2014/02/06 繁盛の法則

素材、調味料、炒め方までこだわったチャーハン専門店とは

全国展開を目指す「チャーハン王」(東京・新橋) に学ぶ‐チャーハンに特化し濃厚な鶏スープと合わせた「チャー王セット」のみを提供。行列のできる店として注目されるようになり、1日約150人集客する。

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チャーハン王

ニュー新橋ビル地下の飲食街で目的客を誘引。店舗規模は8坪17席で、週に数回来店するリピーターも多い

Key Point

  1. 希少なチャーハン専門店に挑戦
  2. おいしいチャーハンを徹底研究
  3. 低投資型のビジネスモデルを考案

チャーハン専門店という希少な業態の将来性に着目

米を主食とする日本人で、チャーハンが嫌いという人はほぼいないと思うが、チャーハン専門店という業態は珍しい。そのチャーハンに着目し、いずれは全国展開して各地で雇用を創出するとともに、地元の農産物の地産地消に結びつけたいと意気込むのが、東京・新橋の「チヤーハン王」である。2012年7月17日のオープン以来、行列のできる店として注目されるようになり、8坪17席の店舗規模で1日約150人を集客している。

同店で提供しているチャーハンは、これまでのところ1種類で、現在は濃厚な鶏スープと合わせた「チャー王セット」(880円)として販売している。チャーハンのモデルとしたのは、福岡・中央区にある焼肉の繁盛店「たんか」の「焼飯」で、ほとんどの客が食事のシメに注文する人気商品である。「たんか」の焼飯にさらに改良を加え、米のブレンド、炒める際の油の種類・量・温度、卵のからめ方、味付け、炒め方まで、徹底的に研究して商品化した。味の決め手は、九州産黒毛和牛のミンチと、10種類の野菜のうま味を凝縮し、3日間かけて作る独特のペーストで、ご飯ひと粒ひと粒まで味わい深く仕上げられている。パラパラした食感だが、油っこさがなく、卵もふんわりしている。

このチャーハンをさらにおいしく食べるために用意されているのが、鶏ガラを2日間煮込んで取る濃厚な鶏スープと、卓上に置かれた特製ダレ(酢醤油)である。おすすめの食べ方は、まず鶏スープで口の中を潤し、チャーハンを半分ほど食べ進める。残りの半分に、スプーン1杯ほどの特製ダレをかけると、劇的に味が変わり、さっぱり感が加わってさらに食が進む。適宜スープを飲みながら食べていくと、あっという間に完食してしまう。

味付けに使うペースト、鶏スープ、特製ダレはすべて、「たんか」の店主、小材幹太氏の指導のもと、福岡の自社のセントラルキッチンで作って冷凍し、毎日空輸している。そのため、1日に提供できるのは約150食に限られ、原価率も約50%と高い。

チャーハンの材料は、同店用にブレンドした「王様米」を炊いた温かいご飯(250g)、油、卵、塩、コショウ、特製ペースト、福岡で作られるすり身、万能ネギ。現在は、チャーハンと鶏スープがつく「チャー王セット」(880円)として提供している

飲食店の現場で働く人が幸せになれるモデルを目指す

経営元は2012年8月に設立された株式会社SRD。代表取締役の黒瀧将史氏は1979年東京生まれで、大学卒業後は株式会社リクルートに2年勤務し、株式会社ユーグレナ(2012年にマザーズに上場したバイオベンチャー)の創業に関わった後、企業のM&Aや再生を手がけるコンサルタントとして働いていた。福岡に毎月出張に行くようになり、お気に入りの肉料理店を見つけ、毎回立ち寄るうちに、当時その店の店長を務めていた小材氏と言葉を交わすようになった。小材氏が独立開業すると聞くと、ビジネスモデルやマーケティングに詳しい黒瀧氏は、個人的にも福岡に通い、コンセプトづくりやメニュー開発などで全面的に協力。そして「たんか」を2009年11月1日に開業し、熟成させたうま味が特徴の「牛たん焼き」を看板商品に、福岡屈指の人気店に成長している。

さらに黒瀧氏は、コンサルタントとして飲食企業の再生の現場を見てきたなかで、「現場で働いている人が幸せになれるビジネスモデルを作らないと、飲食業界はおかしくなる」という思いを強くした。そこで、理想的なビジネスモデルを一から構築しようと考え、低投資で出店でき、リスクが少なく、料理経験がなくても短期間で技術を身に付けられる業態を模索した。加えて、将来的には全国展開し、地元の生産物を活用できるアイテムとして、47都道府県すべてで生産されている米に着目した。そこからチャーハンの研究をはじめ、あらためて「たんか」の焼飯のおいしさを知り、特製のペースト、酢醤油、鶏スープの製造を小材氏に一任し、SRDの取締役にも就任してもらった。

1号店出店にあたり、「全国展開するには、目的客を誘引できなければ話にならない」と、あえて二等立地に出店し、周辺の飲食店に比べて高い価格設定で、単品で勝負するという、思い切った戦略をとった。古いビルの地下飲食店街という、フリー客はまず期待できない立地だが、チャーハンのクオリティと専門店としての話題性から、テレビや雑誌でも取り上げられるようになり、客単価900円強で、平均月商320~340万円を上げている。

同店がチャーハン専門店として注目されている要因は、以下のようになるだろう。

1数少ないチャーハン専門店に挑戦。
2チャーハンのおいしさを徹底研究し、独自の商品を開発。
3料理人でなくても低投資、小リスクで開業できるビジネスモデルを考案。

今後の店舗展開は、独立支援とFCの2本立てで、まずは各都道府県の県庁所在地への出店を目指したいという黒瀧氏。満を持して、今年3月に2号店の赤坂店を出店する予定で、今後6年間で80~100店舗体制を構築したい考えだ。

住所
東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビルB1
営業時間
11:00~15:00、18:00~20:00(土は昼のみ)
定休日
日曜・祝日