2013/08/30 繁盛の黄金律

販促は、「敵」と「地域」と「期間」と「着地点」を明確にすること

暗闇に鉄砲を打ち込む販促は絶対に禁物‐むやみに販促をしたり安売りを行うと、店の体力を激しく消耗します。しかし、競合店対策として、やらなければいけないときもあるでしょう。

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Vol.24

暗闇に鉄砲を打ち込む販促は絶対に禁物

むやみに販促をしたり、安売りを行ったりして、自滅する店があります。安売りや過激な販促は、店の体力を激しく消耗するものですから、やらないにこしたことはありません。しかし、競合店対策として、やらなければいけないときもあるでしょう。大事なことは、どのようなときにやっていいのか、その原則をしっかり定めておかなければなりません。

ここで、アメリカのチェーンにおける原則をお伝えしておきましょう。非常に参考になります。アメリカでは、強烈な販促や安売りを「ギミック・プロモーション」と呼びます。「肉を斬らせて骨を断つ」ような、“猛毒性”を持った販促です。

ギミックを遂行するための原則は、次の4つです。

  1. 敵が明確であること
  2. 地域が限定的であること
  3. 期間が定められていること
  4. 勝った、負けた、の判断基準が明確であること

まず1ですが、「ライバルをはっきりさせる」ということですね。“ハンバーガー戦争”を例にすると、とあるチェーン店の牙城で(仮にA店とします)、業界トップのマクドナルドが猛烈な安売りを仕掛けてきたり、新興のハンバーガーチェーンが侵攻してきたりした時です。A店は、マクドナルドの攻勢に立ち向かうために販促計画を立てます。あるいは、新興チェーン進出の出鼻をくじき、一気に叩くべく強烈な販促をかけます。

逆に、自分の店を新しいエリアへ出店させるときに、先発チェーンに打撃を与えるためのギミックもあります。要は誰を叩くのか、敵が特定されていなければなりません。「他の店の客を奪う」というような、漫然とした目的でギミックを使ってはいけません。

2の「地域の限定」、これも大事です。チェーン全体で行う強烈な販促は、本来やってはいけません。消耗するだけで、店の屋台骨が揺らぎます。近年見られる一部大手チェーン同士の販促の応酬は、敵も地域も不明確で、泥沼的消耗戦の様相を呈しています。やってはいけない販促の典型です。むしろ反面教師としなければなりません。

ダラダラ販促は、店の死期を早めるだけ

3の「期間の限定」、これも重要です。販促のタレ流しは、店の営業部隊をも疲弊させます。期間限定で、かつ敵が明確だからこそ、営業部隊は「よしっ!」と頑張れるのです。集中力、瞬発力あってこその販促です。長引けば長引くほど効果は薄れ、現場のモチベーションは低下します。日本の各業態の大手チェーンは、先の見えない悪しき惰性的な販促をやり続けることが多いですね。「他山の石」としてもらいたいです

4の「勝ち負けの判断基準」ですが、販促の着地点がはっきりしていなければなりません。来店客数増なのか、売上増なのか、エリア内で相手の出店の勢いが弱まることなのか、相手の客数減なのか、あるいは、相手が尻尾をまるめて退散することなのか。最終目標が明確でなければなりません。

以上が4つの原則です。これをアメリカのチェーンだけの話とは思わないでください。日本の個店や、その姉妹店の販促も同じです。販促、安売り、販促、安売り…街に目を転じてみると、あふれかえっています。誰が相手なのか。いつまでやるのか。何をもって成功したとするのか。これがあらかじめ決められていない販促があまりにも多い。百害あって一利もありません。

ダラダラと販促と安売りをタレ流している店を、お客様はどう思うでしょうか。安さにつられて一度は店に足を運ぶかもしれません。そして、その時は安さをありがたいと思うのかもしれませんが、次第にそのありがたみも薄れていき、やがて店に行く気も失せてしまいます。料理が定価で売れない店を、いったい誰が魅力的に感じるでしょうか。

販促は、短期にガツンとやってこそ効果が生まれ、敵への打撃も大きくなるものです。従業員に「いつまでやっているんだ!」と愛想を尽かされるならば大問題です。牛のよだれのような販促は、自分の店の死期を早めることになります。このことを肝に銘じておかなければなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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