※スマイラー99号(2024年4月)より転載
神戸牛という牛はいない
「私は関東育ちなんですが、神戸牛のことなどよく知らずに、神戸牛って高いだけでたいしておいしくないよなんて、若いころは思ってました。昔に食べた、神戸牛と看板を出していた屋台の味のせいです。ところが、『神戸牛ダイア』で食べたら全然違う。今まで食べたどの和牛と比べても明確に差がある。本物はこんなにうまいのかと感動しました。いまは、この感動をたくさん人にぜひ体験してほしいと思うから、ここで働いていると言ってもいい。私と同じような勘違いをしている関東の人には特に食べてほしい」と語るのは、現在東京エリア責任者を務める東野 秀明 氏。
実は、神戸牛という牛はいない。但馬牛の中で、肉質検査後、日本一厳しいと言われる審査基準を満たしたものだけが神戸牛と認定される。但馬牛は、神戸牛だけでなく松坂牛、近江牛など名高いブランド牛の素牛となるなど評価の高い血統牛なのだが、その血統が三代以上続く但馬牛でないと、神戸牛とは認められないという。
「だから神戸牛は、希少性が高いんです。和牛全体の0.06%程度しか流通しない。しかも、肉質等級の検査後に判断されるのだから、おいしいに決まってます。そりゃ高くなりますよね」(東野氏)。
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浅草で見つけた商機とは?
「神戸牛ダイア」を運営する吉祥吉グループは、チャンピオン神戸牛などを一頭買いで仕入れ、最高品質の神戸牛をリーズナブルに提供することで知られる。その美味しさは、食通たちをうならせてきた。「神戸牛ダイア」は、そんな吉祥吉グループが、満を持して東京進出を狙ったブランド。2022年7月に芝大門店、8月に日本橋室町店を、まずはオープンした。ところが、思っていたほどうまくはいかなかった。現在は、日本橋室町店は継続しているが、芝大門店は閉めてしまっている。「神戸や大阪で培ったノウハウは、東京では通じないのか、いわゆるご当地ではない場所では、別のやり方を考えなければいけないのかと、悩みました」。
そんなとき、市場調査を兼ねて、吉祥吉グループ会長の赤木 清美 氏と浅草を訪れたときに、ひとつの光明を見出す。「とにかく人の多さと活気に圧倒されました。外国人観光客の多さにも驚きました。ここに出店するなら、インバウンドを意識しないわけにはいかない。そう考えると、外国人にとっては、日本と言うだけで神戸牛のご当地になるのではないかと思い当たりました。それなら神戸や大阪のノウハウを生かせる可能性もある。日本人をターゲットから外して、外国人だけを狙おうと考えたわけではありませんが、ここにひとつ商機があるなとは思いました」。
思い切った行動力と決断力で吉祥吉グループを大きくしたとも言われる赤木氏は、即座に浅草出店を決める。自ら物件を探し、元はブティックだったという建物を見つける。そして、その店の内装だけを変えて、わずか1週間後に浅草1号店をオープンさせたという。2022年の12月のことだ。芝大門店、日本橋室町店のオープンから半年も経っていない。そのスピード感がよくわかる。
浅草1号店は、ほどなく思惑通りの繁盛店になった。そして現在、浅草エリアに8店舗を展開している。「お店を集中展開すると、歩いている人が『あ、また神戸牛の店だ』となるので、気になって覚えてもらいやすくなります。そしてそれが安心感につながり、入店してもらいやすくもなります。いわゆるドミナント戦略。看板を派手に目立つようにして、覚えてもらいやすくしているのは、そのためです」。
東野氏は、外国人向けの施策を特にやっているわけではないと語るが、このドミナント戦略は外国人観光客にも効果を発揮しているであろうことは、想像できる。取材時も開店前にもかかわらず、看板を見ながら「Oh, Kobe beef!」と言いながら、同行者となにやら話している外国人を何組か目撃した。
神戸牛が浅草名物になる!?
希少な神戸牛は高い。最高級と言われる「シャトーブリアン」の中でも、さらに上質な部位を厳選した「エンペラーブリアン」と呼ばれるステーキを、「神戸牛ダイア」で食べると、220gで8万8千円。この高価なステーキが、飛ぶようにとは言わないが、そこそこ売れるのだという。「私も最初は、美味しい神戸牛とはいえ、こんな価格で売れるのだろうかと少し心配でした。私は「神戸牛ダイア」に入社する前、焼肉屋をやっていたんです。そのときは、おいしいものを安くボリュームたっぷりに提供しないとお客さまは満足してくれないと思ってましたから」。
浅草1号店のオープン後、東野氏の、その価値観は完全に覆される。「神戸牛は、特に外国人にとっては、いわばルイ・ヴィトンやエルメスのような憧れのブランドなんですね。日本人が一生に一度でいいから、パリでヴィトンのバッグを買いたいと夢見るのと同様に、日本で神戸牛を食べたいと思って来日する。だから求めるのはコストパフォーマンスじゃなくて、今まで食べたことないレベルのおいしさなんです。私も感動した「神戸牛ダイア」の神戸牛なら満足してもらえる。価格の心配は、まったく必要ありませんでした」。
とはいえ、ターゲットは日本人も含め幅広く対応したいと、例えば神戸牛の赤身肉を使った1,900円のステーキ重などのメニューも用意している。「外国人の富裕層だけ狙っているわけではありません。日本人にも神戸牛を食べてほしいですしね。気軽に食べられるよう、テイクアウトして食べ歩きできるようなメニューもあります。一部の店舗ですが、神戸牛ラーメンなども提供しています」。
現在、外国人がお客様の8割を超える。しかし、浅草観光に来たカップルなど日本人も増えてきた。外国人人気が逆に日本人の興味をそそるということはよくある。「浅草では、もっと出店していこうと考えています。今の形にこだわらず、お好み焼きやもんじゃの店などもありかなとも思っています。神戸牛を使ったメニューが作れれば、蕎麦屋などを考えてもいいと思います。一方で、上野と渋谷にも出店をしたのですが、全国の観光地などでの展開も狙っています。インバウンドが増えている今なら、さまざまな事業者とパートナーシップを結んで、フランチャイズ的な展開もできるのではないかと、赤木会長も考えているようです」。
浅草1号店は、9坪2フロアの小さな店だが、1カ月で1,900万円以上を売り上げたこともあるという。この数字から、浅草での神戸牛の可能性が、想像以上に大きいことが垣間見える。
近い将来、神戸牛が浅草名物として知られるようになる日が来るかもしれない。
東京都台東区浅草1-33-2
https://r.gnavi.co.jp/jcw8k7cs0000/map/
スマイラー99号(2024年4月)より転載
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