2014/03/05 繁盛の法則

多彩な南インド料理を地道に紹介する専門店とは

本物の南インド料理を提供する「アーンドラ・ダイニング」(東京・銀座)に学ぶ‐南インド特有な日替わりカレーを提供し、商品の説明や味の感想や辛さなどを聞くなど、丁寧な接客で常連を獲得している。

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アーンドラ・ダイニング

ビルの2階、38坪56席の店内は、モノトーンを基調にシックな雰囲気にまとめており、女性客が約7割を占めている

Key Point

  1. 南インド出身のオーナーとシェフが開業
  2. 日替わりカレーで来店頻度を上げる
  3. ホスピタリティあふれる接客でファンを獲得

留学生として来日し、在日16年のオーナーが出店

日本におけるインド料理店は、もはや珍しい存在ではなくなってきているが、料理のクオリティ、サービスのレベルとなると、玉石混交の様相を見せている。また、カレーのほか、インド式の釜タンドゥールを使ったタンドリーチキンやナンといった、北インドの料理が象徴的な料理となっていると言えるだろう。

そんな実情を憂い、自身で南インド料理店を出店したのが、サファイア アジア株式会社代表取締役のサラディ・パラマタ氏である。パラマタ氏は南インドのアーンドラ・プラデシュ州出身で、2009年8月に東京・御徒町に「アーンドラ・キッチン」、2012年2月に銀座に「アーンドラ・ダイニング」をオープンした。

パラマタ氏は、日本の文部省(当時)の奨学金を得て、留学生として1998年に来日した。横浜国立大学および大学院で地学を専攻し、卒業後はIT関連企業に8年勤め、日本とインドの架け橋として活躍。その後日本では南インド料理がまだまだ知られていない現状を見て、食文化の分野での架け橋に挑戦してみようと決意。東京・八重洲の南インド料理の人気店「ダバ インディア」で初代料理長を務めた、アーンドラ・プラデシュ州のハイデラバード出身のヤーマラ・ラマナイヤ氏をシェフとして迎え、2店の味の基礎をしっかりと固めている。他のシェフは、インドのいろいろな地方の出身者であり、また日本でのインド料理店では、タンドゥールを使った料理がないと寂しい印象を与えてしまうことから、一部の北インド料理も取り入れている。

1号店は、当初は秋葉原を希望して物件を探したが、なかなか見つからず、JR御徒町からほど近いビルの半地下、25席のこぢんまりした店舗でオープンした。南インド独特のカレーが評判となり、テレビなどの取材が相次いで軌道に乗ってきたことから、パラマタ氏は2号店出店に向けて動き出した。山手線内側の新橋や五反田などで物件を探していたところ、不動産業者から銀座の現物件を紹介された。東日本大震災後に閉店したパスタ店の跡地で、今後の展開においても知名度の高い銀座に店舗があることはプラスになると考え、出店を決めた。ビルの2階で、店舗規模は38坪56席。カジュアルな小規模店は“キッチン”、パーティなどにも対応できる中~大規模店は“ダイニング”という名前で展開する構想で、銀座店は「アーンドラ・ダイニング」とした。

夜のセットメニューの「アーンドラ・ドーサ・ミールス」(手前の皿。2790円)のノン ベジタリアン。ライス(中央)、チャパティ(右下)、豆粉の揚げせんべいのパパド(左下)。カレー類は(左から時計周りに)ハイビスカスの葉の漬物、豆と野菜のスープのサンバル、タマリンドと黒コショウ入りトマトスープのラッサム、野菜炒めのポリヤル、マトンカレー、エビカレー、チキンカレー。奥の皿は、ミニ・ドーサ(手前)、甘くないドーナツ風のワダ(中央)、サンバル(左奥)、ココナッツのチャトニー(右奥)

日替わりカレーやていねいな接客で常連客を獲得

インド料理の大まかな分類では、北インドは小麦文化、南インドは米文化と言われ、南インドには米粉で作ったクレープ風の「ドーサ」、豆の粉で作ったドーナツ風の「ワダ」、タマリンドや黒コショウが入った辛さと酸味のあるトマトスープの「ラッサム」など、特色のある料理がある。数種類のカレーやライスなどをバナナの葉の上に盛り合わせた定食の「ミールス」もユニークだ。さらに、同じ南インドでも、ケララ州ではココナッツ油、ココナッツミルクなどを多用するが、アーンドラ・プラデシュ州では黒コショウの辛さを活かすといった違いがある。「チキンカレーひとつをとっても、州ごとに味に違いがあります。いずれ、各州のチキンカレーをそろえて、食べ比べるイベントなどもやってみたいですね」とパラマタ氏は説明する。

まずは気軽に利用してもらおうと、ランチメニューは790円~と手ごろな価格とし、辛口、中辛、甘口の3種の日替わりカレーをそろえている。同時に、サービス面にも力を入れ、商品内容の説明からはじまり、食事中も味の感想や辛さの具合を1人ひとりに聞き、お替りにも対応し、要望があれば辛さの調整やメニューにはない料理の提供にも応じている。このホスピタリティあふれる接客も、リピーター獲得に大きく貢献しており、なかには週2~3回訪れる客もいる。客単価は昼1200円、夜3000円で、月商目標は600万円に置く。

同店が支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1南インド出身のオーナーとシェフにより、本場の味にこだわって提供している。
2ランチは3種の日替わりカレーを提供し、週2~3回来店するリピーターを獲得している。
3ホスピタリティあふれるサービスで根強いファンを増やしている。

「料理とともに、おいしい食べ方もきちんと伝えていきたいですね。辛くて酸味のあるラッサムはライスとともに、食事の最初に食べると食欲が出ます。カレーは、ナン、チャパティ、ライスのどれにも合いますが、数種を混ぜながら食べると、より複雑な味わいを楽しめます。南インドの料理はまだまだたくさんあり、ドーサだけでも40種類くらいありますから、これからも毎年新しい料理を紹介していきたいです」とパラマタ氏は意欲を見せている。

住所
東京都中央区銀座1-8-2 銀座プルミエビル2F
営業時間
11:15~L.O.14:30(土・日曜日・祝日11:30~)、
17:00~L.O.22:00(土・日曜日・祝日~L.O.21:00)
定休日
無休