※スマイラー103号(2024年8月)より転載
1号店は、創業者の魂を感じる特別な場所
――いろんなブランドの店に行かれたと思うのですが、総じて飲食店の魂みたいなものを感じられる店がたくさんあったということですか?
1号店が創業された時はまだ個人事業で、すごく狭小な店舗だったり、駅から遠い辺鄙(へんぴ)な場所にあったり、階段しか無いような雑居ビルの中にポツリとあったりすることが多いですよね。だって都心の一等地にあるような商業施設の中にいきなり1号店をドカンと出せる個人なんていないわけですから。
どんなお店でも最初は1号店で長い時間をかけて成功して、やがて法人になり、お店も徐々に増えていく。でも、最初の1号店は、狭いけど大切にして残しておきたいという創業者のお考えってありますよね。そういうお店を探訪した時には創業者の魂を感じられる気がします。
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――1番感動したというか、魂を揺さぶられた1号店はどこですか?
「びっくりドンキー」ですね。もともとは岩手県の盛岡にある「ベル」というハンバーグレストランなんです。
その「ベル」は当時岩手に6店舗ありました。そんな中、創業者の庄司さんが新たに始めたのが札幌・西野の「びっくりドンキー」です。
「びっくりドンキー」は人気店となり今では全国区ですが、盛岡の「ベル」は今でも1店舗だけ残されてるんです。メニューは「びっくりドンキー」と同じですが、看板は「ベル」、箸はし袋にもベルと印刷してあります。1店舗だけ違うブランドとしてやっていくのはコストもかかるでしょうし、チェーン店の効率化に反していると思うのですが、ここは創業時の想いや魂を残すためのお店なのだと思います。
――「ベル」が残した魂、それはどういったところに現れているのですか?
例えば創業時の写真が階段の踊り場に飾ってあったりします。庄司社長が自ら厨房に立ち、ハンバーグを作っている写真がありますね。また、当時のメニュー表も飾ってあります。一時期、以前にベルの店長をしていた方が、退職後も期間限定でベルのドアマンとして働いてくれていたこともありました。そんな歴史を経て、今の「びっくりドンキー」があることを教えてくれる唯一のお店、それが盛岡の「ベル」だと思いますね。
――「びっくりドンキー」の歴史を知っていただく意味で、その存在は大きいですね?
そうですね。歴史をお客様に楽しんでいただく。それがブランド化につながっているように思います。みんなに愛されるお店のルーツは聖地のようになって、全国から「びっくりドンキー」のファンが集まってきます。ファンは「びっくりドンキー」の歴史に触れることで、より深いファンになるんだと思います。
――飲食店のブランドにはそういった歴史観が1番大切なのでしょうか?
たとえば、アメリカの「マクドナルド」や「スターバックス」(以降スタバ)の1号店。これらは観光地になっています。歴史的なスポットとして観光ガイドブックにも載っています。世界中何十億人の人が知っている飲食店の1号店ですから、めちゃくちゃ集客力があるし、とにかく人が集まってきます。シアトルにある「スタバ」1号店、コーヒーは近所の「スタバ」と全く同じ味なのですが(笑)、創業のストーリーや歴史を楽しめます。そんな感じでチェーン店を巡っています。
チェーン店は個人店と比較すると匿名性が高く、マニュアル接客で血が通っていないように思われがちですよね。おいしい物を食べた時でも、チェーン店「なのに」おいしい、なんて言われたりと、何かとマウンティングされがちだと思うのです。
――食べることにあまりこだわりのない人が行く店のような?
そうですね、消極的に行くお店みたいな。でも、中の人が動いていることは、個人店もチェーン店も同じですよね。確かに店舗数が増えてくると、コピーのように感じられることもあります。だからこそチェーン店の1号店に行き、お店のストーリーに触れたり、創業者の情熱を感じたりすると温かい気持ちになって、ファンになることがあると思うんです。ファストフードであっても、そこには決してファストじゃない物語があるというか。
――飲食店で一番大切なのはお客様の期待に応えていくこと、それを繰り返していくことですね?
そうですね。店を作ってもすぐに閉めるようなことをくり返すと、そのブランドのファンは付きにくいと思います。流行り物に飛びついて、ネットでの話題性ばかりを気にして作ったお店は、長い歴史と強固なブランドストーリーを持つ飲食店とは全く異質な存在だと思いますね。瞬間最大風速を狙うマーケティングもあるので、それが悪いことだとは思いませんが。
――夫婦で1店舗経営しておられる居酒屋とチェーン店とでは全く違う経営方針だと思いますが、そういったお店に魅力を感じますか?
いや、全く別モノではないと思いますよ。個人の店も長年やっていれば必ずストーリーがあると思うんです。その店なりの思いや創意工夫、大変な時期があって今に至ってるんだと思います。店主が何を目指してどういう価値を提供したいか、そういうことの積み重ねがストーリーを作っていくのは個人店もチェーン店も一緒だと思いますね。
――飲食店のブランドとは、自然発生的にできるものではないということですね?
自然発生に見えて、実はそうじゃないと思います。ブランドとは、すごく手間暇をかけて育てあげるものだと思います。信頼は得るのは難しいけど失うのは一瞬って言いますけど、ブランドもそれと一緒だと思います。強いブランドは、一朝一夕で作れるものではなく、ビジョンを持って、こつこつと毎日積み重ねて、しっかり発信してきたものなのだと思います。
また、ブランドは高級店にのみ宿るというものではありません。むしろ、安いお店ほどお店とお客様との距離が近く、信頼関係が重要になってくると思います。安いからといって原価をケチるだけの『安かろう悪かろう』ではなく、お店の人が一流の味やサービスを知った上で、それをカジュアル化して提供してくれると、お客様は喜びますよね。
安価でもしっかりと「本物」を見せてくれたら、お客様は必ずシビれます。それは一体どういうポイントなのか? そこがブランドの核になると思いますし、それを見つけられるとお店は流行ると思います。
karatechno@gmail.com
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