2013/10/03 繁盛の法則

ダイナミックな商品でお客を魅了する“スパゲッテリア”とは

伝統の味を守る「ハングリータイガー」 に学ぶ‐東京・虎ノ門にある「ハングリータイガー」は、昼時ともなるとサラリーマンの長蛇の列ができる“スパゲッテリア”。昼だけで1日平均200人が来店している。

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ハングリータイガー

2012年4月に移転拡大した現店舗は、2階建て倉庫を全面改装したもの。ランチタイムだけで約200人が来店し、その約9割が男性客

Key Point

  1. 味、量ともに圧倒的なスパゲティで差別化
  2. 店舗の移転拡大で集客力アップを実現
  3. 昼は高回転オペレーションを確立

1967年に創業し、2012年4月に移転拡大

東京・虎ノ門のオフィス街にある「ハングリータイガー」は、昼時ともなるとサラリーマンの長蛇の列ができる“スパゲッテリア”である。ランチはスパゲティ12品目950~1200円がメインで、昼だけで1日平均200人が来店している。しかも、その約9割を占めるのが幅広い年齢層の男性客で、ほとんどが100円増しの中盛り、あるいは150円増しの大盛りをオーダーする。そのため店内は、皿の上にこんもりと盛られたスパゲティを、おいしそうに食べていくサラリーマンたちの姿でいっぱいになる。

同店の創業は1967年にさかのぼる。現店舗のすぐ近くで19坪30席の店舗を45年間営業してきたが、2012年4月に現店舗に移転した。ピンク色の外壁が印象的な2階建ての現店舗は、15年ほど前に購入し、倉庫として使用してきた築約50年の建物を、基礎だけ残して全面改装したものだ。1フロア24坪で、1階にはカウンターとテーブルで30席、2階には1~2室の個室として使用できる計14席を設けた。2階は夜のパーティや予約客が利用しているが、ランチは効率を考えて1階のみを高回転させている。行列ができはじめると、スタッフが外に出て先にオーダーを取るので、席が空いて着席すると、ほどなく注文した料理が提供される。そのため、昼休みの時間に限りがあるサラリーマンも、多少の行列であれば並んで待ってくれる。

スパゲティは、東京・練馬区に本社を置く国産メーカー、株式会社コルノマカロニの製品を創業時から使用している。2.1㎜の食べ応えのある麺で、レギュラーサイズは乾麺で120g、中盛りは180g、大盛りは240gを使う。茹で上げで食べるのであれば13分ほど茹でるが、同店ではあらかじめ11~12分茹でて計量しておき、オーダーが入った後で具材とともに炒め、味付けして仕上げて提供している。食べる際によく噛むため、麺の風味が際立ち、テイクアウトしても劣化が比較的遅いという。

同店の不動の一番人気商品で、スパゲティのオーダーの約3割を占めるのが、卵が入ったカルボナーラ風の「ダニエル」(1000円)である。ハム、ベーコン、タマネギ、マッシュルームをバターで炒め、下茹でしたスパゲティを加え、最後に溶き卵を合わせ、塩・コショウで仕上げる。卵に完全に火を通すのが特徴で、「ときどき無性に食べたくなる」という常連客が多い。「『ダニエル』は、先代のシェフがイタリア修業から持ち帰った料理なのですが、おそらく、イタリアの家庭料理のようですね」と、オーナーシェフである有限会社ハングリータイガー代表取締役の伊賀元彦氏は説明する。1976年生まれの伊賀氏は2代目に当たる。同店は父親が創業し、初代のシェフには東京・飯倉の有名店「キャンティ」の副料理長を招へいした。「ダニエル」に次ぐ同店の人気メニューである「バジリコ」(1000円)、「ペスカトーレ&バジリコ」(1200円)などは、シソの大葉を手切りして使っているが、これは「キャンティ」の流れを汲む手法である。

一番人気のカルボナーラ風「ダニエル」の大盛り(左/1,150円)と、シソの大葉をふんだんに加えた「ペスカトーレ&バジリコ」の大盛り(右/1,350円)。卓上にたっぷり用意されている粉チーズも好相性

数回の低迷期を乗り越え、今後は多店舗化も検討中

伊賀氏は、初代シェフの下で3年ほど学んだ後、他のイタリア料理店でも計3年修業し、28歳で同店の2代目社長に就任した。一見、順風満帆に来ている老舗と見られがちだが、半世紀近い年月の中では、たびたび苦境にも直面した。創業社長の下で経営が悪化したときは、母親の尽力でなんとか再建を果たした。近年はリーマンショック後の景気の低迷により、ランチは相変わらず堅調なものの、夜の売上が伸びず、真剣に打開策を探らざるを得なくなった。値下げやオペレーションの見直しも検討した伊賀氏だったが、最終的には商品のクオリティや価格は変えずに、店舗の移転リニューアルという、攻めの決断を下した。この英断により、移転後は女性客も増え、夜の売上も伸び始めた。夜は前菜、メイン、パスタ、ナポリ風ピッツァなどを提供しており、客単価は4500円で、平均1.5回転するようになっている。

同店が独自のスパゲティを主力商品に、オフィス街でサラリーマン客に支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1味、ボリュームともに圧倒的な特徴のあるスパゲティメニューで差別化している。
2店舗の移転リニューアルにより、女性客の増加や夜の集客力アップを実現している。
3ランチタイムは30席で200人に対応する、高回転オペレーションを確立している。

リニューアル後は以前より平均月商が200万円ほど伸び、手応えを実感している伊賀氏は、今後は多店舗展開も考えていきたいという。ブランドイメージや商品力を保ちながら、全国の主要都市に出店できるような方法を、慎重に構築していく考えだ。

住所
東京都港区虎ノ門1-11-12
営業時間
11:30~14:45(L.O.)、17:30~22:15(L.O.)、土11:30~19:30(L.O.)
定休日
日・祝