2013/10/31 繁盛の黄金律

「隠れた宝石」をこうして見つけ出そう

何も宣伝していないのに、着実に注文数が増えるメニューがある‐メニューの中にはhidden diamond(隠れた宝石)があります。メニューの入れ替えが激しいとこの宝石を見過ごしてしまうことがあります。

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Vol.26

何も宣伝していないのに、着実に注文数が増えるメニューがある

「メニューの数を増やすな」。これが商品力を上げ、競争力を高めるための鉄則です。このことは、この連載でも再三述べてきました。そうは言っても、新しい売れ筋メニューを生み出すために、絶えず新メニューを開発し、お客様の反応を注視することは大切なことです。また、メニューの中に一定の新商品群が存在していないと、お客様の来店頻度が落ちていきます。旬のメニュー、トレンドメニュー、実験メニューが必要なのは、来店頻度を維持するためなのです。

さて、新しい売れ筋メニュー開発に関する話ですが、メニューの中にはhidden diamond(ヒドゥン・ダイアモンド=隠れた宝石)があるものです。あまりメニューの入れ替えが激しいと、この宝石を見過ごしてしまうことがあります。メニューの売れ方をよほど注意深く見守っていないと、発見できないままメニュー表から外してしまうこともあります。

hidden diamondとは、ジワリジワリと注文数が増えていくメニューです。何の宣伝もしていないのに、特別な販促もしていないのに、また、メニュー表の中でも目立つところに置いていないのに、毎月集計してみると、着実に注文数が増えているメニュー。これがまさにhidden diamondです。

北関東を中心に、ハンバーグを主力とする「フライングガーデン」というチェーンがあります。「爆弾ハンバーグ」という強力な看板メニューを持っていますが、この爆弾ハンバーグがまさにhidden diamondの典型です。もともとはスパゲティやドリアを中心にしていた店だったのですが、あるとき、まかない用に食べていた醤油味の荒挽きハンバーグをメニューに入れてみました。すると特別な販促をしたわけでもないのに、月を追うごとに売れ行きを伸ばしていったのです。そこである店で、この爆弾ハンバーグを主力メニューに据え全面的に打ち出したところ、文字通り爆発的に売れました。話題が話題を呼び、チェーンの中でも超繁盛店になっていったのです。これが爆弾ハンバーグ誕生秘話です。こういうことってあるものなのですね。

価格を変えてみる、ポーションを変えてみる、役割を変えてみる

もちろん、潜在的な商品力がなければ、「爆弾ハンバーグ」のようなメニューは生まれません。しかし、大事なことは、メニューの注文動向を注意深く見守る、持続的な観察力を持つことです。少しずつ注文数が伸びていくということは、「何かがある」のです。その小さな動きを見逃していることがあまりにも多いのです。

おなたのお店では、毎月毎月、メニューの売れ行き動向をフォローしていますか? 勘だけに頼ってメニューの入れ替えをしているようなことはありませんか? 新メニューの開発にばかり熱中してしまって、改廃ばかりに熱心になり、お客様の反応をきっちりと把握していないということはありませんか?せっかくのhidden diamondを泥水と一緒に流してしまっているかもしれません。まことにもったいないことです。新メニューの導入ももちろん大事なことですが、観察力と追跡力を持たなければ、新しい売れ筋をつかむことはできません。

もうひとつ大事なことがあります。ちっとも売れないけれど、hidden diamondである可能性があるメニューというものがあります。売れる潜在力があるのに、値付けが間違っていたり、ポーションが大きすぎ(小さすぎ)たり、メニュー全体の中での位置づけが間違っていたりするために売れないメニューです。そして、その修正・微調整をすると、売れ行きが爆発するメニューです。そういうメニューって、案外多いものですよ。特にメニューの中の位置づけが合っていないというのは、重要な問題です。本当はサブメニューとして提供するべきメニューがメインメニューの中にあったり、シェア(取り分け)メニューとして提供したらヒットするのに、普通の一品メニューになっていたり…ということです。

要するに、本来の役割とは違う提供をしているために、本来の力を発揮できないメニューが結構多いものです。野球選手にもよくいますよね。クローザー(抑え投手)に配置転換したら見違えるような力を発揮した投手、といった具合です。投手から打者に転向し、強打者となった王貞治さんのような例もあります。話は元に戻りますが、一品一品のメニューについて、この価格でいいのか? 量はこれでいいのか? メニュー全体の中でのポジショニングは合っているのか?という疑問を持って、総チェックするべきです。

とにかく、現行メニューを完成品として見ないこと。違う角度から見る習慣を身につけることです。新メニューの投入ばかりに力を入れて、結果の追跡と改善をしないのは、エネルギーの無駄使いというものです。

でも一番大事なことは、もちろん大黒柱の看板メニューの磨き込みです。味は変えないが、質は上げる。この姿勢で常に商品力を高めていくことが、お店の競争力を高める最強の決め技です。このことを、ゆめゆめ忘れてはなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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