2013/09/30 繁盛の黄金律

営業時間を延ばして、成功した店は少ない

それぞれの時間帯にプロが存在する‐営業時間に対して、無頓着な経営者が多すぎます。商売の中身と営業時間が合っていないことが多すぎるのですね。今回は営業時間を縮めることを考えてみましょう。

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Vol.25

それぞれの時間帯にプロが存在する

営業時間というものに対して、無頓着な経営者が多すぎます。商売の中身と営業時間が合っていないことが多すぎるのですね。

ある喫茶店の店主が、夜の営業時間を延ばして、売上を伸ばしたいと私に相談をしてきました。「プロントなんか、昼も夜もはやっているじゃないですか。『二毛作』(昼と夜で業態が変わる営業スタイル)ってやつですか。うちも夜はお酒を出せば、それができると思うのですがね」。もちろん私は即座にきっぱりと「おやめなさい」と言いました。夜は夜で厳しい競争があるのです。「アルコール商売をやったこともないのに、慣れない商売に手を染めなさんな」と忠告しました。

そして店主に聞きました。
私「朝は何時からやっているの?」
店主「9時からです」
私「それを8時とか、7時とかに早めなさい。そのほうが売上は上がります」
店主「朝は単価が低くてね。いくらにもならんのですわ」
店主はブツブツ文句を言っていましたが、案外素直な人で、モーニングメニューを充実させて、開店を7時からにしてみたところ、朝食帯の大繁盛店になりました。常連客もしっかり増えたということです。夜は20時まででしたが、「身体が持たない」ということで、19時閉店にしました。正しい選択ですね。

こういう例もあります。ランチとディナーをやっていたフランス料理店が、ランチをやめてディナー一本にしました。料理は5,5000円のワンコースのみ。もともと人気店で、ランチは連日予約が取れない店でした。そのランチをやめるのですから、勇気がいったと思います。ただ、その代わり、ディナーを17時30分~と、19:30~の二部制にしました。従来は5,800円から8,800円までのコースがあり、そのほかにアラカルト(一品料理)も出していました。それを5,500円のコースのみにするのも、勇気が必要だったでしょう。

果たして結果は?

大成功です。毎日満席で、ワインも2,000円代、3,000円代を充実させたおかげで、出数が倍増して結局、客単価も上がりました。ただし、このフランス料理店も、次のステージは考えておかなければいけないでしょう。いくらコースのメニュー内容を変えても、お客はいずれ「5,500円コースのみ」のメニューに満足しなくなります。フランス料理の真骨頂は、アラカルトにあるのですから、コース料理は残しても、アラカルトを再導入しなければならない時が必ず来ます。しかし、夜の営業に絞るという作戦は、学ぶところが大きいですね。

メニュー数を少なくする、価格数を減らす、営業時間を縮める

時短の効果は、厨房もフロアも集中力が途切れないところにあります。ダラダラと営業時間を延ばしていると、稼ぎ時のコアタイムもパワーダウンしてしまいがちです。長時間営業のコワさは、まさにここにあります。

居酒屋がランチに手を出すのも危険です。多くの店にとって、ランチは短時間の価格勝負の商売です。居酒屋はこの分野ではまったくの素人。ランチはランチのプロがひしめいているのです。低価格を打ち出せればお客が来る、とばかりに安易なメニューを出してお茶を濁していると、店の評判が落ちて、肝心の夜の客数が落ちていきます。慣れないことはやるな。得意なことをとことん突き詰めよ。これは飲食に限らず、あらゆる商売に共通する鉄則です。

立地と商売の中身をじっくりと検証して、今の営業時間が適合しているかを確認すべきです。ズレている店があまりにも多すぎるのです。「いや~、今の営業時間で(売上は)パンパンなんですわ。(売上を伸ばすには)営業時間を延ばすより他はありません」と言う経営者がいますが、ピークタイムをパンパンに売っているという認識自体が間違っています。売れている時間にこそ、チャンスロスがいっぱいあります。このことは、この連載の中で何度も言い続けてきました。強い時間をさらに強くすることに心血を注がなければなりません。

経営者がいつも考えていなければならないことは3つ。ひとつは、メニュー数をもっと削れないものか。2つ目は、価格の数をもっと減らせないものか。3つ目が、営業時間をもっと短縮できないものかどうか。

どうですか。やっていることは、あるいは考えていることは、これとまったく逆なことではありませんか? 逆の道に進んで繁盛店になった店は、ひとつもありません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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