JUJU 分家
Key Point
- 平打ち麺を使った豪快な豚そばを開発
- 昼は豚そば専門店として昼食需要を誘引
- 夜はもつ焼きが主力の居酒屋として営業
2号店の出店に際し、ボリュームある豚そばを開発
昼は麺400gというボリュームたっぷりの豚そば専門店、夜はもつ焼きを主力とする居酒屋として営業している「JUJU(ジュジュ)分家」は、東京・茅場町の路地沿いにありながら、周辺のサラリーマンの人気を集めている。経営元は株式会社いのじゅうで、代表取締役の井上晃一氏は10年ほど飲食企業に勤務した後に独立し、2009年1月に東京・中央区新川に11坪40席を持つ居酒屋「東京JuJu」を創業した。2号店の「JUJU 分家」は2011年11月のオープンで、ビルの1~3階を変則的に使い、客席面積計36坪、100席の規模がある。当時、ラーメンでも日本そばでも、ボリューム感のある肉そばが注目されていたことから、ランチのメイン商品として豚そばを導入することにした。
同店の豚そばは、日本そばの平打ち麺を使い、甘辛く煮付けた豚バラ肉をたっぷり加えて特徴を出している。商品開発に当たり、製麺業者と相談しながら、いろいろな太さ、形状のそばを試した中で、茹で時間は7分弱かかるが、つけ汁、かけ汁との絡みのいい平打ち麺を採用した。また、サラリーマンの昼食として、そばだけでも満足感があるようにと、1人前に茹で上がりで400gを提供している点を前面に打ち出している。甘辛の豚バラ肉も1人前に100g強を使用し、ネギもこんもりと盛り付け、従来の日本そばのイメージを打ち破る豪快な商品とした。
昼は、850~1050円の豚そば5品目を提供するが、オーダーの7割を占めるのが「豚つけ」(850円)である。丼に山盛りにした冷たい麺を、豚肉入りの温かいつけ汁で食べるもので、初めて来店した客にも、まず「豚つけ」を勧めている。また、女性客を意識した「蕎麦美(そばみ)ちゃん」というセットを用意し、各商品で麺をやや少なめにする代わりに味つけ玉子、デザート付きにすることができる。「蕎麦美ちゃん」でも麺は茹で上がりで300g強なので、物足りなさはない。昼の客単価は850円で、現在は昼だけで1日平均70人を集客しており、うち男性客が8割を占めている。また、女性客の中で「蕎麦美ちゃん」をオーダーする客は7~8割になるが、女性だからといって積極的に同セットを勧めることは避け、普通の商品を注文しづらくならないように配慮している。
夜は、炭火で焼く豚もつの串焼きをメインに、ギアラ、マルチョーといった牛もつ、長野産の馬のレバーを使った「極上桜肉のレバ刺し」(892円)、そのほか煮もの、揚げものなどの一品料理をそろえている。もつ類は「東京JuJu」と同様、千葉の業者からその日の朝に絞めた新鮮なものを仕入れている。夜も、ご飯ものではなく、「夜のお蕎麦」7品目(682円~892円)を提供し、昼と同様の豚そばのほか、「ざる蕎麦」(682円)、「スタミナまぜそば」(892円)など、夜限定メニューが加わる。さすがに夜は、そばを1人1人前ずつオーダーする客は少なく、1人前を数人でシェアするケースが多い。夜の客単価は3800円で、フードとドリンクの売上げ比は6対4。宴会需要も多く、夜だけで月間で約1000人が来店している。
立地に合った業態を考案し、ビジネス街のニーズをつかむ
井上氏は、飲食企業に勤める前に、3年ほど茅場町でサラリーマン生活を経験していたため、独立に際して土地勘のある街を選んだ。「東京JuJu」の周辺には、チェーンの居酒屋は多いが、個人経営のもつ焼き店は少なく、さらにもつとワインを合わせ、洋風に提供することで差別化を図っている。
「JUJU 分家」は、もとは焼肉店だった和風の物件で、同店の入口は路地沿いになるが、ビル自体は人通りの多い道に面しているため、立地として悪くないと判断して出店を決めた。両店は徒歩で行き来できる距離にあるが、それぞれ別の客層をつかんでおり、また昼と夜とで営業スタイルを変えている「JUJU 分家」では、昼は昼、夜は夜で客の顔ぶれが異なっている。そのため、「JUJU 分家」で人気のある豚そばを、「東京JuJu」でも導入することはせず、その立地に合った業態、商品構成を守っていく考えだ。
「JUJU 分家」が豚そばともつ焼きを武器に、ビジネス立地で健闘している要因は、以下のようになるだろう。
1茅場町周辺では珍しい豚そばに注目し、400gの平打ち麺を使った特徴のある豚そばを開発。
2昼は豚そば専門店として、サラリーマンの昼食需要に応えている。
3夜は炭火で焼くもつの串焼きをメインに居酒屋として営業し、そばは数人でシェアしながら食べるスタイルを定着させている。
「今後も事業展開を拡大していきたいです。その際、特定の業態にはこだわらず、その土地土地に適した飲食店を作ろうと思っています」と語る井上氏。常に物件探しや市場調査を続けながら、次の出店の好機を探っている。