2013/08/19 繁盛の法則

独自の麺と味噌で差別化する味噌煮込みうどん専門店とは

愛知の味にこだわる「味噌煮込罠(みそにこみん)」に学ぶ‐「おいしい味噌煮込みうどんで、お客様にはまってもらいたい」という味噌煮込みうどんの専門店。‐繁盛盛の法則

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味噌煮込罠(みそにこみん)

大通りから入った路地沿いに出店。店舗規模は10坪14席

Key Point

  1. 独自に工夫した味噌煮込みうどんを開発
  2. 夜は居酒屋風に営業
  3. 夏季は自家製麺の冷たいきしめんを提供

数少ない味噌煮込みうどんの専門店として2007年創業

「味噌煮込罠(みそにこみん)」という店名は、「おいしい味噌煮込みうどんで、お客様にはまってもらえるように」という思いを込めたもの。2007年1月のオープンで、店主の岡田望氏は愛知・刈谷市出身。大学進学時に上京したが、都内にはおいしい味噌煮込みうどんを出す店が少ないと実感し、自身で同店を創業した。

同店の味噌煮込みうどんは、しっかりとした歯ごたえのある麺と、深みのある味噌味のつゆが独特で、1度食べると、まさに罠にはまったように、また食べたくなるような商品である。基本の「味噌煮込みうどん」800円のほか、キムチを入れた「キムチ味噌煮込みうどん」(900円)、味噌味をベースにトマトソースを加え、チーズをのせた「イタリアン味噌煮込みうどん」(1000円)、カレー風スパイスを入れた「インディアン味噌煮込みうどん」(900円)をそろえている。昼はお替り自由のご飯とお新香が付き、夜は「酒と味噌煮込み」と謳うように、酒類や酒肴もそろえている。

岡田氏の実家は、愛知・安城市でそばうどん店を経営。うどん、そば、味噌煮込みうどん、きしめん、夏は冷麦も加わり、4~5種の麺を自家製麺している。創業者は岡田氏の祖父で、今は岡田氏の弟も同店に入っている。

岡田氏は1977年2月生まれで、当初は医療関係の仕事を志し、東京の大学卒業後は看護師として4年間、病院に勤務した。しかし、医療現場の理想と現実の違いを感じ、別の道に進もうと考えるようになった。その際、自分でも食べたくなるような味噌煮込みうどん専門店がおもしろいのではないかと発想し、基礎的な技術は実家で学び、その後、他店を食べ歩いたり、独自に試作を繰り返して商品開発を進めた。同時に物件探しを開始し、最終的にはネットで見つけた現物件に決めた。本郷三丁目駅から徒歩3分ほどだが、大通りからやや入った路地沿いにあり、以前は喫茶店だった物件だ。1階のカウンターや、シンク、製氷機などは残しながら、収納棚を一部撤去し、出汁を取ったり、うどんを下茹でしたりする大口のガスコンロや、土鍋を一つひとつ加熱する小口のガスコンロ5口を装備。客席は、カウンター4席と2人がけテーブル5卓の計14席を設けた。また、2階の3坪弱のスペースを製麺室とし、製麺機を導入して自家製麺を行う。味噌煮込みうどん専用の麺は、味噌味のつゆで煮込んでも塩辛くならず、しっかりした歯ごたえが残るように、塩を入れずに真水で打っている。

夜は酒類とともに、居酒屋風の酒肴も提供する。もちもちした食感の「自家製ごま豆腐」(400円)、牛スジを3種の味噌で煮込んだ「どて煮」(600円)。「味噌煮込みうどん」(800円)は、昼はご飯、お新香付きで提供し、夜はハーフサイズも用意。

季節差を緩和するため、夏季は冷たいきしめんを提供

出汁は、羅臼昆布、日高昆布、サバやカツオの削り節などで取る。味の決め手の味噌ベースは、愛知・岡崎産の八丁味噌、刈谷産の赤味噌、白味噌をブレンドし、砂糖2種、みりん、ガラスープを加えて加熱する。1回に200人前を仕込むが、冬は2日ほどで使い切ってしまう。オーダーが入ると、出汁を土鍋に入れて味噌ベースを加え、鶏肉(大山地鶏)、かまぼこ、油揚げなどを入れて加熱し、10秒ほど下茹でした麺を加えて4~5分煮込む。仕上げに生玉子、長ネギを入れたら、火を通し過ぎない状態で提供する。麺を下茹ですることにより、打ち粉が落ち、麺が自然にほぐれて温度も上がるので、きれいに仕上がる。柔らかめの麺を希望する客や年配客には下茹で時間をやや長くし、硬めの麺を好む客には生麺をそのまま土鍋に入れることもある。細やかな工夫を重ねた味噌煮込みうどんは、初めて食べる客にも食べやすく、かつ印象に残る商品といえよう。

立地の厳しさもあり、2年ほどは客数が少ない状態が続いたが、徐々に周辺のサラリーマン、OL、学生などに認知されるようになってきた。ただし、商品の特性から、冬はウエイティングが出るほどだが、夏は半分ほどになる。そこで、オープン2年目から5~9月は夏季メニューとして、自家製麺の冷たいきしめん3品目(700~850円)を提供するようになった。盛夏はきしめんのオーダーが約半分を占める。客単価は昼850円、夜2000円で、夏は1日平均約50人、冬は100人ほどが来店している。

同店が都内では珍しい味噌煮込みうどん専門店として支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1本場・愛知の製麺方法や味噌味のベースを踏襲しながら、独自のアレンジで食べやすく、印象に残る味噌煮込みうどんを開発している。
2味噌煮込みうどんのバリエーションをそろえ、夜は居酒屋風に営業し、利用動機を広げている。
3夏季は自家製麺の冷たいきしめんを提供し、季節差を緩和している。

今後は「まず2店目の出店を考えたい」という岡田氏。現店舗からほど近い距離に出店すれば、全体で客席数が増えるだけではなく、製麺を1号店で、味噌ベースの仕込みなどを2号店で分担するようにし、作業効率を高められると考えている。

住所
東京都文京区本郷3-31-15
営業時間
11:30~14:30(L.O.)、17:30~22:00(L.O.)、土は昼のみ
定休日
日・祝