com/TanoshiiDezato

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月替わりのソフトクリームや限定商品で人気に

 ペルーの首都リマ市のリンセ区は、オフィスや学校に加え、スーパーマーケットや個人商店も多い活気のあるエリア。2017年12月、その一角にペルー初のたい焼きソフトクリームの店「クモ・ソフト・サーブ(Kumo Soft Serve)」がオープンした。もともとペルーでは、普通のたい焼き店もあったが、オーナーのマグダ・ペレス氏は、アメリカで「たい焼きパフェ」が人気になっていることをインターネットで知り、ペルーでの成功を直感して店を開いたという。

ココナッツミルクとシナモンを使ったソフトクリーム「ココネラ」に、キャラメルソースをかけ、スティックビスケットをトッピング。キャラメルソースのほんのりとした塩味が甘いソフトクリームによく合う

 看板の「タイヤキ」(12.5ソレス=約411円)は、たい焼きの口から胴体まで中が空洞になっており、そこにソフトクリームをたっぷりと入れるスタイル。普通のたい焼きでは胴体にあんこなどが入っているが、同店では尻尾の部分にしか入っていない。その尻尾の中身は、カスタードクリームかマンハール・ブランコと呼ばれる甘いミルククリームの2種類から選べる。上にのせるソフトクリームは月替わりで、バニラ、チョコレート、抹茶、黒ゴマの定番の中から2種類。そこに、ペルーで採れるフルーツなどを使った新作2種が毎月加わる。例えば、アヒ・リモと呼ばれるペルー産トウガラシをマンゴーと合わせた「スパイシー・マンゴー」や、インカ帝国の時代から食べられているというアカテツ科のフルーツで、栗とサツマイモを合わせたような味のルクマと、さわやかな酸味と上品な甘さが特徴の熱帯フルーツ・チェリモヤを組み合わせた「ラ・ルチ」など、ペルーならではのフレーバーが人気を呼んでいる。

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 最後に、トッピングをスティック状のビスケットや削ったココナッツ、砕いたオレオクッキーなど7種類から2つ選び、ソフトクリームにかけるソースをチョコレート、イチゴ、練乳、キャラメルの4種類から選んで完成。

 特に人気なのは、「カスタードクリーム×チョコレートソフトクリーム×チョコレートソース×削ったココナッツ」の組み合わせ。甘さ控えめのソフトクリームに、甘いチョコレートソースが加わることで、甘みの濃淡を楽しめ、ココナッツの食感もアクセントになっている。

 ちなみにソフトクリームは、一般的なコーン「コノ」(8.5ソレス=約279円)や紙カップ「バソ」(10.5ソレス=約345円)でも販売している。

 客層は、子供からシニアまで幅広く、8割が女性。ソフトクリームの種類を月替わりにするだけでなく、ドリンクと普通のたい焼きをセットにした「ソ・コール」(24ソレス=約789円)など、ソフトクリームにとらわれない期間限定商品も提供。リピーターを飽きさせない工夫を重ね、1週間に800~900人が来客するという。日本が生んだ和のスイーツ「たい焼き」が世界に飛び出し、ソフトクリームをのせた「たい焼きパフェ」に進化。さらに、その国ならではのフルーツを使ったり、月替わりメニューが登場するなど、バリエーションは増え続けている。

不動の人気を誇る、チョコレートのソフトクリーム。地元・ペルー産カカオ60%のマイルドなチョコレートを使用。写真は、チョコレートスティックにチョコレートソース、削ったホワイトチョコレートをかけた“チョコレート三昧”の組み合わせ
「クモ・ソフト・サーブ」のオーナーであり、英語教師でもあるマグダ・ペレス氏。店名は “空に広がる雲をかき分け、その先へ冒険しよう”という思いから、「たい焼き」の祖国・日本へのリスペクトも込めて、日本語の「雲」を入れて名付けた
クモ・ソフト・サーブ(Kumo Soft Serve)
José de la Torre Ugarte 162 Lince, Lima
https://www.facebook.com/kumosoftserve/

マレーシア 取材・文/和田麻紀子(海外書き人クラブ)
ペルー 取材・文/原田慶子(海外書き人クラブ)
※通貨レート RM1(1リンギット・マレーシア)=約27.7円 1ソル(複数形はソレス)=約32.9円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。

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